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愛別離苦

 一発二発、三発。振りかざす度にキモチガイイ。満たされていく。壊れていく度に私が治されていく。等価の交換でしょう? 貴方はそれだけ酷い人だったの。最後に私を助けてくれた、これだけは善行だったね。え? ふふ。いやいや私は蜘蛛じゃないから助けることなんて出来ないよ。それにしないよ。

 私は笑う。目の前では眼孔から、ゔゔゔと赤と黒が唸りを上げている。其の目で何が見える? ねぇ? 教えて?

 走馬灯。過去が蘇る。家庭。日だまりのように温かい家庭、それに尊敬の出来る両親、兄妹、そして友達、愛する彼女。僕は努力家だ。努力したから得られた。頑張れば皆も同じように報われるサ。ササササ。あそこの乞食は可哀想だ。ホラお恵みだヨ。これが僕の優しさ。両親から貰った優しさ。君にも優しさを分けてあげる。

 私は笑う。そして嗤う。傑作傑作! 何も見えていないじゃない! 満たされたその腹が空腹知らないように、目的へ走るその足が迷いを知らないように! 何も見えていない! 何も知らない! 所詮はフィルター越しでしか見ていない反吐の出る愛! 愛? そんな虚像を信じて、信じ切ってしまうその愚かさ!

 私は泣く。いや鳴く。雨の中嘶く狼のように。

 アアア。羨ましいネェ。温もり? 尊敬? 努力? 優しさ? 愛? そうよ何も知らないわ! 私は周りのしていることを真似していただけ。取るべき、望まれる行動を取っていただけ。周りの目を気にして、私を連れ去る夜に怯えるように。何が愛なの? いや、愛なんてないの。あってはダメなの。あったら怖いの。あったら……。……あったら私が、私の全てが否定されるの。そういう宿命を負ってしまった。負ってしまったんだわ……。

 私は鳴く。いや泣く。赤子のように。

 どうしてこうなってしまったの。どうして。本当は愛が欲しかったの? そうなの? 私の本心はどれ? どこにあるの? 全ては骨髄の何十兆の反応の集積じゃなかったの? 私はどうすれば良いの?

 

 その涙を拭いて。

 例え、君が君自身が分からなくても、僕が知っている君が本当の君になれば良い。それだけだよ。だからもう泣かないで。

 笑った君の顔が僕は一番好きだよ。


 だから私は貴方が大嫌い。


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