悪魔の巣窟?
「編入早々災難だったねぇ~」
・・・・・・
不良君からの突然の殺人未遂を回避したハズなのにクラスの女子からの質問攻めは回避することができず。柄にも合わずオロオロとしていると「静かにしなさい」とこれまた見た目とは全く正反対の殺意むき出し&冷徹な声が教室中に響き渡った。
誰かと言うのはお察しの通り。
そう、見た目12才のロリっ子教師こと愛澤瑠璃先生である。さすがの俺でもその変貌ぶりに驚愕を隠せず一瞬固まってしまった。だが慣れているのかクラスの人間は1人として慌てたり恐怖したりはしなかった。
愛澤先生がいった通り生徒は静まり返り各々の席へと着席した。
「それでは、話を戻すのですよ~」
とさっきまでの雰囲気とは全く違ういつも通りのポワワンな感じで話し出した。
「こちらの陽翔君は訳あって神聖高校を中退、本来なら2度と魔法学校の敷居は跨げないハズだったのですが。大人の事情があり、ここ橘魔法学院に編入と言う形でやって来たのです。聞きたいことは山ほどあると思いますが。陽翔君にも話せないことがあるのでその辺は察して欲しいのですよぉ」
おそらく、編入に関することを質問してくることが予想できたのであろう。予め、質問すると言う選択を潰していた。
「それでは、色々あって話が途切れたので陽翔君、もう一度自己紹介をお願いなのです」
「どうも、本日よりこちらのクラスにー」
「あーあと、さっきとおんなじ感じでは話さないでくださいね?正直、スゴく詰まらないのですよ。もっと自己アピールしてくださいねぇ?」
ちっ、適当に終わらせようと思ってた矢先にこちらも選択を潰して来やがった…!
(はぁ、面倒くさいけど真面目にするか…)
「竜咲陽翔です。趣味は読書、好きな食べ物は和食全般、好きなタイプは自分を理解してくれるひと、神聖高校は訳あって自主退学していますが。人を殺したとかヤバイ理由じゃないので安心してください。正直適当な正確なので気さくに話しかけてください」
まあ、こんなところだろ。
さっきの質問にあったのをいくつかピックアップして自己紹介してみた。適当な自己紹介で感じ取ったのか。俺に対して抱いていた警戒心が解けたようで、「よろしく~」だの「案外普通…」などと隣と耳打ちするやつがいたり「ちょっとカッコ良くない?」「うーん?どうだろう?」「うほっ、いい男…」「いい体してるわねぇ……」などなど…。
まて!最後の2つはなんだてか、言ったの男だよな!?
ヤバイ、俺の処女が…!?
「陽翔君席は……じゃあ、土屋さんの後ろの席で」
生徒の危険発言を完全にスルーして俺の席を勝手に決めだした。まあ、良いけどよ。
と、ここまで来て冒頭の台詞に戻るわけだ。
「お前誰だ?」
「あ、ごめんごめん。私は土屋 恵よろしくね」
「そうか、ならメグたんとでも呼んでやるよ」
「め、メグたん…!?」
おっと、ちよっとオチャメなジョークのつもりが随分な引かれてしまった。
「冗談だ、よろしくな土屋」
「恵でいいよ♪」
ふむ、初対面の俺にも分け隔てなく接してさらには相手の緊張を解すように優しく話しかけてくると…。
こんなやつは、大抵の2通りの人間がいる。
正真正銘の馬鹿で人懐っこいやつか
腹のうちになんか企んでるやつ
………………っと、いかんいかんいつもの癖で変な先入観を持ってしまった。
「どうしたの?」
考え込んだ俺のことを不審に思ったのだろう。心配したように言葉を投げ掛けてきた。
「いや、何でもない。少し考え込んでただけだ」
「ああ、中間テストのこと?本当に災難だよねぇ…。編入早々殺されそうになるわ1週間後がテストたなんやと。見てるこっちの気が重くなりそうだよ」
ん?今こいつはなんといった?
中間テスト?
中間テストといえばあれだ、学年最初に行われる学力試験で。1年生と3年生では最も重要視されるテストだ。
まて、俺はそんなこと聞いとらんぞ?
