組織のお仕事3
「まず準備してほしい物を言います。スーパーから段ボールの大を10個程もらってきて下さい。あとは僕がホームセンターでキャスターを4つと固そうな金属の板を2枚買ってきます。」
「それでどうするん?」
「後のお楽しみです。剛さんには頑張って頂こうとおもっています。」
顔を歪める剛に対して、高畑はにっと笑った。
数日後ーーー
日が暮れた頃、今日も秘密組織の集会所には、剛と椛、そして高畑が集まっていた。集会所には今まで置いていなかった、段ボールでできたロボットのようなものがどんと置いてある。ロボットの背中には大きく『悪の秘密組織BSO、参上!』と書いてある。
「出来ました。」
高畑はロボットの横に立ち、自慢気に腰に手を当てている。
「段ボールのロボットか。まさかお前、俺にこれを着て暴れろっていうのか?」
机に肘を立て、ほおずえをついている剛の瞼がぴくっと動く。
「暴れなくても、これを着て街を歩くだけで十分注目を浴びます。」
確かに色も赤と黒に塗ってあり、遠くからでも目立ちそうだ。
「背中のBSOってどういう意味かしら?」
椛はロボットの背中を見て首を傾げる。
「それはBlack Secret Organizationの略です。黒い秘密組織と言う意味です。この組織の名前も知らなかったので勝手に名前つけちゃいました。」
頭に手を当てて、にっと笑う高畑に椛は呆れた顔をした。
「知らないなら聞きなさいよ。私には『光蝕《こうしょく》』って組織の名前があるの。BSOは『光蝕』に変えておきなさい。」
高畑は少し悲しそうな表情を見せながら頷いた。
「ところでよぉ、こんなもん着て警察に職務質問されたらどうすんじゃ?」
高畑は待ってましたとばかりにロボットの足下をいじりだし、おもむろに何かを持ち上げた。
「その時のためにこれを作りました。フリーラインスケートと言います。フリーラインスケートについてはこの資料を見てください。」
高畑は自分のデスクの引き出しからフリーラインスケートについての資料をとりだし、剛と椛に渡した。そこにはフリーラインスケートについての説明が分かりやすいようにまとめられていた。
フリーラインスケートとはインラインスケートとスケートボードの中間のような道具である。金属の板の下にキャスターが2つついた形をしている。インラインスケートのように右足用と左足用があり、金属の板の上に足を乗せて滑る。慣れれば時速40kmも出すことができるらしい。
「叔父に溶接を教わって作りました。フリーラインスケートに乗りこなすことができれば、警察から逃げることは容易になります。この地図に逃げ道のルートを赤い線で記しています。剛さん、頑張ってください。」
高畑はテストの引き出してから地図を取りだし、剛のデスクの上にぽんと置いた。剛は何かを考えているようで、目を閉じて、ぐっと口をつぐんでいる。
沈黙が続く。しばらくしてふぅと息を吐き出した。
「しゃーねーな、やっちゃるわ。」