4 依頼
「何よ、その目。無才能のくせに偉そうね」
その少女は、呆気にとられる俺を見てそう言った。
「冒険者になりにきました! よろしくお願いします!」
「うっさいわね、さっき聞いたわよ」
ムスっとした顔で、その少女は視線を横に流す。どうやら先ほどのやり取りを見ていたらしい。
「それで、そこどいてくれない?」
「そんな理不尽な――」
ごめんなさい、すぐどきます。
「なに?」
発言と心の声が反対になってしまった俺に、容赦なく吠える少女。
「ごめんなさい、すぐどきます」
そんな理不尽な態度に怯え、すぐさま席を譲る。
「受付さん、冒険者の登録をお願い」
「あら、奇遇ですね。そちらの方も丁度登録されたんですよー」
ミラは笑顔でこちらを見る。
「えっ」
「なによ」
思わずその少女を見る。
「冒険者の方だと思ってました......」
「悪かったわね」
表情を緩めないまま、ミラに登録の手続きを催促する。
「では、そこに手をかざしてください」
ミラが差し出した紙に少女が手をかざすと、先ほどと同じように淡い青模様が変化した。
”名: シンティア=アースウォルフ”
”レベル: アブノーマル”
”スキル: ジルコニア・ハート”
”ランク: 白”
「す......凄い!」
ミラが驚嘆する。
「超才......」
「あたり前じゃない、むしろ無才能が異常なのよ」
超才
選ばれし者に与えられる、神からの贈り物。
その差は明確。故に、越えられない。
それが才能だ。
ミラの声に再び集う冒険者達。
「嬢ちゃんスゲーな!」
「とんでもない奴もいるもんだな」
飛び交う歓声。
「ところで、依頼は何があるの? 早くランクを上げたいんだけど」
その少女は少し目を瞑った後、ミラにそれを要求した。
「はい、ありますよ。でも、最近依頼が減ってきていて......シンティアさんのランクで受けられるのはこれだけですね」
そういって、ミラは”ゴブリン退治”と書かれた一枚の紙を差し出した。
「仕方ないわね。じゃあ、それでお願い」
腕を組み、ミラにそれを依頼する。
「承りました」
笑顔でミラは手続きを開始する。
そして――
「では、これで手続きは終――」
「シンティアさん、その依頼、俺も一緒に受けさせてください」
俺は深く、頭を下げた。
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