災いは突然に(前編)
俺は、逃げていた。
なにからって?そりゃあもちろん悪魔達からだ。
ただの落ちこぼれクラスと思っていたがそうじゃないようだ、実際あいつらはなかなか動く。連携もとれてるし体力もそこそこある、身体能力はかなり高いと思う。おそらく、コイツらの問題点をあげるとするなら魔法的なキャパシティの低さと特殊な性癖(幼児性愛)ぐらいだろう。まあ、魔法的なキャパシティの方はほとんどがパット見なんだけど。
「くそ、どこに逃げても先回りされて待ち伏せてやがる」
俺の逃走経路も予想済みなのか逃げた先には大抵の2、3人の奴等が待ち伏せしている。
「逃げててもキリがなさそうだ、今は隠れた方が先決だな」
さて、どうする。隠れるといっても俺はこの学校の構造を把握していない。地の利に関してはあっちが有利だな。どこか隠れれるところ。どこか………………。
「ふぁっ!?」
一瞬俺のコメカミのところに稲妻が走った。シャ○かっ!とにかく、全力で目的地まで走った、幸いなことに俺がそこに行くとは考えてなかったのだろう。特に待ち伏せはされてなかった。
走った。ただひたすら走った。
そして………
「俺をかくまえぇぇぇぇぇぇ!」
「「「「!?」」」」
追われていると言うことを忘れて俺は全力で叫んだ。
「何事だ!?」
突然の出来事に全く反応できてないようすだった。
「あ?坊主?どうした何か困りごとか?」
そう、俺が逃げた先…そこは、事務室だった。
・・・・・・
「なるほど、愛澤先生との同棲がクラスの男子にばれてそれで追われてると?」
「そうなんだ、頼む昼休みが終わる残り30分ここで匿ってくれ!」
授業が終わったのは、12時45分。
そして、現在は午後1時15分。
午後の実技の授業開始まであと30分。
遅刻したらペナルティがあると言われたが。
殺されるよりは遥かにマシだ。
「いや確かに、困ったことがあれば来い、とはいったがまさか匿えって要求が来るとは思ってなかったな…」
「たのむよ!このままじゃ、本当に殺されかねない!」
よっぽど必死の形相だったのだろう、オッサンからは若干引かれ周りの職員からは少し同情の視線を受けた。
「まあ、仕方ないか。あのクラスだもんな」
「あー、1年D組ですか?」
「そうそう」
そんな俺を尻目に隣の席の職員と話をするオッサンだった。
「どうかしたのか?あのクラスそんなに問題あるのか?」
気になったので聞いてみた。
「まあ、問題っちゃあ問題だな。D組のドア妙に新しくなかったか?」
「ん?あぁ確かに新品のようだったな」
「あれで、4枚目だ…」
「なにが?」
「だから、あいつらがあのクラスに入ってから壊したドアの枚数だよ」
「は?窓ガラスじゃなくてか?」
「あぁ、お前みたいに愛澤先生がらみの事になるとあいつら別人みたいに人格変わるからな…。それで、ドンパチやって壊したドアの枚数が4枚だ」
「アホの子かよ…!」
というか!あのロリっ子にも問題があるだろ!
「まあいい、お前を匿ってやろう。んで?実際、愛澤先生との同棲は本当なのか?」
「俺は被害者だ!」
「詳しく話してみろ」
「かくかくシカジカ」
とりあえずあったことを全て話した。
「なるほど…。愛澤先生の生徒いじりか…」
「なんだ?前例があるのか?」
「ああ。お前のように行きすぎてはないが、似たようなのはいくつかある。あの先生見た目と違ってかなりのドSだからな。他の教師や生徒のなかに知らないやつの方が多いけど」
「あの猫かぶりめぇぇぇ……!」
「いや、猫かぶりでは無いぞ?実際あのポワワンとした性格は素だし、日頃は温厚で優しい先生だ。生徒と教師からの人気も高いしな」
「この学校にはロリコンしかいねぇのかよ!」
1度この学校の人間は全員心療内科に行くべきだと俺は強く思った。
「まあ、いいよ。しばらくの間ここにいな」
「いいのか!?」
「ああ、さすがに生徒の悩みをほっとくわけにいかんからな」
(いい人や!)
