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エリート高校の落ちこぼれの転校生  作者: うしやき
第一章 悪魔騒動編
6/80

災いは突然に(後編)

お、奥の手だと……。


嫌な予感しかしない…。


「それじゃあ…。もしも、一緒に寝てくるないなら大声で『きゃあー!助けてください!レイプされるのですよ!』って叫んじゃいますよ?」


なっ!?小癪な、そんなことされたら俺の男としてのそして人間としての尊厳が地に落ちてしまう。


「そういえば今日、橘さんと水原くんを紹介するときに。なんでもするっていいましたよねぇ~?」


そ、そういえばそんな事もなくあったような…。


「さあ?どうします?ロリコンレイプ魔の称号をもらうのと、おとなしく一緒に寝るの?」


なんか…最初から選択肢が1つしかないような……(´д`|||)


「ね、寝ます…」

「はい、素直でよろしいのですよ~」


くそ!こんな見た目小学生の合法ロリにいいように弄ばれてるのが非常に気に食わない!!


「ほらはやくはいってくださいの」


そういって、瑠璃はベッドの布団をめくった。反論するとさらに追い討ちをかけられそうで怖かったので大人しく言うことを聞くことにした。


そんなことを思っていると、瑠璃からの第2激が放たれた。


「次はギュッと抱き締めてくださいの」

「はっ!?」


なにいってんだこのバカは!?そんな透け透けのネグリジェ着た状態で抱き締めたりしたら色んな所があたって……。


ふぁ!?俺はいったい何を考えているんだ!


くそ!見た目小学生のくせして身体だけはいっちょまえにイヤらしい身体つきしやがって…。このままじゃ本当に俺のガン○ムがト○ンザムしかねん…。


「ほら早く~」


甘えた声出してんじゃねえよ!


背に腹は変えられん。ここは覚悟を決めてやるしかない!そうだ!明鏡止水の心だ…。


師匠も言っていた、『どんなときも心を乱すでないぞ?明鏡止水じゃ』


(煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散!)


ひたすら魔法の呪文?を心のなかで唱えながら早く寝付けるのを待ったが目が冴えすぎて全然寝付けなかった。


そんな、生きるか死ぬかの瀬戸際にいる俺を他所に、当の瑠璃と来たら幸せそうな寝顔をしてグッスリと寝ていた。


その寝顔は、年相応?の子供が母親と寝ているかのような、とても穏やかで今まで悶々としていた自分が恥ずかしいぐらい愛らしい寝顔だった。


(はぁ、こんな寝顔みたら煩悩なんて吹き飛んじまうな……)


これでようやく寝付けると思い目を閉じると。鈴虫の鳴き声に混じりかすかな寝言が聞こえた。


「お……さ………か……ん……し…………じゃ………だよ………」


「!?」


その寝言を聞いて俺はなぜか衝撃に撃たれた…。


もう少し聞いて、その衝撃の正体を確かめたかったが、唐突な睡魔に襲われ、俺は深い深い闇へと落ちていった…。


・・・・・・


そこは地獄絵図だった。


建物は燃え、木々はなぎ倒され、川は干上がり、畑は荒れ果て、人は焼け死に、瓦礫に押し潰され、泣き叫び、救いを求め神に祈りを捧げ、逃げ惑う人に助けを求め、蹴落とし、黒い雨が降り注いだ。


そんな中、一人の少女が瓦礫の前で座りこんでいた。


「お母さん!いや、死なないで!」


瓦礫の下にはその少女の母親らしき女性が生き埋めにされ、そこのは血の海が広がっていた。


「※※、あなたは早く逃げなさい、アイツが戻ってくる前に……」

「嫌だよ!お母さんを置いて逃げるなんて…」


最初の方に何を言っているのかはよく聞こえなかったが。母親は自分が助からないと悟り、せめて娘だけでも逃げるようにと。さとしていた。


「バカなこと言わないで、早く逃げなさい!あなたまで、死ぬことなんでないのよ……」

「でも………」

「私はねここで死ぬ定めなのよ……運命には誰も逆らえないのよ……。だから、お願いせめて……最後に私の…大切な…あなただけ……でも……生きて……。私の分も生きなさい……」

