1年D組
理事長室での会話は無事終了し、今俺は自称担任こと愛澤瑠璃先生に今日から編入することになった1年D組のクラスまで案内されていた。
「この学校はですね、他の魔法協会経営の学校とは少し違っていて。クラスはA~Dに分けられてはいますが陽翔君が前いた神聖高校ほど、クラスの戦力差は極端ではないのです。たしかに、A組はうちのD組よりかは多少成績優等生が多いですがD組にも優秀な生徒はいます…。まあ、ちょっと問題のある子もいますけど…」
さてここで、皆が疑問に思っているとこを少し解説しておこう。
まず、魔法とは使う本人の持つ魔力を魔方陣や魔法刻印などに通し魔法を発動させるというものだ。まあ、簡単に言えば電化製品に電気を通してテレビをつけたりエアコンを使うっていった具合だ。
次に、魔法学校についてだが。
魔法学校とはその国の魔法協会が経営している、文字通り魔法を教える学校のことで。日本の47都道府県に1校づつ設置されており、場所によるが大抵は初等部(小学校)で魔法の基礎を6年間教え、中等部(中学校)の3年間である程度の初級魔法を教える。才能のある生徒はこの3年間で初級魔法を修得することもある。そして、高等部(高等学校)では魔法の応用と、魔法を使った基本戦闘を身につける。ちなみに、戦闘スタイルだが、さっき叡智のツボで俺が検査したと通りちゃんとその人にあった戦い方を知ることができる。
そして、高等部の3年間でも才能のある生徒はその実力を認められ大魔法を修得したり魔術の基礎知識を身につけることができる。
ちなみに、いま魔法と魔術の2つが出てきたがこの2つには決定的な違いがある。魔法とはあくまで完成された魔方陣や魔法刻印に正しい手順で魔力を注ぎ発動することであって、魔術は全てがオリジナルなのだ。つはり、魔術は一概に同じものは無い、あるとするなら魔術見習いが練習に使う基礎中の基礎魔術のみだ。その他は、魔術師が各々に開発したオリジナルの魔術で、それが魔術と認められるには魔法協会の中にある特別魔術研究科(通称、特魔科)の適性試験で、一定水準以上の、威力、発生速度、発動範囲、効果内容をクリアしなければならない。魔法とは違い才能のあるものしか魔術を使うことはできない。
ここからは俺の話になるが。
まず、俺が前いた神聖高校とは日本でもトップクラスの魔術学校である。そこでは、優等生と劣等生に線引きされ優等生は劣等生の様にはならぬようと、劣等生は優等生の様にはなるようと、指導される。が、あくまでそれは表向きの指導方針であってその実態はとてもおぞましい物である。
まず、授業設備に関してはベンツと中古の軽トラ並みの差がある。
担当教師も、優等生クラスはほとんどがBライセンス以上の教師が担当しており、基本的に1クラスに10人以上つく。
それに比べ、劣等生クラスはCライセンス以下でも採用される程度の教師がつく。しかも人数も多くて1人、下手したら1人の教師が2クラスを担当することもある。真面目なやつは、それでものし上がろうとするが大抵の人間は諦めるか、俺のように自主退学をする。
あと、1度魔法学校を辞めると2度目はない。俺の場合は異例中の異例なのだ。
ついでに、さっき話に出たライセンスについても話をしておこう。
ライセンスとは、簡単に言えば魔法師のランクの様なものだ。ランクが高いほどいい職場に付けて給料も高く、周りから尊敬の対象になる場合もある。
ランクが低いと、職に付くことは難しく給料も下っ端サラリーマン並みの給料しか貰えない。あとは、周りからは蔑視の対象となり見下されたりする。
ちなみに、ライセンスのランク付けは。
普通、A~Dと魔法学校のランク付けと同じようになっていて。
基準は
Aが1人で軍隊1つを相手にできるほどの力を持っている。
Bは初級と中級の魔法を全て会得し上級魔法も大半が使える。ちなみに、このランクからがエリートと言われる存在である。
Cは教師の一般水準、大抵の魔法師はこのレベルになる。だが、ここから上にいくには才能の壁を越えなければならない。
Dは魔法学校の高等部を卒業したものに初めて付けられるランクで、ここからが魔法師のスタートラインとも言える。
ちなみに、俺のランクについては秘密だ
「………君………ひ…君……陽翔君!」
「っは!?」
「聞いていますか!つきましたよ!というか、さっきでの先生の話聞いてましたか?」
「も、もちろんさぁ~」
「本当ですか?嘘だったら知りませんよ?困るのは陽翔君なんですから」
本当のことを言うとサッパリ聞いていなかった。説明に集中していたのと公園のベンチで野宿したお陰で若干睡眠不足なのが原因である。
そうこうしているうちに、1年D組の教室についた。
「さーて、つきましたよ。ここが私の自慢の生徒たちがいるクラス、アーンド今日から陽翔君の学舎となるクラスです!」
と、馬鹿丁寧に説明をくれた。
パッと見は普通の高校の教室である。中は少しざわついていた。
「今は授業中じゃないのか?妙にざわついているな」
「あー、きっとそれは転校生が来るっていったからなのですよ」
「は?」
「いやだから、実は授業を中断して君を迎えに行く際『今から、転校生を迎えにいってくるのですよっ、スゴい人が来るので楽しみにしているのですよっ!』って言っちゃって…」
パッと見12才の自称担任は「てへペロっ」っといった具合に舌を出た。
