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2・さっそく

 ……なるほど。あれは前フリだった訳か。

 どうやら俺は転生をしたようだ。その証拠に、俺の眼と鼻と耳と舌がまったく機能していないし、ぼんやりと浮かぶ人影はどことなく安堵と安らぎを与えてくれる。体が思うように動かず、声帯が発達していない為に声が出ない。こういう状況は、つまるところ赤ん坊になってしまったという事だろう。何それ、最高。


「―――――、―――」


 人影が何か言っているが、俺には理解出来ないし上手く聞き取る事も出来ないので勝手に泣く。赤ん坊は泣く事で喉の羊水を吐き出し、空気を肺に送るんだからな。これをしないとマジで死ぬ。


 さて、これは転生だ。一般人ならここで慌てふためくところだろうが、生憎と俺は普通よりかなりズレている。こういう状況は何度も小説で読んだし、るっくんと何度も談義した物だ。これが異世界転生なら良いんだが、普通に元の世界での転生だったらどうしよう。元々賢かった俺は子供の頃からるっくんの教えを受けていたこともあって、転生したからと言って前の人生と変わった生活は送れないだろう。そんなの退屈だ。


 それより最後のアレ、本当に良かったなぁ。俺は死んだけど二次元が三次元に再現されたみたいで本当に嬉しかったし、他者から悪感情を抱かれるくらいるっくんが優秀だったって事が証明された。それが当然とはいえ、俺はるっくんが不当な扱いを受けているのが嫌だった。今までの欲求不満が一気に解消された気分だ。


 どうやら俺は抱き上げられているらしく、人影が何度も何度も声を掛けてきた。が、この体はおねむみたいだ。赤ん坊ってこんなに早く寝るもんなんだな、と思いながら一つ欠伸をして、瞼を閉じた。




 転生から三ヶ月が経過した。どうやら俺は、念願の異世界転生をしたらしい。やったね。

 どこからどうみても異世界風の木造建築に、今時化学繊維の一つも使われていない衣服。それだけなら逆行転生だろうが、この世界の父さん(便宜上前世の親父と分ける事にした)が怪我をした母さん(父さんと同じく分ける事にした)に不思議な光を当てて治療している様子を見て、ここは魔法がある普通の異世界だと理解した。いや、普通の異世界ってなんだよ。


 ていうか元気良すぎなんだよ母さん。あんた産後なのになんで元気一杯に外で素振りなんかしてんですか。しかも二メートルはありそうなツヴァイハンダーなんぞ振り回しやがって。あれ絶対六キロはあるぞ。材質が鉄だと仮定した場合の話だけど。何、グォンて。絶対人間が出しちゃいけない音だよ。


「―――、――――!」

「―――――……――」

「っ……、――」


 はいはい、惚気は後にしてくれ。

 今のは母さんがこんなの全然大した事無いぜ的な事を言い、父さんが呆れて窘めつつも回復魔法と思われる魔法を使って母さんの体力を回復させ、母さんが照れて「あ、ありがと……」的な事を言ったのだろう。なんせリアクションがそれっぽい。なるほど、生まれ変わるとこういう形で言語を習得していく訳だ。面白い。

 だが惚気るな。


「アー、アウー」


 半分抗議のつもりで未熟な声帯を働かせると、さっきまでピンク色の空気を出していた父さんと母さんがすっ飛んできた。とはいえ、理由は違うようだけど。


「―――! ――!」

「――――。―――」


 母さんが過剰なまでに俺に呼びかけを行い、それを窘める形で父さんがフォローする。恐らく母さんが戦士か何かで、父さんが白魔法使いなのだろう。母さんがわからない事を全て把握していて、ナイスなタイミングで白湯を飲ませてくれたり、腹が減って大泣きすればそっとその場を後にする育メンっぷりも見せる。母さんはその事にまだ気づいていないみたいなのが悲しいかな。大丈夫、俺は父さんの理解者だから。


