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いきものがたり

作者: 物部がたり

 小学生のとき、れいは生き物係だった。

 生き物は嫌いではないが、生き物係になるつもりはなかった。

 だが、他の係がすでに埋まっていたため、消去法的にれいが生き物係を引き受ける羽目になったのだ。

 クラスで飼っている生き物はメダカと金魚と亀、あと校舎にいるウサギとニワトリ、そしてクジャクだ。


 ウサギとニワトリはわかる。が、なぜ動物園にいるべきクジャクが学校にいるのかわからなかった。

 恐らく校長先生がクジャク愛好家なのだろうと、れいは納得していた。生き物係の仕事は餌やりと掃除である。自然循環型のアクアリウムではないので、ろ過装置を使っていても定期的に水槽の掃除をしなければ、メダカや金魚は死んでしまう。

 そうなっては大変だった。

 命を預かっているわけで、責任の重さが他の係とは比べ物にならないのだ。以前一度だけ、メダカや金魚に餌をあげ忘れたことがあった。


 それも金曜日だったので、三日ほど餌をあげていないことになる。

 休日が終わり登校して水槽を見たら、メダカと金魚は共食いをしていた。れいは強いショックを受けた。メダカや金魚が共食いをすることをこのとき知った。

「あれ~? メダカと金魚減ってない」

 名探偵張りに感の良いクラスメイトが水槽の中を覗き込んでいった。

「減ってないよ……」

「そうかな。この前まで、もっと泳いでなかった?」

 以前までは、六匹の金魚と八匹のメダカが泳いでいたが、今は三匹の金魚と、四匹のメダカだった。


「前から、これくらいだったよ。うん」

「そうだったかな……? そうだよな、生き物係がいうんだから間違いないよな。ごめんな勘違いだった」

 れいが胸をなでおろしたのは言うまでもない。

 れいはクラスのみんなに知られるのが嫌で、体が食い散らかされた金魚やメダカを花壇に埋めていた。斎藤緑雨(さいとうりょくう)の言葉に「鳥の血に悲しめど、魚の血に悲しまず」という言葉があるそうだが、例外はあるようだ。

 れいは死んだ金魚とメダカに申し訳なくて悲しみ泣いたのだから。


 その失敗を除けば、れいは動物たちの面倒をよく見る極めて真面目な生き物係であった。

 だが、係替えをまじかに控えていたある日、校庭で飼っているウサギが死んだ。これはれいの責任ではなかった。だがクラスメイトの一人が「ウサギは寂しいと死んじゃうんだって」といったことで、自分の責任だとれいは思ってしまった。

 実際にはウサギは寂しさで死んでしまうということはないが、れいはそのことを知らないので、(自分が構ってやらなかったからウサギは死んでしまったのだ)と思い込んでしまった。

 それから、れいはどういうわけか、大変な生き物係に再び立候補した。クラスの誰もが、れいが一番適任だと知っていた――。

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