第13話 何も知らない 中、後篇
コイツハ何ヲ言ッテイルンダ!?
私…悪魔だから?
天使は嘘をつくものよ?
理解できない。てか、こいつはやっぱり頭が逝ってしまっている。
ヤバイ奴だ。
「まぁまぁ、桐沢さん。顔が近いですよ。」
いつの間に近くに来たのだろうか、聖が俺と亜門の間に手をかざした。
「宗方…。邪魔するな。」
「人が不審に思う前に、止めているだけなんですけどねぇ。」
聖は張り付いたような、目の細い笑顔のまま困ったような格好をした。
「だまれ…。いらない策まで用意したのは、お前の独断…なの…?」
亜門は、何か他の話をしている。
「フフ。仮に僕がくだらない策を練っていたら、どうします?」
貼り付けていたようだと思っていた聖の口元がいっそう”にんまり”と上がった。
この二人が会話をしている所は初めてみる。
「私が何もしないと思っているなら…それは、間違いだ。」
聖が亜門の耳元に顔を寄せて、小さく何かを言ったが距離が距離だけに俺にもその声は届いた。
「調子に乗るなよアクマノクセニ…。」
俺が驚いた瞬間。グイッと体が引っ張られた。
亜門が、俺の手を引いて走り出したのだ。
「ちょ!まっ、おい!離せってっ!」
何がなんだか分からない。
聖が張り付いた笑顔のままこちらを見ている。
急に引っ張られたから、刀が無い。
やべ、止まってくれ!
ぐえっ。
いきなり、今度は逆の方向に引っ張られた俺の体が不自然に止まった。
見ると逆の方の腕を女神が掴んでいる。
「二人とも、そろそろ授業の時間だよ?」
女神が軽く諭したが、亜門には届いていないようだ。
「離せ…。女神。殺されたい?」
「私も殺しちゃうよ?」
待て女神、冗談だと思ってるなら間違いだ。こいつはマジで言ってる。
女の子の口から、こんな言葉が出たことに俺は素直に驚いた。
どうやら俺は、女の子に幻想を抱くタイプらしい。
しかし、どちらかと言うと悪魔だと言っていた亜門の口から、『殺す』という直接的な表現を始めて聞いたことへの驚きの方が大きかった。
ダンッ!衝撃と共に、俺の席が吹き飛んだ。
聖が、物凄い形相でこちらに突っ込んで来るではないか。
聖の踏み込みの犠牲になったな…。俺の机…。
そう言われれば、昨日も犯人に女神が触られそうになっただけで、人格が豹変していたな。
俺が冷静に分析していると、女神が聖の胸を軽く押した。
若干、俺の手を持つ女神の力が緩まった気がする。
「うわっ!」
女神の力が弱まった瞬間、亜門の力が強まった。
今日も快晴。亜門に手を引かれたまま、暑い廊下に走り出した。
はい、こんにちは。天地 袋です。
この話は、現代ファンタジーのようでもあり、ギャグ路線でもなく。かといって、感動的でもなく、ましてや、純文学でもありません。
たぶんコレを暇つぶし文学と言うのだと思います。
最後になりましたが、読んでくださった方ありがとうございました。