組織のお仕事5
日曜日の商店街では買い物目的の若い子達が賑わっている。そんな中、段ボールで出来たダサいロボットを着て街に繰り出すのには抵抗がある。剛は段ボールロボットが折り畳んで入っている大きなカバンをちらっと見て、大きなため息をついた。
「しゃあないのぉ、金のためにはやるしかねぇか。」
ボソッと呟き、建物の影で段ボールロボットを装着した。
「じゃあカバンは預かっておくわ。地図に書いてあった集合場所で車止めて待ってるから、頑張ってきてね。」
椛はにっと笑って、ひらひらと手をふった。
意を決して商店街に繰り出す。どんなに歩きやすく加工がしてあっても段ボールは段ボール。動くのに普段の何倍もの体力がいる。ぎこちなく言われたルートを歩きはじめる。目の辺りには黒っぽいフィルムが貼ってあり、前が見えるようにはなっているが、視界は良くない。あたりからは、カメラのシャッター音や悲鳴や笑い声が聞こえる。
人通りの多い商店街だが、剛の半径5mのまわりには人がいない。おしゃれな若者達はアパレルショップが並ぶ商店街にいる異様なロボットに戸惑っている。ちらほらと背中の文字を声に出して読む者もいた。これで良い。なるべく長い時間、商店街を歩けばそれだけ知名度が上がる。報酬も上がる。汗で蒸れる段ボールの中。お金の為だと歩みを進める。
突然、とんとんと肩を叩かれる。
「すみません、少しお時間よろしいですか?」
振り向くとそこにはスゴスギレッドがいた。スゴスギレッドは全国的にも有名なヒーローだ。なによりレッドの凄いところはスゴスギスーツを開発したところだ。そのスーツを着るだけで体力や力など、すべての運動能力が2倍になるのだ。ロボットスーツを着た剛がスゴスギスーツをきたレッドに勝てるはずがない。
「お前に時間などやれん。」
剛はそう言うと、フリーラインスケートを装着し、一目散に逃げ出した。だが相手はスゴスギスーツを着たレッド、あっというまに追い付かれる。逃げられない。
「逃げるなら痛いに合わせますよ。」
「わかった。もう逃げん。人目のつかないところに行きたい。」
観念した剛はそう提案した。
「わかりました。では、あのビルの裏に行きましょう。」
「あぁ、山本ビルの裏じゃの。」
二人は路地裏に入り、山本ビルの裏にまわる。
「蒸れるけぇ、これ脱いでええか?」
段ボールの服を触りながら剛が言った。
「どうぞ。」
複雑な段ボールを脱ぐのに時間がかかかると思ったのだろう。レッドはその場に座りこんだ。
キュルルルル
突然黒いセダンが現れて、剛の横に止まった。剛はすっとその車に乗り込む。レッドは呆然としていた。完全に油断していたようだ。
「まさかレッドに捕まるとはね。携帯電話を通話中にしておいて良かったわね。」
何があるかわからないから念には念を入れておいて下さいと鷹からの指示があった。鷹からの指示通り椛に電話をかけたまま、商店街に繰り出した。そのお陰で山本ビルの裏でレッドと会っていることが椛に伝わり、間一髪、レッドから逃れることができたのだ。
日曜日の商店街で起きたちょっとした事件。若者達は面白がって写真や起こった出来事をツイッターやFacebookなどのSNSにアップする。そしてネットではレッドが悪の秘密組織『光蝕』を倒したと大きな話題になった。
一応、光蝕の名前は全国に広まったのであった。




