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彼は一体何者だ?

 屋上に彼女……彼の強い力で引っ張られて、百菜は連れて来られた。

 バタンと扉を閉めて、彼は百菜を見て、


「どうして分かった。というかお前は誰だ」

「いや、そんな事を言われても、私が聞きたいわ」

「ここの女子生徒だろう? 制服を着ているから。……モブ? 選択できる女の子の中にはいなかったし親友キャラにもいなかったし、隠しキャラ?」

「もしかして、この世界がゲームの中だと分かっているの?」

「え? というかゲームだって知っているって……もしかして同じ世界の人か?」


 そこまで会話して、百菜は気づいた。

 この目の前にいるこの女装男は、自分と同じ世界の住人だと。

 同時に彼の方がここに来て長いのかもしれない。


「私の名前は木下百菜。“恋愛?ラブバトル”を起動させた瞬間、こちらの世界にいた」

「同じく、それをやろうとして、気づいたらここにいたんだ」


 だが今の会話で、百菜は奇妙に思う。


「男が、乙女ゲーを?」

「……女の子の気持ちを知りたかったんだよ! ほら、俺好みの女の子の彼女が欲しいから」

「……努力は認めるかな」

「どうも。それで、この世界に来たわけだが……気が付くと、俺の特殊能力の関係で女装していて」


 そこで百菜は、目の前に浮かび上がっている説明文を見て、


杉山浩斗すぎやまひろと。武器(魅了)はカッターナイフ、女装により心をつかむ魅了ポイントが溜まりやすく、武器(魅了)を手に入れやすい。ただしそれを知られると魅了ポイントはゼロになります。ですが、恋人がいれば状況は変わるかも……? 何これ」

「どうして俺の名前と特殊能力が……」

「だって、ここに出ているじゃない」

「ここにって……まさか、ゲーム画面の説明の奴が?」

「多分」

「それってゲームの主人公が持つ能力じゃないか。プレイヤーが見える画面なわけだし。え、てことは、お前ゲームの主人公なのか?」

「いや、私に聞かれても困る。どうしてこうなったのかも私にはよくわからないし」

「……説明書は読んでいなかったのか?」

「友達に面白いからって勧められただけで、私自身が興味がなかったから」


 答える百菜に浩斗は顎に手を当てて悩んでいると、百菜は、こいつは使えると気づいて、


「浩斗、私に女装していることをばらされたくないでしょう?」

「それはまあ……えっと、交換条件は?」

「この世界の情報と私のサポート」

「それはまあ、元々説明してもいいかなと思っていたし」

「こういったのって、デスゲームみたいになると嫌だから、先手を打っておいたの」

「あー、でもこれ、そういうゲームじゃないからな」

「でも私の武器は機関銃よ?」

「それは、簡単に言うと、イメージ映像だから」

「……意味がわからない」

「ようは相手を恋に落とす過程でのやりとりを、恋に落ちる残高指数を体力みたいなので表して、魅力を具体的な形で表すと機関銃だってだけだ」


 百菜はそこで自分の武器を確認して、


「……強そうね」

「主人公だからかもな。それで使い方だが……多分これから百菜に戦いを挑む奴らがたくさん来ると思う」

「……主人公だからモテモテで?」

「そうだ、そして謎のラスボスにがいるのはおいておいて、勝利してないと、心が落とされてしまうのでゲームの中の人と恋人になり、ゲームから出られないかも」

「! それは困るわ! 明日見たいTVアニメがあるのに!」

「俺もだ、明日、薄い本が自宅に届くのに!」

「……不健全な方?」

「健全な方だよ! ……百合だけどな」


 ボソリと浩斗は付け加えた。

 それを聞きながら、むしろ自分よりも可愛らしい女の子のようになっている浩斗を見ながら、


「でもどうして女装を?」

「いや……自分好みの女の子の百合が見たいなと思っていたらこういう女の子キャラになっていたのかも」

「……女の子になりたかったと?」

「違う違う、これで女の子の恋人作れば理想の百合が見れるんじゃないかって、最近女装して、俺様は美しいとやっていたからかも」


 百菜は変態を見る目で浩斗を見ると、浩斗は慌てたように、


「いや、それは一時の気の迷いみたいなものでさ、やっぱりこういうんじゃなくて女の子の気持ちも知りたいしと思って、このゲームを買ったわけだ」

「いやまあ、うん。努力は認めるけど……実際にどうなの?」


 そこで浩斗は暗く笑って、


「俺は初め期待していたんだ。でもさ、俺、可愛いじゃん?」


 確かと百菜は思う。

 大きな瞳に鮮やかな茶色い髪の、フワフワした可愛らしい女の子。

 百菜は羨ましいと思う。

 先ほど鏡に写った姿は、黒髪の長い少女で、現実世界とそんなに変わらない。

 どうせゲームなら、もっと可憐な容姿にいてくれてもいいのにと百菜は思う。

 しかもさっきからピロロロと音が響いてうるさくて仕方がないと百菜は心の中で呟く。

 右上に、赤く輝石が警告みたいに光っているし、嫌な予感しか百菜はしないが、今の所は大丈夫そうだ。

 そこで浩斗はそんな百菜に愚痴るように、


「でもさ、男にモテそうな可愛い容姿って女の敵でさ。でもって俺、魅力が高いから、凄く強いので相手なんか簡単に倒せるわけだ。なので女の子に嫌われてさっきみたいに……」

「あの人を取りやがってって、言っていたけどまさか……」

「だって、ただ歩いているだけで一定期間の間に戦闘……じゃなかった、恋愛イベントやらフラグやらが立つんだぞ! どうしろっていうんだ。振りかかる火の粉を払ったら、惚れられたし。その中に彼女持ちの男がいただけで、俺は何も悪くないのに! ……俺の理想の百合ハーレムが……」


 悲しげに呻く浩斗に、突っ込み所が多すぎて突っ込めなくなった百菜が、その話はおいておいて、今の話で疑問に思った所を抜き出す。


「フラグって……分からないの?」

「攻略方法知らないのに、フラグをへし折る方法なんて分かるわけ無いだろう! そもそもンナ心がわからないから普通こっちだろうと思って選ぶと、何故かあいつらの好感度が上がったり下がったりして意味が分からない。女心ってなんなんだよ……」

「でも好感度ってどう分かるの?」

「あー、何だっけ。占い部に行くと教えてもらえるんだ。それと、そこで武器を魅了ポイントで買い替えたり出来たりするんだ」


 そこで百菜は魅了ポイントという新しい言葉に気づいて、分からずに問いかける。


「? 魅了ポイントで売り買いが出来ると?」

「おおまかなイメージだと、ほら、ファンタジーっぽいゲームの経験値を積んでいくとレベルが上がるような奴があるだろう? あれがこのゲームでの恋愛レベル。これによって攻撃力……相手を恋に落とす力が上がり、防御力=相手の魅力を跳ね返す能力、武器(魅力)は相手を落とすと手に入る魅了ポイントを貯めることで、買い替えたり、もっと上の武器に変更できたり色々出来るわけだ」

「……イメージだと、普通のファンタジーゲームを全部恋愛に置き換えた感じ?」

「それで間違いないな。後はその都度俺が知っている範囲で説明するよ」

「そうなんだ。それでさっきから聞こえる、ピロロロって音何だろう」

「それフラグの音じゃん! 戦闘になるかも!」


 浩斗が叫び、そこでバタンと屋上に白衣を着た男が現れたのだった。



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