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負けイベント?

 図書室は、広さと蔵書量から、学校のものとは思えなかった。

 そこら中に本棚が並んでいる、実に壮観なのだが……。


「この図書館は広いのって、バトルするためなんじゃ……」


 百菜が疑問のように見えて、そうとしか考えられない事実を呟く。

 なので浩斗はそれ以上答えず、周りを伺う。

 そんな浩斗に百菜は、


「さっきから周りを見ているけれど、ここにはそんな危険な相手がいるの?」

「ああ、図書室の主、“閑静なる賢者”もとい、サイレントワイズマンとあだ名される強敵が潜んでいる」

「……そうなの。でもこの調子なら、遭遇せずに脱出は出来そうね」

「近いのか? ……待て」


 そこで浩斗は百菜の手を掴む。

 同時に百菜もその人物らしい影が床に映っているのに気づいた。

 その人物はこちらに向かって歩いてきているようだ。

 最悪の敵か、否か。

 現れた人影に百菜は浩斗に手を引かれ、そのまま踵を返して逃げようとするが、


「おや、読書をしに来たのかね?」


 目の前に現れた生徒に、浩斗が舌打ちをした。


「あっちがどうでも良い相手だった」

「どうでも良い相手とは失礼だね、彼もまた本を愛する仲間だというのに。まあ、いきなり逃げてしまう君には、本を愛せない君には恐ろしい敵のようだがね」

「……百菜、後ろのやつには先手必勝だ。別の出口から逃走する」


 わかったと言って、百菜は武器を取り出し瞬殺する。

 先程から流れる戦闘の曲がうっとおしいと百菜は思いながら、現れた生徒を一人瞬殺する。

 恍惚とした表情で倒れる彼だが、それには目をくれず浩斗が逃げ出す。

 それに百菜はついて走って行くが、そこで後ろから声がした。


「逃すと思うのかね? 今日こそ君達には本の素晴らしさを教えてあげよう」


 そう彼が呟くとともに本棚が中に浮かび、繋がって行き止まりをつくろうとするが、その僅かな間を縫ってそれを百菜と浩斗はすり抜けていく。

 

「なるほどすばしっこいな。だが、このまま逃げられると思っているのかね」


 笑い声が響いて、同時に何かが射出される爆音が聞こえる。

 見ると本棚から本が、背後に火を吐いてロケットか何かのように百菜達の方に飛んでくる。

 それを見て、背後に百菜は武器を構えて一掃する。 

 けれどまた、本が後から後から百菜たちの方を目指してくる。


「きりがないわ! 弾だっていつまで持つか……」

 

 舌打ちしたい気持ちになる百菜だが、そこで浩斗が何かを投げたようだった。

 それはビー玉のような何かで、瞬時に強い光を放ち爆発する。

 すさまじい轟音と共に、窓ガラスが割れるような音などが聞こえたが、そこで百菜は手を引かれるようにドアの外に出た。

 戦闘の音楽とともに、先ほどの喧騒が嘘のように静かになる。

 後ろの様子を見るために振り返ると、そこには非常口と書かれている。

 

「場面が変わったから、音が聞こえないんだ。それにもう一度開くと全部はじめから何もなかったかのように元通り、リセットされる」

「……破壊されていないのはいいけれど、その度に初めから戦わないといけないなんて、キツイわね」

「でも、レベルを上げればなんとかなるだろう」

「だといいけれど、するしか無いか。少し戦略を立てた方がいいわね。道具も集めたほうが時間短縮できるかしら。……そういえば、浩斗、あの武器は?」

「見たまま。爆弾だよ。幾つか種類があるけれど、武器の一つ」

「私、貴方の武器がどんなものかしら無いわ」

「うーん、さっきみたいな奴が主。でもサポートしか出来ないぞ? 主人公は百菜なんだし」

「一対一で戦わないといけないわけじゃないんでしょう?」

「そうだとは思うが、勝利条件に俺の手伝いが含まれるかわからない。最悪、それ以上進めなくなるようなことがあっても困る。……殺気みたいな緊急事態は別だが」


 それに百菜は、なるほどと思いはする。

 確かにクリアしなければならないのは百菜だ。

 ここを脱出するには必要だから、仕方がない。

 しなくていい危険は犯したくない。けれど、


「もしも、私が危機に陥ったらその時はよろしく」

「分かっているよ、でないと俺も戻れなくなるからな。まっ、その前にアイテムを使うけれどな」


 そう、浩斗が笑ったのだった。



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