 それで、今回父さんは俺が眠気を訴えたのだと判断したようだ。実際に目がトロンとしている感じだし、やべ、意識したら眠くなってきた。


「―――――、――」

「―……―、―、―。―――」


 「おねむみたいだね、寝かせてくるよ」

 「わ、私が……あ、いや、いい。連れてってあげて」

 みたいな感じだ。母さんは俺を溺愛していて、いっつも俺と一緒だから父さんにも構わせてあげないといけないって思ったんだろう。残念ながら俺は寝るが。


「――、フリス」

「―、―――、ベルト」


 そんな母さんの心内を察してありがとうと思われる言葉の後に母さんを名前で呼ぶ父さんに、もう、そんなの気にしないで、と思われる言葉の後に父さんを名前で呼ぶ母さん。どうやらこれが二人の名前らしい。この世界で始めて憶えた単語だ。俺はそれに幸せを噛み締める。やっぱ両親って良いものだな。その点に関してはるっくんと数少ない見解の相違を見せていたけど。どうも親に恵まれなかったらしい。


 間もなく母さんと別れ、父さんに子供部屋に連れられる途中で俺の意識は夢の中へと消え行くのだった。




 起きる。辺りを見回すも父さんはいない。珍しいな、父さんは俺が夜鳴きした時に備えていつも傍にいるのに。

 とはいえ、これはチャンスだ。


 いつも隙を見ては行っている、魔法の感覚を掴むような意識を体に向ける。生後一ヶ月頃から試している事なので、既にある程度のカンはついている。


 まず、魔法を意識しながら強くイメージをすると体の中で何かが動く。それは説明し辛い感覚だが、確かに感じられる物だ。これを俺は便宜上魔力と呼んでいる。

 この魔力だが、今はどうやっても顕現させられないのが壁となっている。確かに何か動いてる感じはするのだが、その先に進めない。こんなのは初めてだ。


 そこで、俺はこの機会を利用する。すなわち父さんと母さんがいない時だ。流石に生後三ヶたぶんの赤ん坊が魔力を動かしている、なんて事がバレたら確実に騒動になるだろうし、なんだか俺を見る目が変わりそうで怖い。しかし、それも離れているのなら問題ない。普段出来ないような、深く没頭するような実験を行える。


 いつものように強いイメージを頭の中に浮かべる。するといつものように魔力が動き、なんらかの形を作る。いつもならこの辺でバレそうになるかな? と思うのでイメージを解して何食わぬ顔をするところだ。

 だが今の俺は一味違う。


 俺がイメージしたのはなんの変哲も無い水の塊……と言いたいところだが、よくよく考えてみれば水の塊がなんの変哲も無い筈が無く、魔法に関して未習熟なためか魔力がまったく動かなかったので、ペットボトルに入った水を想像してみた。予想通り魔力は動き、体内に何かが出来た感覚を覚える。


 さて、これをどうすれば魔法としてこの世に顕現させられるかだが……やはり詠唱とか必要なんだろうか? 父さんは母さんを治療する時に歌のような言葉を紡いでいるから、そうなのかもしれない。

 だが、だからといって諦める理由にはならない。


 とりあえずイメージしたペットボトルに入った水を少しだけ上に飛ばすイメージを持ってみた。魔法を使っているとバレないように、下半身の上だ。これなら恥を犠牲におねしょで済ます事が出来る。水にしたのもそのためだ。


 しかし、何度イメージしても体の中の何かは動かない。違和感を覚えはしたものの、魔法は発動しない。


 アプローチの仕方が悪いのか? この何かを思考で直接動かすようにイメージすれば……あ、ダメだ。何か自体が霧散してしまった。むむむ……ん? 待て、アプローチ?


