T大学の高畑です
その日から高畑少年は1日8時間の勉強や2時間のランニングを毎日欠かさず行った。ご飯も1日5合は食べた。家のお手伝いもした。友達も作らず、必死に正義の味方になるため頑張った。
そして数年の時が経ち、高畑勇志(21)は日本一の偏差値を誇るT大学の3回生になっていた。
勉強や研究やサークルに精を出す者もいれば、就職面接の練習に気合いを入れている者もいる。高畑青年もサークル活動に精を出しているうちのひとりだ。暑い夏の日差しが照りつける中、高畑青年はヒーローの精神を学ぼうと立ち上げたサークル『きらきら』の活動で町のごみ拾いをしていた。
きらきらのメンバーは高畑を入れて5人。今日の活動は高畑と同回生の山根の二人で行われていた。山根は銀縁眼鏡をかけ、よれたTシャツを着て、安そうなジーパンをはき、大きなリュックを背負っている。山根と高畑は服装も体型もそっくりで、その姿は遠くから見ると瓜二つである。
そんな二人にも決定的な違いがふたつある。ひとつめに成績。高畑の成績は下から3番目だが、山根は学年一成績がよい。そしてふたつめは眼鏡をとったときの顔だ。高畑は眼鏡をはずしてもたいして印象に残らない顔だが、山根が眼鏡をはずした姿は誰もが振り返るような美しい顔なのである。そのため山根は女子生徒をはじめ、様々な人から一目をおかれる存在なのだ。
「山根くん、この前の新聞に載ってたね。」
「あぁ、俺の研究が世界に評価されたんだ。嬉しいよ。」
山根は介護のサポートをするロボットの研究をしている。今回は認知症患者の深夜徘徊を防ぐシステムを完成させたため、新聞の取材を受けていたのだ。
高畑と山根は公園の茂みに捨てられたごみを拾いながら、下らない会話を楽しんだ。