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Wild Wind

ある時、とても気持ちのいい風が吹いた。とても暖かく、優しく、懐かしい風。その風をもっと感じたくて両手を広げ、握り、また広げ、としていると、魔女もこの風に気づいたのか、驚いたような顔をし、そしてなぜかにやにやと笑い始めた。

「・・・あら、そう、へぇ・・・。ふふっ。」

「何で笑うのです?」

「いえ、風の流れが変わったので。ふふふ。」

「ですから、それでどうして笑うのですか?」

「ふふふ・・・いえ、これから、何が起こるのかが楽しみで。あぁ、でも私、それを見届けることはできませんね・・・残念。」

「だから、どういうことです?さっきから、何を言ってるのですか?」

「姫様、私、もうお暇しますね。」

「えっ・・・?」

訳が分からないまま別れを告げられ、混乱した私の頬を、風が過ぎていく。

「だって私、お邪魔虫ですもの。姫様・・・今まで、ありがとうございました。お会いきて、色々お話しできて、とても嬉しゅうございます。どうぞ。これからもお元気で・・・」

名無しの魔女の姿が、次第にただの黒い影となり、その影さえも、風に乗って飛ばされていく・・・

「大丈夫ですよ、姫様。私は、いつまでも、あなたの傍に・・・」

呆然としているうちに、最後の一片まで飛んでいってしまった。後に残ったのは、透き通った風ばかり。

残された私は、一人、膝を抱えていた。

魔女の馬鹿。裏切り者。私、まだ思い出せてないことがたくさんあるのに・・・私が眠ってしまった理由も・・・違う。馬鹿なのは私。私、魔女に何もお返しできていない。感謝してもいない。あの人と夢の中で出会ってから、私、どれだけ救われたか。幸せだったか。もっともっと、一緒にお話ししていたかったのに・・・。

 私を慰めるのは、風と、風が運んでくるバラの香りだけ。それなのに、いつからか嫌な風も混じりだした。冷たく、荒く、激しい風。日に日にその恐ろしい風は強くなる。けれども、懐かしい風も吹き続けている・・・私、どうしたらいいの?

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