 浮かんだ疑念を解消する為にもう一度ペットボトルの水をイメージして、体内に何かを作る。そして次は、その何かを右手に持つようにイメージしてみた。

 すると、今までうんともすんとも言わなかった何かが右手に現れた。

 形は、ペットボトルを模した物だった。


 そうか! ああ、俺はなんて愚かだったんだろう。ペットボトルの水をイメージして、どこかに飛ばす事なんて出来るわけ無いだろ! ペットボトルの水は、飲むものだ。どこの馬鹿が水の入ったペットボトルを矢のように飛ばすんだ? まったく、こんな初歩的な事すら思いつかないとは。


 そんな事を考えていたせいか、やっとの思いで顕現した水から制御が離れ、俺の上に落ちてしまった。危ない、股間のところに手をやっていなければ右腕周辺だけがびしょ濡れという不自然極まりない状況を晒すところだった。いや、これはこれで嫌だけどさ。


 偽装工作として本当におねしょをした。だってイメージしたのは所詮ただの水なのだから、匂いなんて無い。そんな物では疑念を抱かせてしまうだろう。赤ん坊の体だからかしたいと思えばする事が出来た。匂いもあるし、これで誤魔化せるだろう。


 そしておぎゃーおぎゃーと泣き叫ぶ。もう少し魔法に関して実験をしておきたかったが、おねしょをした赤ん坊が親を呼ばない訳が無い。俺自身も気持ち悪いし、事は慎重に進めるに限る。


 予想通り、俺が泣いて十秒もしない内に父さんが駆けつけ、グズる俺をあやめながらおしめを換えてくれた。ちなみに、前世でいう紙オムツではなく、紐で布を縛るタイプだ。着心地は良いが、数が少ないので俺が漏らすたびに洗わなければならず、毎回申し訳なく思っている。弟と妹がおねしょを卒業したのが二歳くらいだったから、それまで我慢してくれとしか言えないのだが。ん~、それまでに我慢できるようになる努力をしよう。


 それはそれとして、今回の実験は実に有意義だった。父さんにもバレなかったし、赤ん坊が周囲に興味を持つような時期が来たら積極的に魔法に反応する事にしよう。




 新たな生を受けて半年が経った。

 この頃になると体が大分成長して、感覚が発達してきた。前よりさらに遠くまで物が見えるようになったし、与えられた玩具も器用に掴めるようになった。といっても、所詮は赤ん坊の体なのですぐに眠くなったり腹が減ったりして満足に遊べないのだが。


 そうそう、ついに俺の名前が判明した。

 どうやら俺の名前はグレイキンというらしく、愛称は無い。たゆまぬ言語習得の末に日常会話が分かるようになった結果、姓も判明した。ヴァルゲンだ。グレイキン・ヴァルゲン。うぅむ、実にカッコイイ。

 ちなみに、父さんの名前はベルネルトで、母さんの名前はフリスチーナだ。何故姓はドイツっぽいのに名前がロシアっぽいのかは分からんが、異世界に前世の言語を持ち込んで考えるのも間違っているだろう。それに、俺の名前の由来も分からんし。


 一番驚いたのは……ああ、いや、二番目か。とにかく、父さんが貴族らしいという事だ。らしい、というのは、たまに訪れる客人がどこか恭しげに父さんたちと接していたからだ。まだ貴族だと決まったわけじゃないが、母さんはともかく父さんの所作は優雅だ。可能性として、そうおかしな話でも無いだろう。


 食生活も変わった。母さんのお乳の出が悪くなり、離乳食がメインになってきたのだ。味覚が未発達なせいか、味はまったく感じられないが。砂糖が入っていない葛湯(くずゆ)みたいな感じだ。


 後、なんと言っても魔法術だな。魔法、というより魔法術という感じの言葉だったので改めて呼んでいる。

 睡眠時間が多くなった為に一人になれる時間は増えた。一日に四時間の睡眠を二回取るという前世の癖が役に立った。父さんと母さんが寝静まった頃に起きて、こっそり風の魔法術を使うのだ。火だと明るさで起こしてしまいかねないし、土だと制御に失敗すれば残骸が残る。積極的におねしょをしたい訳じゃないので水も使わない。となると、失敗しても大きな音が出るだけで夜泣きをすれば誤魔化せる風の魔法術くらいしか使えないのだ。闇とかなら試せそうだけど、暗いと分かりにくいからな。そもそも闇の魔法術なんてのがあれば、の話だけど。


