9話 急展開・光
出陣から5分後。異常は起こり始めた。
「うわぁ!」
「やめてくれ!」
屈強な悪魔の男たちが急に喚きだした。罠だった。
「何が起こった!」
「わかりません!おそらく敵の罠かと」
「一時撤退するか?」...言ってはみたが。
「だめですAMFの敵のものが多重に展開されていて、発動しないのはもちろんフィールドハック(敵のデバフを逆に相手にかける技)も発動しません」
しまったな。浅はかだった。敵が罠の一つも張らずにむざむざやられに来るはずがなっかった。
さて...どうするか。
天使軍本部
「敵もバカなものよ。こんな簡単な罠も見抜けずに来るとは。飛んで火に入る夏の虫よ。しかしお前ら、万が一の状況に備えて、警戒は怠るなよ」
天使族セラフェル・エンジェル。天使王の弟である。兄とは仲が悪いが、ライバル的な中の悪さであり、必要であれば、お互いに手を貸す。そんな関係である。セラフェルはセラフィムより慎重な性格で、ほぼ確実に相手を貶めても、決して手を抜かず、必要ならともに酒を飲み交わした仲間でも容赦なく殺す。そんな性格である。
彼の作戦はこうである。
まず、悪魔王に天使の大量虐殺を起こさせ、彼の精神を揺さぶる。そしてここはある意味賭けだったが、敵が攻めてくることを見越して悪魔に強い精霊結界・天使結界を同時展開し、ワープでの侵入を阻止する。そして相手が陸で来たとき、空で来たとき、可能性は低いが川で来たとき(もともと川が狭くて小さい)すべてに罠を張った。“ある人物”からの情報で来るのは確定していた。そして敵は来た。あの地には対悪魔包囲網が展開されており、さらに検出されにくいAMFも展開していた。何もかもがかれの思惑通りであった。
「まさかここまで完璧な罠を張り巡らせているとは。驚くな...」
「どうしますか、撤退しようにも出来ない。進むにも進めない。完全に罠にかかりましたね」
ラスクがいった。本来ならばここまで完璧な罠を仕掛けられたなら、死を待つか、敵がこの罠を解くのを待つそして逃げる。どの道自分の首を締めてしまうだろう。だが、しかし、ミクセルである。最強の悪魔である。ほとんど問題がなかった。
「魔法ガデスト・バーン」ミクセルがこう唱えた刹那悪魔達を襲った苦しみが解き放たれた。セラフェルの戦略が初めて破かれた時であった。
To be continued