「お母さん!」


そろそろ、限界が近いのだろう言葉が途切れ途切れになり、息も荒くなってきた。


俺の心のなかでは形容しがたい感情が渦巻いていた。


「なにが運命よ!運命なんかに負けるもんですか!もし、神様が運命を決めるとするのなら、私は神を殺してみせる!」


娘の母を思う言葉に心を撃たれた…。


母親も感極まり、滝のごとく涙を流した…。


この胸を渦巻く形容しがたい感情に戸惑い、つい足音を荒げてしまった。


その足音に気づいたのか二人の親子の視線が俺に向いた。


最初に口を開いたのは娘の方だった。


「そこの人、お願い!お母さんを助けて!」

「※※…………。」


やはり、一部分だけノイズが入ってしまう。


(ここで、下手に助けてもこの出血では助かるまい。非情ではあるがなにもみなかったことにしよう)


だが、俺の足は自分の思考に相反し勝手にその親子の方へと進んでいった。


そんな俺をみて、母親は……。


「そこの方、いいのです。せめてこの子だけでも、私はどうせ助かりません。この子だけでも助けてください……」


母親はもう限界であろうに、涙を流しながら俺に懇願してきた。

だが、俺にはその事が理解できなかった。自分は助かろうとせず、子供とはいえ他人を助けようとするなど。あまりに不可解でついその事が口に出てしまった。


「理解できない、なぜあなたは助かろうとしない?なぜ、娘をたすけようとする?」


そんな、空気も読めず人としての感情が未発達だった俺に、母親は諭すようにいった。


「この子は、私が腹を痛めて……産んだ子、私に…とってはこの子は………宝であり……私の希望なの……です。本当はこの子が…どんな子になって、どんな人と…結ばれて、どんな人生を……歩むのか……、見守っていたかったの……ですが…、もう、限界の……………ようです。お願い…します、この子に……未来を……光輝く明日を………見せてあげてください………。」


母親はその言葉を残し息を引きとった。


娘は、母親の遺体から離れようとせず。冷えきっ手を握り。「お母さん…」と何度も呼び掛けた。


俺は困惑していた。間違っているはずなのだ、どんなに子供が生き延びようと、自分が死んでは意味がない……………はずなのに……。


どうして………。



どうして……………。




どうして…………………………!





こんなにも涙がこみ上げてくるんだ…!



生物の生存本能としては間違っているはずなのだ。


他者を切り捨て、蹴落とし、陥れる。


それが、ただしい人間の本質のはずなのに………。


どうしても、さっきの母親のやったことが……。


美しいと感じてしまう……!


死んだら意味がないのに……!


人間は汚い生き物なのに……!


どうにても、母親の生きざまが………美しいと………。羨ましいと感じてしまう。


俺は、糸のキレた操り人形のごとくその場に立ち止まった。


自分が理解できない。


親に捨てられ、※※※に育てられ。


人間の醜さをしり。


人間社会に嫌悪していた俺が……。


始めて、人間を羨ましいと…。


美しいと感じてしまった………!


(守らなくては……)


美しい生き様を教えてくれた母親の最後の願いを……。


最後の希望を…。


俺は、護らなくてはならない。


「お母さん……お母さん……お母さん……おかあ、ひゃっ!?」

俺は、母の遺体の前で座りこんでいた少女を抱きかかえた。

「やめて!お母さんをひとりにしないで……お母さん…お母さん……」


まるで、呪詛のように繰り返す少女。


普段なら黙らせるはずなのに。


俺は、天命に突き動かされるように瓦礫を浮かせ…、母親の遺体も自分の腕に抱えた。


「え?」


少女は理解できなかったようだ。困惑の表情を見せ。なんども、母親の遺体と俺のかおを見た。


「この人は、ちゃんとしたところに埋める。それが、俺ができるこの人への最大の敬意であり。最低限の贖罪だ…」


少女は安堵の表情を見せ、まるで死んだかのように眠りに落ちた。


そのあと俺は母親を霊樹の元に埋め、申し訳程度に、手作りの墓標をたてた。


名前が分からないため。


『生涯をまっとうし、生命と死の美を示しものここに眠る』


と書いた。


その後、娘を近くを調査していた魔法協会の人間に託した。


俺は娘に、母親の墓の場所を教えるのを忘れていた。


だが、母親の生き様は一生忘れることなく俺の心に根付いていた…。


今でも忘れられない、あの母親の最後に見せた……。幸せそうな笑みを。


そして、少女に残したあの言葉を……。


・・・・・・


目が覚めた。時計を見て時間を確認すると…午前4時半だった。何時もと同じ時間に目を覚ましたようだ。


なにか懐かしい夢を見た。


だが、よく覚えていない。とても悲しかったような…、なにか美しいものを見たような……とても不思議な目覚めだった。


ふと、俺は自分の頬が濡れていることに気がついた。


(俺が泣いた……?そんなまさか…。)


いったいどんな夢だったのかよく思い出せない。


起き上がろうとベッドに手をついて思い出した。


(…………瑠璃がいない?)