 今のところ俺の正体がバレているような雰囲気は無い。たまに前世の癖で赤ん坊らしからぬ行動を取ってしまう事もあるが、所詮は偶然。むしろ成長が早いと喜ばれる事があるくらいだ。


 しかし、どうにも気になる所がある。

 父さんと母さんがたまに俺の右目を見るのだ。その度に溜め息を吐いたり、かと思えば喜んでみたり、正直に言えば不気味だ。なんだろう、オッドアイにでもなっているのか? 鏡が無いから確認出来ない。


 それに、貴族だと思われる父さんだが、住んでいる家は多少頑丈そうなだけの質素な家だ。使用人も、やたらテンションの高い執事っぽい人(狼の獣人だがな)が最近来ただけで、人の気配という物が少ない。いや、前世と比べればよほどある方だけど、俺がイメージする貴族に比べると、な。


 なんて、ここ三ヶ月のことを振り返っていると、件の執事っぽい人改めクーメスが離乳食を届けに来た。父さんと母さんは何やら遠出をしているようなので、今は家にいない。


「グレイキン様、お食事をお持ちいたしました!」


 このように、無駄にテンションが高いのである。執事ってもっとクールな奴かと思ってたのに、がっかりである。

 とはいえ、執事としての腕(執事の仕事じゃ無いのも混ざっているが)は中々の物だ。何せ料理は美味い(らしい)し、掃除は上手いし、細かいところに目がいくし、何より絵本を読んでくれる。夜泣きすればすかさずあやめてくれるし、おしめの交換だって妙に手馴れている。たまに魔法術まで見せてくれるので、会って僅か二日で懐いた。今更だが、これって家政婦とかメイドの仕事じゃね? いないから仕方ないといえば仕方ないが、その技術を持つ執事って何?


「アー、アー!」

「今日もお元気そうで何よりでございます! では、お口をあーんしてください」


 クーメスはご飯を食べさせてくれるとき、少し声の調子を下げる。腕が異常に長い人ではないので、離乳食入りのスプーンを俺の口へ運ぶ為に顔を近づけるからだ。普段のテンションは少しアレだが、こういう個性を抑えて職務に堅実な姿は好ましい。ちょっと獣臭いけどな。


 大人しく口を開いて木製のスプーンを受け入れる。前世の金属スプーンより優しくて温かい口ざわりで、俺は好きだ。相変わらず味は感じないが。


「ウアー!」


 ただ、美味しいアピールだけは忘れない。父さんと母さんはクーメスのご飯を美味しいと言っていたし、離乳食だって本当なら美味いのだろう。俺は空気が読める赤ん坊なのだ!


 それに……


「それはようございます! 喜んでいただいて、私も嬉しゅうございます!」


 クーメスが凄く喜んでくれるからな。よく遊んでくれるから、こういうところでしっかり返しておかないと俺の気がすまない。いやぁ、我ながら良い主従関係を結べていると思う。


「グレイキン様、少々失礼いたします」


 おっと、さっきのウアー! でご飯と涎を少し零してしまったようだ。クーメスがハンカチで拭ってくれる。ありがとうございます。


 そんなこんなで昼ご飯が終わり、お昼寝の時間だ。生後六ヶ月の体は睡眠を求めているのである。俺の場合一回の睡眠を二回に分けているから特に回数が多い。


「おねむですね? 今日は暖かいので外に出ましょうか」


 クーメスは俺が眠くなったときも声の調子と音量を落とす。気が利く執事なのだ、彼は。


「アー!」

「流石はグレイキン様、賢くございますね。では、行きましょう」


 クーメスに抱き上げられる。獣人特有の毛に覆われた手だが、クーメスの毛は比較的柔らかいらしく、ごわごわする感じはしない。温かくて俺は好き。


 外に出ればクーメスの言う通り暖かい空気に包まれ、そっと揺り籠に寝かされた。ふわっとした羊毛の感触が柔肌を撫で、自然と眠りを誘う。この揺り籠だけはぐっすりと寝入ってしまうが、それはそれで気持ち良い上に起きたときの体調が抜群なのでわりと好んでいる。何も魔法術だけが楽しみなわけではないのだ。


