2 シンティア=アースウォルフ
好きな食べ物はポテトチップスです
「シンティア、支度をしなさい。 いつまでいじけているの」
扉を叩く音と共に、甲高い声が響いた。
母の声だ。
「わかってるって、ちゃんと支度するから」
重い体を持ち上げ、私は扉を開く。
「ちゃんと準備するから、どっかいってよ」
「本当に大丈夫? 明日行くんでしょ ”ウォールガルド”」
「わかってるって」
少し声を震わせ、少し勢いをつけ扉を閉めた。
「あんな辺鄙なトコに......どうして私が......」
ため息をつく。
思えば、あっという間だった。
”首都魔法高等学院”
私はそこにいた。
そこそこの人生、特に苦労もせず上手くいくことが多く、クラス内でも常にトップにいたし、たまに負けることはあってもほとんど私の圧勝だった。
魔法が好きで、将来は魔法の研究がしたいと、そう思っていた。
そのはずなのに、年に一度行われる大規模なイベント ”闘技祭” その決勝で打ちのめされた。
信じられないことに手も足も出ない、上には上がいたんだと痛感し、そして私の全てが崩れ去った音が、聞こえたような気がした。
地に膝をつき、相手を見上げ
有り得ない
そう思ったんだ。
一つ、印象的だったのは
あの表情。
私を貶すような眼だった。
それからのこと、私の道は歪み始め、夢だった魔法研究機関への所属は叶わず、あの汚れ仕事 ”ギルド” に所属しなければならなくなった。
歪んで見えるドレッサーを横目に、純白に近い薄い桃色の髪がなびく。
明日、私はウォールガルドへ向かう。
「......ぐすっ」
涙が、ベッドシーツを濡らした。
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