「ありがとう!恩に着るぜオッサン!」
「おっと、オッサンとは失礼だな。俺は、立石 亮だ。長い付き合いになりそうだから、一応名乗っとくぜ」
「ありがとう亮さん。あと、改めてよろしくな」
「おうよ!」
なんだかんだとありながら、俺と亮さんは友人?のような関係になった。
男が握手をして厚い友情を交わしているとき………。
「失礼するのですよ~」
「!?」
先ほどまで、話題の主題となっていた問題の教師が現れた。
「な、何しに来やがった!」
「う?いやお弁当を届けに来ただけなのですよ?」
あーそういやそんなこともあったか。
その後の事がインパクトありすぎて全然覚えてなかった…。
「とりあえず。はい、お弁当」
といいながらシルバーの明らかに女物にしては可愛いげの無さすぎる弁当箱を俺に手渡した。
「この弁当箱、あんたのか?」
「あんたじゃなくて、『瑠璃』でしょ?」
「だっ、誰がそんな呼び方するか馬鹿っ!」
「あれれ~?なんでもするっていったですよねぇ?」
これまたニヤニヤしながらネチっこく言ってきた。
「ぐ、ぐぅ…!」
「あっ、またぐうの音が出たのですよ」
(くそ!年下いじってなにが楽しいんだよ!このロリっ子教師!)
と心のなかで激怒していると後方より助け船が出た。
「はいはい愛澤先生、あんまり生徒はいじるもんじゃないですよ?」
「はて?私は陽翔君が可愛くて可愛くて仕方ないから。お願いしてるだけなのですよ?」
可愛い生徒に脅しをかける教師がいてたまるか!
「はぁ……、まあいいですよ。とにかく、奥の休憩スペースをお貸ししますので話ならそこでしてください」
「はい、それならお借りしますね?」
となんだか勝手に話が進んでいった。
「おい!亮さん!こんな危険生物と2人きりなんて勘弁してくれ!たのむよ!あんたも来てくれ!」
「危険生物って……私はライオンかなにかですか?」
「うっせぇ!あんたに比べればライオンの方がよっぽど可愛いわ!」
「はいはい、さっさと行くのですよ。これ以上はお仕事のお邪魔なのです」
くそ!ことの元凶がイケシャアシャアと!
と制服の襟を掴まれながら奥の休憩すへと引きずられる俺であった。
・・・・・・
「はい、じゃあ頂くのですよ~!」
「…………………………頂きます」
「どーぞ召し上がれなのです!」
オモチャにされているようで気に食わなかったが、仕方ない、従わなかったら何されるか解らないからな。
と考えながら、弁当に箸を付けた
とりあえず、玉子焼きを1口
……………………………………………………………………………………………………………うまっ!
なにこれ!?超うまい!高級レストランの用にお高い味じゃなく、素朴な家庭料理のすばらしさが解るような味だった。
俺は、夢中でガッついた。
「ふふふ、喜んでくれたみたいで良かったのですよ~」
「あんた、料理できるんだな」
「まあ、高校のころから独り暮らしをしているので料理はできるのですよ」
「なるほど、そりゃ嫌でも料理スキルは身に付くな」
「ごめんなさいね、陽翔君が和食好きだと知っていればもっと、和食物を作ってきたんですけど」
「いや、十分だ。これでもありがたいくらいだよ」
「そう言ってくれると作った甲斐があったと言うものなのですよ」
時折、会話をしながら俺と愛澤先生との食事はするんでいった。
弁当を食べ終わり箸をおいた。
「ご馳走さま」
「お粗末様です」
愛澤先生も同じタイミングで食べ終わったようだ。
「ふぅ、すまないなわざわざ作ってもらって」
「良いのですよ。朝ごはんのついでにお弁当も作ってるので今さら1人分も2人分も対して変わらないのです」
いや、1人分と2人分はかなり違う気がするが…。まあいいここはあえて黙っておこう。
ここで少し疑問に思っていたことについて話を切り出してみた。
「そう言えば、実技の授業はいったい何をするんだ?」
「あーそれは……。見てみると早いのですよ…………」
ん?なんか引っ掛かるが聞く前に
キーンコーンカーンコーン
と昼休み終了5分前の予鈴がなった。
「とにかく、百聞は一見にしかず。なのです。今のD組の現状を見てくださいなのです」
はぐらかされた感じはあったが確かその通りと思い話をここで区切ることにした。
・・・・・・
第4実技訓練棟についた。
外見の見た目は普通の体育館サイズだがおそらく、魔法で空間を拡張したのだろう。中のサイズは、野球場ぐらいあった。
「広!?」
「でしょ?これと同じのがあと3つあるんだよ?」
といつの間にな隣にいるのはロリっ子教師ではなく朝、前の席に座っていた土屋 恵だった。
「ん?おまえいつからそこに?」
おかしい、俺が周りの気配に気づかないなんて、この学校の雰囲気に流されて注意力が落ちてる?そんな馬鹿な、俺がそんな典型的な凡ミスを犯すわけがない。
「?どうしたの?」
「あ、いや。なんでもない」
これ以上は怪しまれるから止めておこう、それより本当にこいつ何者だ?