「相変わらずお可愛い寝顔でございますね。それでは、おやすみなさい」


 クーメスの言葉が最後まで聞き取れるか聞き取れないかといった時間に、俺の意識はシャットダウンへ向かった。




 …………ふぁ。

 うみゅみゅみゅ……うぁ、良く寝た。


 寝ぼけ眼のまま周囲を見ると、夕方になったのか周囲が茜色に染まっていた。うぅむ、まるで血のようなどんよりとした赤色だ。赤ん坊が黄昏泣きをするのも頷け……


 待て。

 何かがおかしい。


 違和感がある。それも、凄く嫌な何かが……


 クーメスはどこだ?


「オギャー! オギャー!」


 視界の回復を待たずに遠慮なく泣き声を張り上げる。一刻も早くこの気持ち悪い違和感を拭うべく。

 クーメスの声は聞こえた。


「グレイ、キン様……」


 それはまるで、搾り出すかのような声で、


「ご安心、ください……」


 黄昏に染まる血の色は、妙にドロリとしていて、


「このクーメス、必ずやグレイキン様を……」


 景色の奥には、とても大きな何かが倒れていて、


「お守りいたします!」


 惨状だった。

 声は虫の息であるクーメスの物で、黄昏の色はクーメスの血。景色はバリアのような物で、奥にいるのは魔獣と呼ばれる危険な存在だった。


 何故、どうして、クーメス、どうした……

 寝ぼけていた脳は衝撃によって活性化し、揺り籠から見える範囲の状況を把握する。

 庭は荒れていて、ところどころに肉片が飛び散っている。どうやら戦闘があったらしい。父さんが大事に育てていた花畑が踏みにじられていた。


 いやそんな事より! クーメスの胸が、赤く染まっている!


「ウー!」

「大丈夫、でございます……」


 そんな事言うなよ! 酷い血じゃないか! ぜんっぜん安心できねぇんだよ!


 ああ、待て、やめろ、避けろクーメス!

 急に視界に現れた二匹の大犬が血まみれのクーメスに牙を突きたてようと突っ込んで、きた。クーメスは、それでも俺を優先しようと、大犬に背を向け……


 ふざけんな!

 こんな、唐突で、お粗末な、終わりなんかッ!

 絶対に認めるかぁぁぁ!!


 クーメスが動ききる前に、俺はクーメスがいつも見せてくれる炎の魔法術を強くイメージし、大犬に向かって嗾ける(けしかける)。火で出来た犬のような魔法術は黄昏の結界を素通りし、大犬に噛み付いた。二匹の大犬は仰天し、次いで熱さによりクーメスへ飛び掛った勢いが失われ、地面に転がる。


「なっ……まさか、グレイキン、様、魔法術を……」

「アー!」


 次に父さんがいつも母さんにかける回復の魔法術に近い魔法術を使ってクーメスの傷を癒す。イメージは、再生力の強化と増血だ。あまり俺を舐めるなよ、こちとらやる事が無くて妄想力だけは無駄に鍛え抜かれているんだからな。


「これは……ベルネルト様の!? 信じられません……っと、今はそれどころではございませんね」


 一瞬呆けたような表情を作ったクーメスだが、すぐさま大犬二匹に駆け寄って近くに落ちていた剣で首を刎ね飛ばした。ドサリと倒れる音が聞こえ、大犬で戯れていた火の犬はしばらく庭を駆け回り、やがて姿を消した。


 それを最後に、この庭で動く者は俺とクーメスだけとなった。


 さて、いきなりの暴露フラグ。正直早すぎるかな、と思わなくもないのですけど、この先の濃さを考えるとこのくらいどうってことないかな……と、思いなおしまして。

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