こいつの勘違いじゃないのか?テストがあるなら転校生の俺にも予め何らかの連絡をするものだろ。
とりあえず、聞いてみよう。
「中間テスト?なんのことだ?俺は何にも聞いてないぞ?」
「え?聞いてないの?ピッタリ1週間、来週の月曜日から1学期最初のテストがあるんだよ?」
どうやら間違いではないようだ。
まて、まてまてまてまて。
テスト?そんなもの1週間でどうにかなるようなものじゃない…。
第1、前の学校が嫌で正直前の学校でもまともに勉強なんかしてない。しかも、実家に帰った1週間も寝るか本を読むか運動するか以外、勉強なんて全くしていない。
「ちょっと待てぇぇぇぇ!!!!」
「「「「ひっ!」」」」
焦りのあまり声をあげてしまった。
「もー、何ですか。うるさいですよぉ陽翔君」
「おいこら、ロリっ子!テストとは、どう言うことだ!全く聞いてないぞ!」
「はぁ、ヤッパリ聞いてなかったのですよぉ…。さっき、廊下を歩いてるときに話したですよ?来週テストがあるからしっかり勉強しないと追試だーって」
「ま、まさか…。あれか、俺が解説と公園のベンチで野宿したことによる睡眠不足の下りのあれか……!?」
「解説?何のことか分かりませんが、とになく言ったじゃないですか。聞いてないと知りませんよ?って」
やっぱりか!
「クソゥ!睡眠の重要性!睡眠の重要性!睡眠の重要性!睡眠の重要性!睡眠の重要性ぇぇぇぇぇぇ!」
ショックのあまり机に頭突きをしていた。
勿論周りの生徒は若干引いていた…。
「まあまあ、落ち着いて。ちゃんと先生がミッチリ教えてあげますから」
見かねたのか、頭突きをする俺をドウドウと愛澤先生が宥めてくれた。
「本当に大丈夫なのか?俺、自慢じゃないが前の学校では全く勉強しなかったぞ?」
「安心してください!瑠璃先生の授業はとっても解りやすいのです!」
ポンッ!と無い胸を張って叩いた。
全くもって説得力がない。というか不安しかない。だかそれ以外の方法が俺にはない。藁にもすがる思いで、苦渋の決断をした。
「お願いします……(血涙)」
「な、なんで血の涙流しながら土下座するんですか!いいから頭をあげて席についてください!授業が始められないのですよ」
こんな感じで、俺の学校生活最初の授業が始まった…。
・・・・・・
本人が自負していたのもあるが、確かに愛澤先生の授業は解りやすかった。1つ1つの解説がマメで。解らない生徒が1人でもいれば1から解説をしなおして。解説が1通り済むと、教科書にかいてないのでおそらくオリジナルであろう問題を解かせる。そして、愛澤先生自ら丸付けをしていく。
若干非効率的で、大変な作業のような気はするが。実際解りやすいので、一概に否定できない。
そんなこんなで、授業は進んでいき。午前中の科目は終了した。
「それじゃあ、午前中の座学はこれで終わりなのです。お昼からは実技になるで全員着替えて第4実技訓練棟に集合なのです。ちなみに、遅刻した生徒はペナルティがあるのでくれぐれも遅れないそうになのですよ」
座学が終わり緊張が解けたのか、生徒はダルそうに「はーい」と間延びした返事をし各々、昼食をとり始めた。
「それと、陽翔君は先生と一緒に来てください」
なにやら、お呼ばれしたようだ
何の用件かと不信に思ったが。疑い出したらキリがないので。
そこで俺は考えるのをやめた…
そんな、バカなことを思いながら愛澤先生のいるドアの前へといった。
「何のようだ?俺は今から昼食を食べる生徒をみないために闇の世界へと行くつもりだったのだが」
まあ要するにだ、飯がないから寝てるフリをして昼休みを過ごそうとしていたわけだ。
「そんなことだと思ったのですよ…」
若干呆れられた
「仕方ないだろう。14日に単身日本に放り出されて。そんな中、所持金1005円で3日過ごしたんだから。金なんてとうの昔にすっからかんだよ」
「安心してください、先生がちゃんと陽翔君の分もお弁当、作ってきたのですよ」
ここで、ふと疑問に思ったことがある。
なぜ、この人はこうも俺に干渉する。普通なら、お札1枚渡して。この学校にも学食や購買部ぐらいあるだろうに。そこで勝手に買わせれば良いものをわざわざ弁当まで作ってきて俺には何か裏があるようにしかおもえない。
「そのかわり…そのぉ、先生のことを……る、瑠璃って呼んでくれませんか?」
さらには、また訳の解らないことを頬を赤らめながら言い出す始末だった。俺と、この人に何らかの接点があるようには思えない。第1あったとしても覚えていない。