「はぁ~。無駄にハードル上げやがって」
「まあその辺は置いといて、さっさと行くのですよ!」
(こいつ1発ドついたろか)
まあ、教師に暴行を加えて問題になるのもいやだから自重した。
ガラガラ、とは音をたてず。
スーっとドアは開いた。随分新しい教室なのだろう。
自称担任、めんどくさいからもう名前呼びでいいか。
愛澤先生が入ってきたことによりざわつきが一瞬でやんだ。
中には隣のやつとコソコソ耳打ちをして話してるやつもいるが。クラス中の視線が俺に向かっている。
いや、全部じゃないか。中には窓の外を眺めるやつや空席もあった。
「はーい、静かなするのですよ」
と、パンパンと手を叩きながら眠くなりそうな声で愛澤先生はいった。
「ではでは、こちらが本日よりうちのクラスに編入することになった竜咲陽翔君なのですよ。陽翔君、自己紹介をお願いなのです」
「はいはい。どうも、竜咲陽翔です。今日からお世話になります。どうぞよろしくお願いします」
と、まるで教科書にかいてあるような自己紹介をした。普通すぎたのだろうクラスに視線に若干の(期待はずれ)と言うような視線が混じった。
(俺から言わせればお前らは転校生に何を期待してるんだよ…)
「はーい、それじゃあお楽しみの質問タイムなのですよ!」
と、そんな空気はお構い無しと言うようなのんきな気分で話を進めていく愛澤先生。この人もある意味では天才だな。
バカ的な意味で。
そんなことを思っていた矢先に
「趣味は?」
「好きな食べ物は?」
「編入するまではにしてたの?」
「家族構成!」
「てか、瑠璃ちゃんが『陽翔君っ』って言ってたけどどんな関係?」
「あっ、それはあたしも気になった!」
「てめえ!俺らの瑠璃ちゃんに手ぇ出したのか!ぶっ殺すぞ!」
「ちょっと、男子うるさい!」
「好きな異性のタイプは?」
「魔法属性は?」
「スリーサイズは!」
「好きな男の子のタイプ……」
とまあ、収拾がつかなくなった。
てか、最後の2つはなんだ!答えたくないが質問の意図がスゲェ気になる。
「はいはい、みんな~そんなに慌てなくても。順番に質問してください。はいっ、手もあげてから質問してね」
手をあげてからって、初等部かよ…。
と、あれよこれよとやっている時俺が入って扉とは別の、教室の奥の方、つまり後ろのドアが空いた。
突然の出来事に教室は静まり返り、クラス全員、愛澤先生や俺の視線もそっちを向いた。
そこから入ってきたのは見た目からして絵にかいたような不良だった。
「てめぇら!何見てんだ!ぶっ殺すぞ!」
と、廊下にまで響くような声がクラス中に木霊した。
突然の出来事に誰もが反応できず、中には萎縮するやつもいるなかその不良君は予想だにしない行動にうつった。
懐から、針を3本親指以外の指で挟み投擲した。
針には魔力が纏っており殺傷性があった。俗にいう殺す気まんまんと言うやつだ。そして投げた先は
そう、先程までクラス中の人気を独り占めし質問攻めにあっていた俺に。
(なぜ俺に投げるしっ!?)
意表を突かれた攻撃につい状況反射で自分と愛澤先生の前方に、直径5m程度の結界を張った。
カランカラン。
結界によって阻まれた針は甲高い音をたてて地面に落下した。
誰しもが不良君の放った針なよって串刺しななって真っ赤な血が教室に散らばるのを予想した。
だが、その予想は呆気ないくらいアッサリと覆さた。
「また、随分な挨拶だなぁおい」
さっきまで殺されかけた奴の言う台詞とは思えないようなトーンで名前しか知らない転校生はいい放った。
クラスに漂う空気は歓喜ではなかった。
畏怖と恐怖。
針には魔法が帯びており普通の投擲とは比べ物になら無いような速度が出ていて。明らかに魔法の発動が間に合うような状況ではなかった。
そんな中、転校生は涼しい顔をしたまま自分だけでなく、隣にいる先生にも被害がでないよう2人が守られるよう結界を展開し、飛来物を完全に防いだ。
(やっちまったかなぁ…。流石に防ぐのはダメだったか、ちっ、慌てた感じで避ければ良かったか)
と、考えたいると。
「「「「キャァァァァァ!」」」」
黄色い悲鳴?が鳴り響いた
「!?何事だ!?」
突然のことに、俺としたことがついつい狼狽してしまった。
そしてそんな俺を待っていたのは、さっきの質問攻めの続きのようなものだった。
「今のどうしたの!?」
「魔法の発動速度が半端じゃなかったよ!」
「ねえねえ、どうやったの!」
「教えて教えて!」
「なんかコツとかあるの?」
「ねぇ、教えてよ~。私たち」
「「「「クラスメイトでしょ!」」」」
なぜ、そこで綺麗にハモるっ!
ツッコミたい事は沢山あったが、質問してくる奴ら(全員女子)の勢いがスゴすぎて気圧されてしまい。
「えっと…」
「あの…」
「ちょっ…まっ…!」
と口ごもってしまった。
そんな困っている俺をよそに男子からは恨みの視線を送られた。
俺を攻撃した不良君にいたっては皆完全にスルーしていて。先生も収拾がつかなくなり「あうあう…」と言っていた。
心のなかで目立たず穏やかな学園生活を望んでいた俺の願いは開始5分もしないうちに雪崩のごとく崩れ去ったのだった。
そんなこんなで俺の学園生活が始まった…。
(誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇーー!!)
ちょいちょい、○で隠した部分がありますが気にせずお読みください