「それより、なんで制服のまま?」
まあ、おそらく誰か食いつくであろうと思っていた疑問に案の定食いついてきた。
「ああこれか。俺はまだ日本に来て3日したたってないし。第1、合格通知と飛行機のチケット以外なのも届けられてなかったからな。勿論運動着の類いも届いてない」
「教材はどうしたの?」
「それは幸いなことに、前の学校と同じ教材だったからそのまま使っている」
「ふーん……。そうなんだ」
少し含みのある言い方だったが。納得したようだ。それより、この土屋恵という女、少し注意する必要があるな。
と物騒なことを考えていると
「はーい、それじゃあ実技の授業をはじめるのですよ~」
とこれまた手を叩きながら眠たくなりそうなゆったりした声で、愛澤先生の声が実技棟に響いた。
先生の声が聞こえると決められたように生徒に全員が整列し始めた。
どこに入れば解らんのでとりあえず愛澤先生の横にいった。
「愛澤先生、俺はどうしたらいいんですか?」
いたって真面目で普通の生徒を装って聞いてみたら
「…………」
え?まさかの無視?
「先生?愛澤先生?」
「…………」
これは、あれか。間違いなく『瑠璃』って言わないと話を聞かないやつだな。
くそ、仕方ない甚だ不本意だがしかたない。
「瑠璃、俺の話を聞いてくれ」
と、少しふざけて耳元で囁いてみた
すると…
「はうっ!」
ボンッ!と効果音がなりそうなぐらい急激に瑠璃の顔が赤くなった。
楽しいので続けてみよう。
「瑠璃たのむよ、俺はお前がいないとダメなんだ。お前が俺の全てなんだ。お願いだ俺の話を聞いてくれ。瑠璃」
と、もう言ってる俺の歯が浮きそうなぐらい甘ったるい声で囁いた。
つか、言ってる俺だってかなり恥ずかしいよ?
「ひ、陽翔君!も、もう良いのですよ。聞きますから!も、もう止めてください!」
「そうか、わかった」
瑠璃からの許可が降りたのでアッサリと引き下がる。
「ふぅ、ちょっとおふざけが過ぎたのですよ…これは、ダメな奴なのですよ……でも、寝る前に少しだけ………」
後半は何を言っているかよく解らなかったが少しだけ悪寒がした…。
そんなこんなやっているうちに生徒達は整列を終えていた。
「それじゃあ、実技の授業を始めるのですよ。とりあえず、準備運動として飛脚をやってみてください」
飛脚とは、足の裏や足全体に魔力の付与をした飛躍的に脚力を上昇させる魔法のことだ。主な使い方は高速移動だが使い方によっちゃあ攻撃にも使える。
クラスの連中は各々に飛脚を披露し出した。
「先生!竜咲君はやらないんですか?」
そんななか、なにもしない俺をめざとく見つけた土屋が質問してきた。
「あ、陽翔君はですねー」
「ああ、俺は神聖学校からの落ちこぼれだからな飛脚が使えないんだ」
「えっ、ちょっ陽翔くー」
「だから俺はここで見学していることにしたんだ」
瑠璃がまた、余計なことを言わないうちに先にでっち上げの発言をしておいた。
「え?竜咲君って飛脚が……使えないの?」
まあ、驚くのも仕方ないだろう。
飛脚は初等部の5年目ぐらいに教えられ中等部の2年次には全員がマスターできるぐらいの初歩魔法だ。
実際は使えないこともないがいろいろと問題があって使えないよりかは使わないの方が正しい言い方かもしれない。
「いや、さすがに嘘だよね…?いくら落ちこぼれでも飛脚ぐらい…」
「使えん」
さすがに冗談だと思ったのだろう。面倒くさいので即答して黙らせといた。
さすがに、ここまで酷いとは思ってなかったのだろう。中には、信じてないやつもまだいた。
「仕方ない、証明してやるよ」
といい、足に魔力を集中した。
準備が整い飛脚を発動した。
「「「「……!?」」」」
結果はもとの場所から30㎝も動いていなかった。
