異世界勇者、魔術師と幼馴染になる
「‥‥ルルティア?」
気づけばそう口に出していた。すると節目がちだった少女の目が見る見る開き
「‥アレク?」
と、前世の俺の名前を読んだ。
「‥あぁ、そうだ、ルルティア、ルルティアなんだな!?」
「アレクッ!」
涙目になりルルティアが抱きついてくる。
腰まであった黒髪は薄茶色の肩までのショートカットになっていて、銀色の吊り目は黒色になっていた。
だが、髪や目の色が変わっても、ルルティアの性格や顔つきは前世から変わっていない。
そんなルルティアの顔を見ていると、不意にルルティアが死んだ瞬間のことが脳裏に浮かび上がって来た。
あぁ、そうだ、ルルティアは、ルルティアは、
ーールルティアは魔王の呪いであり得ないほどの量の血を吐いて死んだんだ。
◇◆◇◆◇◆
自身の口から出た血の海の中に皮膚が変色したルルティアが沈んでいく。
「ア‥レク‥私は‥‥まお‥‥うを‥おね‥が」
その言葉を最後にルルティアは力尽きた。
◇◆◇◆◇◆
結局その後はリリエルの究極聖属性回復魔法で俺たちは助かった。
が、魔術師のルルティアがいなくなってしまった事で俺たちは魔法防御結界なしで魔王の魔法攻撃から逃れることとなった。
何より、俺たちの険しい旅路を少しでも明るく楽しい物にしようとしてくれていたルルティアが死んだ事でみんな、特にルルティアに想いを寄せていたジラフは怒りのあまり、我を忘れかけていた。
ーールルティアとジラフって両思いだったんだよな。
ーールルティア、両思いだってわかってるのにアイツに告白するのは魔王を倒して世界を平和にした後だって聞かなかったんだよな。
そんな事を考えていると
「アレク、私、もうみんなと会えないと思ってた。それに、転生たのが私だけかもしれないって思ったらジラフに、ジラフにもっと正直にいるんだったって。」
涙ぐみながらそう話すルルティアは前世の自分の意地っ張りを後悔しているようだった。
「大丈夫さ、俺も転生しているんだ、他のみんなだって転生しているさ。俺も会えて嬉しい。」
俺もこの世界に来てから仲間に会う事を諦めていたからもう一度会えて本当に嬉しい。
ーーそんな事を考えていたせいか俺の目にもじんわり涙が滲んできた。
出会って数秒で抱きしめ合う俺たちを見てそれぞれの母親は
「あら〜優馬ったらもう仲良くなったの〜。理沙ちゃん、それからも優馬と仲良くしてあげてねぇ」
「人見知りの理沙がこんなに心を開くなんて初めてだわぁ。優馬君、これからも仲良くしてやってね」
と、どこかずれた会話をしていた。
ちなみにここまでの俺とルルティアの会話には母国語のセリアル語を使っていたからお互いの母親には幼い子が「あー」とか「うー」とかでコミュニケーションを取っていると思っているはずだ。
母達の会話は続き、
「そうねぇ、きっと二人は幼馴染になるわねぇ。」
と、意味のわからない単語を口にした。
「ルルティア、おさななじみってなんだ?」
と、泣き止んだルルティアに聞くと、
「なんか、仲のいい家族同士の付き合いの子供バージョンって感じ?」
と、ルルティアもよく分かっていないのか、曖昧な答えが返ってきた。
「まぁ、とにかく俺とルルティアはおさななじみ?ってやつなんだな」
「そうだね、後、ここでルルティアって呼ぶと誰ってなるから、理沙って呼んで」
「あぁ、分かった。そしたら俺は優馬だな」
「うん、分かったよ優馬」
前世のような明るい笑顔を浮かべルルティアがそう告げる。
「あぁ、よろしく理沙」
俺も前世のように、ニカッと笑って返した。
お互いの母親が笑顔で見守る中、俺とルルティア(理沙)は幼馴染?になった。
ーーまた、全員で会えたらいいな
ーールルティアも転生しているんだし、他のパーティメンバーも転生しているんじゃないか?
そんな希望を胸に抱きつつ、この平和な世界でルルティアに再開できた事を俺は感謝するのだった。