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「ちょっと2人ともそんなに頭を下げないで」
彼女の母親にそう言って止められるが、俺達は頭を上げない。
「...妊娠したって本当か?」
ここでようやく初めて彼女の父親が口を開けた。
「はい...」
これは俺が応えた。
「はぁぁ。最初は、声を上げて叱ってやろうと思ってたが、まさかこんなことになってるとは...正直、半分呆れと半分状況が整理できていない」
彼女のお父さんは話を続ける。
「姉の方からも話を聞いていなかった。だから、女友達のところにでもお世話になってると思っていた。まさか、男のところにいたとは思ってもみなかった」
無情な空気が流れ続ける。
「家に久しぶりに帰ってきたと思ったら、男を連れてきたうえに妊娠しているということをいきなり報告してきた。しかも、結婚させて欲しいと頼んできている」
お父さんがそうやって1人で話しをしている最中も、俺と彼女の2人はずっと頭を下げている。完全に頭を上げるタイミングを失った。正直、話をしている最中にずっと下を向いているのは失礼ではないだろうか。だが、中途半端なタイミングに上げるよりは雰囲気は悪くならない。
「2人とも顔を上げて話を」
彼女のお父さんにそう言われて俺達2人は顔を上げた。
「正直、なんて言葉をかければいいかわからない。さっき、自分で言葉にしてみたら、ことの重大さがやっと分かったぐらいだ」
お父さんは目を瞑りそう言った。