そんなことを、思っているときに限って本音と言うものは出てしますのである。
「なぜ、そこまで俺に干渉しようとするんだ?生徒とはいってもあくまで赤の他人だ。あんたがそこまでする義理はないだろう?弁当1つに言い過ぎかもしれないが、俺にはあんたが打算で俺に近づいているようにしか思えない、第1俺とあんたには教師と生徒と言う以外何の接点も無いだろう?そこまで気にかける必要があるのか?」
睡眠不足と空腹により若干のイラつきがあつり。つい、突き放すように言ってしまった。流石に言い過ぎたと思い謝ろうとした矢先に。
「やっぱり、覚えてないのですね」
まるで蚊の泣くような、至近距離にいる俺でさえ聞き取れないような声で何かをいった。
「え?何か言ったか?」
「いえ、なんでもないのですよ」
と、少し不自然な感じはあったがいつも通りの笑顔を浮かべて俺に返した
「そうですよね、初対面の人に色々されても迷惑ですよね。ごめんなさい、少し突っ走りすぎました」
「い、いや。謝ることはないだろう。あんたは、悪いことはしていない。というか、俺が少し言い過ぎた。すまなかった、許してくれ」
さすがに、言い過ぎたと反省して頭を下げた。
だが、おそらくこんな下手に出たのがダメだったのだろう。俺は、ここで俺に非があったとしても謝るべきじゃなかった。
俺は、悪魔に向かって「なんでもしますから許してください」と言っているようだということを理解していなかった。
「本当に悪いと思ってるのですか?」
「ああ、本当にすまなかった。俺にできる範囲ならなんてもしよう」
次の瞬間、まるで「今なんでもするっていったな?」といった具合に俺の目の前にいる小さな悪魔の口元が歪んだ。
「そうそう、いい忘れてましたけど。今日から陽翔君は私と同じ部屋で住むことになったのですよぉ~」
「………………………は?」
悪魔の死刑執行が始まった…!
「いやぁ、本当は学生寮に住む予定だったのですが、部屋の空きがなく、近くのアパート、マンション共に全滅。よって、教師専用の職員寮で私とあ・い・べ・や、になったのですよ♡」
「いや、まてまて!さすがに、アパート、マンション全滅は可笑しいだろ。登校できる距離内に1つぐらい部屋はあるだろ!第1、生徒と教師+男と女が相部屋はまずいって!」
「あれぇ?さっき、なんでもするって言いましたよね?」
「あの、それは…言葉のあやと言うやつで……」
「まさか、陽翔君ともあろうひとが自分の発言に嘘を付くのですか?」
くっ!こいつ俺の性格と過去を知っていてこの手段に出やがった!
「ぐ、ぐぅ…」
「あら?ぐぅの音は出るんですねぇ?」
俺をいじめて楽しいのか終始ニヤニヤしている悪魔ちゃんでした。
「何も言い返せないようなので決定事項とさせていただきますね!」
甚だ不本意だが、仕方がない自分で掘った墓穴だし、住むところがないとなっては生活ができない。ここは悔しいが敗けを認めて妥協するしかないようだ。
「わかったよ…。あんたなかなか腹黒いな…」
「はて?何のことです?」
くそ、とぼけやがって。絶対計算してこの結果に導きやがった。見た目とは裏腹になかなかの策士だな、こいつ。
「あ、それと後ろには気を付けてくださいね?それじゃあ、またあとで。お弁当をとってくるのですよ!」
といって、おそらく職員室だろう場所になかなかのガチ走りでむかった。
「全く、何なんだ?後っていったい………?」
ここで俺は、後ろを振り向かず全速力で逃げるべきだった。
そんなこととは露知らず、振り返った先にいたのは………………………………………。
凶器を構えた本物の悪魔達だった。
ガシッ!と両肩をガッチリと逃げれないよう捕まれ。気づくと足枷をはめられ首には首輪も付けられていた。
「やあやあ竜咲君、随分と楽しそうだね?」
「ふふふ、可笑しいね僕には君と瑠璃ちゃんと同棲するっていう空耳が聞こえてしまったよ」
「全くも可笑しいね。ははは」
「ははは、ははは」
「ははは、ははは、ははは」
「ははは、ははは」
「ははは………」
「………………………………」
長い沈黙が俺たちの間に流れた。
「殺せ!」
「「「「Yes!Your Highness!」」」」
「なんでさぁぁぁぁぁぁぁ!」
リーダーであろうやつの号令で、悪魔達による死刑は執行された。
ただ一言言いたい。
「俺、なんも悪くなくね!?」
そんな俺の悲痛の叫びは誰にも届かなかった。
なにやら、主人公とロリっ子教師の間には何かある様子?
さて、この2人のお話はどうなるのか?
そして、次回他のヒロイン?も登場!