第15話 壊れた分岐
亜門は槍を杖代わりに付くと、槍にもたれ掛かった。
「はじめまして。桐沢亜門。悪魔です。」
数ヶ月前に聞いたことのある言葉を発し、亜門はまっすぐに俺を見ている。
どうやら、槍でどうこうする訳ではなさそうだが、注意は必要だ。
だが、ここまで来ると俺も信じざるを得ない。
「お前…。本当に悪魔だったのか?」
もはや、悪魔と言うものの存在を認めるしかない。
「今まで信じていなかった…の?」
亜門も逆に驚いたようだが、簡単に悪魔の存在を認めるのは容易ではない事を分かって欲しい。
「私の言ってることは全て本当なのよ…。」
「はは…。それは、悪いことをしたな。」
俺の空の手が刀を探すが、教室において来たことを瞬時に思い出すと背筋が凍った。
「この際だから、全て話すわ…。だから、貴方も理解して…ね?」
亜門の話だと、聖も本当に天使らしい。
そして、悪魔と天使は相容れない関係らしい。この点に関して言えば、俺の思っている関係と一致している。
しかし、それは不自然に思えた。
「こんなに都合良く、天使と悪魔が同じ場所に集まるのか?てか、人間の世界に来る必要が分からんぞ?」
「あら…。天使も悪魔も同じ世界で生きているのよ?何もおかしい事はないわ…。雪村君…。この世界はね…。おかしいと思うと不思議で、普通だと思えばいたって普通なのよ…。」
この世界。俺が16年間生きてきたこの世界のことだろうか?
思えば普通で、思えば不思議だったのかもしれない。
「雪村君…。女神も…神…よ?」
屋上に強い風が吹いた。俺のこれまでの常識を吹き飛ばし、俺の中で何かが目をあけた。
肩下まであるの亜門の髪が波打ち、俺は風の形を見た。
フェンスの向こうの見慣れた景色が、色を変えた。
「天使は人を騙し、神は人で遊ぶ。神は救う者ではないわ。だって、存在してるのに誰も助けないでしょ?」
確かに、神はいないと思っていた理由は、救ってくれないからだった。
「天使は人を騙し、神は人で遊んだら、悪魔は何をするんだよ?」
自分でも驚くほど落ち着いていた。
「悪魔は、何するんだろうね…。」
亜門は自嘲気味に笑った。
「私は…。普通に生きたいだけ…。その為には天使とか神が邪魔なの…。」
亜門の目に炎が灯るのをみた。
「俺に…、俺はどうすればいい…?」
風の中で、亜門の表情の無い顔に悲しい笑顔がさした。
それは、一瞬で、ほんの僅かで、微かな笑顔。
「一緒に戦ってくれない…?」
「あぁ。分かった…。」
この時、俺の中にある亜門への恐怖心とかは不思議と消えていた。
ただ、なんとなく亜門は一人にしてはいけないと……思ったんだ。
好きとか、恋とかじゃない。
ただ、なんとなくそう思ったんだ。
はい、こんにちは。天地 袋です。
ごめんなさい、引越しのせいで更新遅れました。
内容は少々、強引な気もしますが、本編ではない部分で補足されるはずです。
最後になりましたが、呼んでいただいた方ありがとうございました。