普通、高等部レベルになるとその場で立ち幅跳びをすれば8~10mは進むはずなのだが。
その時、その場に充満していたのは嘲笑だった。
「うそありえなくない?」
「さすがに飛脚が使えないのはウケるわ~」
「あいつ才能無さすぎだろ」
「魔法なんて止めちまえばいいのに」
「前の学校自主退学とか言ってたけど落ちこぼれすぎて捨てられただけじゃないの?」
等々、いろいろと陰口があったが気にしてられない。俺の今の抱負は『目立たずひっそりと』なのだから。
「ちょっと陽翔君、なに言ってるんですか!馬鹿なされちゃいますよ!?というかいまちゃんとー」
「しー。ここは俺にあわせてくれ」
おそらく気づいたのだろう、瑠璃が焦って耳打ちしてきたがここは俺に合わせてもらった。
「そ、そう言うことなので。陽翔君は見学なのです…」
少し噛み噛みだったがなんとか誤魔化せたようだ。
「はい、皆は気にせず準備運動を続けてください!」
瑠璃の大声に少し怯んだのか、他の生徒達は散っていった。
「おい竜咲!俺が教えてやろうか!はっはっはっ!」
なかには、馬鹿にして煽ってくるやつもいたが
「人に教えている暇があるなら、少しは集中したらどうだ?」
「てめぇ!飛脚もまともに使えないやつが偉そうに言うんじゃねえ!」
ウザかったので、少し小馬鹿にして言い返してやったら顔を真っ赤にしてさっていった。
「陽翔君、一応出来ないという扱いにしますのでこっちに来てください。あ、橘さーん。こっちに来てください!」
どうやら察してくれたようだ。
そして、端っこでチョコンとアッ○イのように体操座りをしている女子も呼んだ。
ん?橘?もしかして…。
「もしかして理事長の孫か何かか?」
「そうです、こちらが理事長のお孫さんの橘 火恋さんなのですよ」
そして、瑠璃の紹介した女子生徒は俺の前にたった。
美人だった、顔立ちは整っており少し勝ち気そうな顔もしていて。体の線はとても細く、抱き締めたら折れるんじゃないのかと思うぐらい華奢な体だった。
しかし、メリハリはついており出るところはちゃんと出ていて。体の細さがバストをさらに強調しており、よりいっそう大きく見えた。
はっ!?いかんいかん。下心があったわけではないがついつい見いってしまった。
「ちょっと、なにじろじろ見てるのよ」
見ていたのがバレてたようだ。誤魔化しても仕方ないのでここは正直に答えておこう
「すまない、あまりにも美人だったのでついつい見いってしまった」
「なっ!なに言ってるのよ!」
恥ずかしかったのか、バシッ!頭を本気で叩かれた。細い腕をしているわりにはなかなかの腕力だったな。
「少しいいか」
「えっ?」
俺の悪い癖が出てしまい、橘の腕を掴み触った。
(ふむ、叩かれて思ったがやっぱりなかなか鍛えているようだ。だが筋肉質と言うわけではなく使い方がうまいのか?それほど筋肉が盛っているわけではなさそうだ。筋肉を最小限に押さえ、しかしながらそれを薄く叩いて伸ばすように鍛えてある。女性らしいほっそりとした腕をしていながらその実、男にも負けないような力を持っている。……さながら日本刀のようだ………)
その美しさについつい夢中になってしまい。女子のを触りまくっているという、ことをすっかり忘れていた。
「へ、変態!なに人の腕をいつまでもスリスリ触ってるのよ!」
「ち、違う。そんなつもりじゃ…」
「うるさい!この腐れ外道!痴漢!変態!根性曲がり!ゲス!覗き野郎!下着泥棒!」
「そこまでやってねえよ!」
俺はなんだ?あれか?女の子を見ただけでハアハア言っちゃう変態さんですか?
「まあまあ2人とも仲良くやるのですよ!」
「「できるか!」」
ちっ、なんでハモるんだよ。
こうして俺は、橘火恋と最悪の出会いをした。
今後も説明はちょいちょい入ってきます。