第18話 忘れた雪は二度降る 前編
俺は馬鹿か?
駅前にたたずむ俺は、人ごみの中で少し冷静になっていた。
『一緒に戦って欲しい…。』って言われたくらいで、二つ返事でOKを出すのか?
女神と宗方を、神と天使だと認めたとして、常識的に考えて、いや…、すでに常識的ではないのだが…。
とにかく、神と天使だとする。
普通の人間が、どうやって神や天使と戦えるのだろう?
まさか、亜門は神クラスの化け物を相手に、日本刀を振り回せと言っているのだろうか?
「狂っている…。」
今までは頼もしく見えた『黒蝶雪村』が、急に貧弱に見えた。
中央改札からは、絶え間なく人が出てきているが、亜門の姿は全く無い。
「もう、9時過ぎてるよな?」
俺が時計に目をやると、後ろから知った声がした。
「おや?雪村君じゃないですか〜。」
こんな偶然があるのだろうか?そこには、宗方が張り付いた笑顔で立っているではないか。
「宗方?おまえ、何でここに?」
「いや〜。奇遇ですねぇ。桐沢さん来てないでしょう?」
宗方は俺の問いには答えず、亜門の名前を切り出した。
「お前、何で俺が亜門と会うの知ってるんだ?てか、なんで来ていない事をお前が知っている?」
こいつは何か変な気がする。すぐ抜けるように刀を、後ろに下げよう。
「えぇ、桐沢さんと会うのは、学校で聞いてしまいましてねぇ。来てない事ですが、さっき桐沢さんに会ったので不審に思ったんですよ。」
そう言って、宗方はニンマリと笑った。
「亜門に会った?あいつ、何で来ないんだ?」
「えぇ、それなんですが待ち合わせ場所を変えたいとかナントカで…。伝えてくれと頼まれまして…。」
「はぁ?あいつ何も言ってないぞ?携帯の番号聞いとくべきだったな。」
「あはは、女の子と会うときは基本ですよそれ。ほら、女心とナントやらってね。」
宗方はククッと笑うと、また口を開いた。
「ほら、案内しますよ。あぁ、出口が違いますね。南口から出た方が近いですよ。」
俺は、宗方に促されて駅を出ることにした。
南口方面は昔ながらの商店街が並ぶ、細い路地が何本もある通りだ。
宗方はズンズンと、進んでいくが全く振り向こうともしない。
いつしか俺は、来たことも無い通りに来ていた。
こんにちは、天地袋です。
今日は1月1日です。
あけまして、おめでとうございます!
最後になりましたが、読んでくださった方ありがとうございました。