1 ローゼキ=カタシグレ
初投稿です。
たぶん、というか絶対痛いので、生暖かい目で見ていただけると幸いです。
「虧月」
立ちはだかる大樹に向かい、木刀を振りかざす。
それを追いかけるように、風が鳴く。
ヒュッ――
樹と木がふれあい、僅かに傷をつけた。
もう一度、その過程を踏んだ。
更にもう一度
更に更に
何度も何度も何度も繰り返す。
しかし、それは僅かにしか刻まれることはない。
何度繰り返そうが結果は変わらないように見える。
しかしながら、確実に、変化は起こる。
眉に水滴が滴り、思わずそこを拭う。
果たして意味はあるのだろうか。
僅かながらも、確実に進む。
その過程を
鍛錬
俺はそう呼んだ。
「ローゼキ、飯の時間だ」
「今いく」
父親に声を合図に、鍛錬は終わる。
そして木刀を収め、父親のもとへ向かう。
「調子はどうだ」
肉を頬張りながら父親は俺に問う
「まあまあかな」
「まあまあって何だ」
「いつもと変わらないってこと」
相変わらず肉を好む父親は、少し顔をしかめた。
「明日 ”ウォールガルド” へ行くんだろ? そんな弱気じゃ、先が思いやられるな」
「大丈夫、これでも少しは頑張ったんだ。 なんとかなるはず」
その言葉に続いて言った。
「たぶん」
まだ大量にあったはずの肉が、いつの間にか全て骨に変わっていた。
「あまり無理をするなよ」
そう言い残し、父親は立ち去った。
明日、俺はウォールガルドへ向かう。
あまり感情を見せない父親が、たまに優しさを見せる時がある。
そんな姿も、やり取りも暫くはお預けになる。
思わず俺は、父親を追いかけた。
そして――
「骨」
「何の話だ、ローゼキ」
「自分の食べた物くらい片付けてくれ」
父親は逃げた。
お読みいただきありがとうございました。
ゆっくり投稿したいと思うので、気長にやっていきたいです。