異色!
剛が段ボールロボットを着て商店街を歩いた翌日、光蝕の集会所では高畑と剛がそれぞれの席について話をしていた。
「昨日は危なかった。まさかレッドが出てくるとはおもわんかったけぇ。」
助かった安心感からなのか、はたまた鷹に気をつかってなのか、剛はにっと笑って見せた。
「…すみません。」
高畑は複雑な気持ちだった。努力して、近づこうとしていた憧れのレッドの敵になっている。本当はレッドと共に正義の味方として活躍するはずだった。しかし憎めないがんばり屋の剛や綺麗で気が利く椛の力にもなりたいと思う気持ちもあった。剛を危ない目に合わせたことに申し訳なさを感じていた。
なにも上手くいかなくて、自分の気持ちがわからなくて、もやもやして、はがゆくて下唇を噛みしめた。
「まぁ、コーヒーでも飲んで一息つきましょう。」
夏の暑い日、椛はキンと冷えたアイスコーヒーをそれぞれのデスクに置いた。氷がカランと爽やかな音をたてる。
「鷹さん、お砂糖とミルクはどうなさいます?」
「結構です。」
受験の際、眠気覚めしによくブラックコーヒーを飲んでいた。そのためブラックでコーヒーを飲むことになれていた。椛は剛の席にだけミルクをすっと置いた。
3人がコーヒーを飲みながら話をしていると、真っ暗だったモニターが突然ブォンと音をたて、薄暗く光を放ちはじめた。そしてモニターの中に男が現れた。
「お仕事お疲れ様。少ない予算で光蝕の名を広めることに成功したようだな。インターネットを通じて光蝕の名を知った人の数は推定10万人だ。目標の20倍だ。よくやった。報酬は一人50万円だ。口座に振り込んでおく。」
鷹は目を丸くして驚いていた。あれだけの仕事で50万円も貰えるなんて思ってもいなかったのだろう。剛や椛は慣れているようで平然と座っていた。
一呼吸おいてモニターの中の男は再び口を開いた。
「もうひとつ報告だが、Piがアイドルのコンサート会場で、スゴスギンジヤーに捕まったようだ。今Piは使われていない楽屋に閉じ込められているようだ。」
Piとは剛と共に高畑をこの集会場に運んできた人だ。アイドルのコンサートに行って捕まるとはなんとも間抜けである。
「ったく人騒がせな奴じゃ。」
剛は呆れた様子で言った。
「コンサート会場まで行くしかないないわね。Piも大事な仲間だからね。」
鷹はPiと会った事はないし、正直なところPiを助けたいとも思わない。ただ憧れのスゴスギレッドに会いたかった。コンサート会場に行けばレッドに会えるかもしれないと思い、剛と椛についてPiを助けに行くことにした。