どうして、こんな朝早くに?


不振に思い、ベッドから出てリビングへと行った。


そこには机の上で写真立てを見ながら涙を流している瑠璃の姿があった。


「お、おい……どうしたんだ?」


俺は戸惑いながらも声をかけてみた


「!あ……陽翔君……。おはようございます」

「え…?ああ……。おはよう…」

「すみませんね…変なところを見られちゃいました?」

「いや……えっと、大丈夫か?」

「ふぇ?なにがですの?」

「泣いてたから……、どうしたのかと思って…」


その瞬間、俺と瑠璃の間に長い沈黙が流れた…。


「えっと……嫌なら話さなくていいんだぞ?」

「いえ…。同室になったのも何かの縁ですの。お話しします」


瑠璃は覚悟を決めたように。俺を自分の前に座るよう促した。

俺はそれにしたがい瑠璃の正面へと座った。


「まず…何から話しましょうか……?そうですね……。私の母の事から話すとするのですよ」


『母』という単語が出てきて俺の心臓がドクンッ!と高鳴った。


「私は昔、母と二人で暮らしてたんですの。父親は母が私を身籠ってすぐに他界。親や親戚中に私を下ろすようにと言われたらしいのです。それでも母は私を産み女手一つで育ててくれた。父親はいなくとも母がいた。私はそれだけで幸せだった。そして、私が中学三年の頃………悲劇は起こったんですの」


瑠璃の話が始まり俺の心臓はやかましいぐらい高鳴っていた。胸に手を当てなくても脈が分かるくらい高鳴っていた。


「ある日太陽が黒く輝いたんですの」


黒い太陽……。


それは俺も知っている。


数年前、突如太陽が黒く染まり地上に暗黒の業火が降り注いだという。災害を通り越した天災。


被害は計り知れず、死者数もいまだ正確には明かされていない。

日本の一部の地域のみに起きた、天災。


それにより、町は見る影も残さないくらい 悲惨な状態となり。

その真相は未だに解明できていない。


「私はその事故で生きて帰った数少ない生き残りなのです。母は私の代わりに瓦礫の下敷きになり、死にました。私も死を覚悟しました。そんな中、一人の男の人が私と……そして、母の誇りを守ってくれたのです」


最後の一言を聞いて、俺の頭でチカチカと閃光が走った。


「そして、最後にその人は私に言ったのです…」


瑠璃が息を吸い言葉を発すると同時に俺の口も動いていた……。


「「あなたの母はあなたに望みを託した……。生きなさい、あなたの輝かしい未来を…」」


俺と瑠璃の言葉がまるで録音していたかのように重なった。


「やっぱり、陽翔君だったんですね。あのときの男の人は。履歴書の写真を見たときから気づいていました。この人だって。私を救い、母の誇りと尊厳を守ってくれた……私の勇者様」


俺の中で、もやがかかっていた記憶が少しずつ晴れやかになっていった。


「思い……出した…!」


そうだ、俺はあのとき黒い太陽を目にして一目散にその場へと向かった。その頃の俺は、人間を嫌い、人間を憎んでさえいた。


だが、瑠璃の母親にあってから俺の人生は変わった。


人を、その心を美しいと思い。敬い、そして命の大切さを、儚さを、輝かしさを知った。


「ずっと会いたかった…。あって言いたかった。……………………ありがとうって…」


瑠璃は再び涙を流した。


俺は、無意識のまま瑠璃を胸に抱き背中に腕を回した。


「ありがとう、あなたのお陰で母は私は救われた……。あなたのお陰で、今の私がある……本当に、本当にありがとう」


涙を流した、ただただ『ありがとう』と繰り返した。


俺も、今の気持ちを伝えた


「俺も、ありがとう。瑠璃に出会い、瑠璃の母親の生き様をみて俺は変われた。人も嫌い、憎み、嫌悪していた俺が、人を愛し、人を信じ、人を救うことができた。本当にありがとう」


俺と瑠璃はしばらくなにも言わず。


抱擁を続けてしばらく、お互いに顔を見合わせ…笑った。


・・・・・・


それと同時刻、学園に黒い影が忍び寄っていた。


「フフフフフ。もうすぐ、もうすぐで私の望みが叶う……。これで、私は自分の天命を全うできる……」


影の中にたたずむ一人の少女。


学園の忍び寄る闇。


本当の災いはこれからだった……。

とちゅうの※(アスタリスク)はバグや文字化けではありません。

気にせず読んでください

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