義妹がロクな武器を買ってくれないのだが……?
ある晴れた明け方、魔法世界『デイ・ザート』にあるルーチェ王国の、レンジ村。
デザートにフルーツにオレンジ……この世界の神様や王様は何を思ってこんな名前を付けたのだろうか……?
とりあえずそれはさておき俺は『グランジェイド・エクセイド』この世界全てで崇められる英雄王グランの末裔。
王、即ち王族……いや、皇帝。 偽造防止の貨幣を世界で唯一生産する大国家な為、この世界では最高位だ。
代々世界最高位の皇族としての義務を忘れぬ為、そこらで現れた魔王を倒す試練がある。(殺さず力を認めさせても良い)
そして今日、とうとう勇者としてスタート地点となる村を旅立つ所である。
村のみんなは「頑張れよ!!」「人ん家のタンスやツボから勝手に物を貰っちゃだめよ!!」「最強の武器はカジノにあるのよ!!」「四天王4人衆の一人はお前の父親だったのだ!!」「魔王は女の子だったのだ!!」「ナ、ナンダッテー!!」
うん、かなりネタバレされた。 応援じゃなくてネタバレするって……まぁいつもの事だけどな。うん、いつもの事だ。
「おにーちゃーん!!」
どっからか声が聞こえ、突然目の前に女の子が現れた……。 黒目黒髪、この剣と魔法の世界には一切似合わない別の魔法世界だろう服装と可愛らしいステッキ……魔法少女が現れた。
彼女は『片月 望結』数年前より異世界から現れ、なんやかんやで俺の義妹となった。
こいつのおかげで『ゲーム』や『漫画』など『日本文化』とやらはこの世界の住民で俺は誰よりも知識豊富だ。
ついでに恋愛感情はお互いに無い上、俺には彼女がいる。
はっきり言ってこの異世界人の魔力はこの世界の神を超えているとか創造神や最高神の母である古の神すら超えてるとかもうどこの中二病だって存在だ……うん、忘れてくれ。
「なんだよミユ?」
大抵コイツが持ってくるのはこの世界に過ぎた物かとんでもないイベントだけだ。
「あのね、あのね、おにーちゃんの為に色んな世界で武器を買ってきたの!!」
「武器?」
「うん、これ」
そういってミユが取り出したのは大根……。
「えっとこれは……?」
「大根だよ!! 日本の国産で無農薬な大根だから料理に使えば安全で美味しい上に魔物を殴れば一回で倒せるよ!!」
「料理に使えば一回で終わりですけど……」
そういったらシュンとした……。 チョと言いすぎたかな?
「っとそんなおにーちゃんにはこれ」
直ぐに切り替え、今度はバカでかい鎌を取り出した。 デスサイスか!!
「な、何でデスサイス……?」
「さっきシテンノーとかいう人から盗……けふん、叩きのめして手に入れたの」
「盗むの方が言い方が優しいですけどぉぉぉおおおお!!!! ってかシテンノーって四天王だよな!? 既に魔王の幹部一人居なくなってますけど!?」
「ついでにおにーちゃんのステータスじゃ呪われるね」
「曰く付きぃぃぃ!?」
コイツはどうしろと言うんだ!!
「じゃあこれならどうかな? この下着」
今度出してきたのは苺の……パン……ツ……?
「ななななな、なんて物を出して来るんだお前は!! 今、ノーパンなのか!?」
「えー? 近所のお爺さんが履いてたパンツだよ? (ちょと臭い)」
そういって広げると苺模様のステテコ、嫌な臭いがする。
「今すぐ捨ててこい」
「ステテコを捨ててこい……なんちって」
さ、寒い……。
その時、白くて小さな物がふわふわと俺に降りてきた。
冷て……あ、雪か……。 暑い今の時期に?
「ダジャレ魔法のお爺さんから貰ったレアな魔法具だったのになぁ」
どんな魔法具だよ!!
「そもそも俺は勇者だから剣にしろよ!!」
「まったく文句が多いおにーちゃんだね?」
「いやお前がどうかしてるんだろ……」
「ほぅ、おにーちゃんは義妹に恵んでもらっているのにそんな態度するんだ?」
「え…ぁ、いや……」
やべぇ……ホントの事言われて言い返せねぇ……。
「おにーちゃんの存在価値奪うよ? 雑魚ども排除して、四天王全滅させて、魔王のおねーちゃんを全裸で椅子に拘束するよ?」
「ごめんなさい!! 許してください!! 義妹様!!」
なんて事をしようとするんだこの子は……魔王(女らしい)を全裸で椅子に拘束って外道か!! うらやまけしからん!!
じゃなくて俺の試練を無くすな……!!
「よし、じゃあ許してあげよーか。 次の剣はこれ」
今度出してきた物は……卑猥な物体だった……説明もしたくない。 あえて言うなら人の腕程長くて平べったい男の勲章だ。
「『性剣エロスカ_うきゃ!?」
とりあえず聖剣ならぬ性剣をけっ飛ばした。 なんて物を出すんだコイツは!! ばっちぃ……!! 足が腐る。
「それは完全アウトー!! お願いだから!!」
「これならおまけに『聖槍ゲイ掘゛る苦゛』もおまけで付いてきたのに? 振動付き」
やめてください義妹様……。
「ほ、他にまともな武器は無いのか……? 見た目も良いカッコ良い奴」
「じゃあこれ『呪われしウザっ帯剣』」
ウザっ帯剣ってなんだよ、ウザっ帯剣って!!
ミユが取り出したのは神々しい片手剣……鍔には碧い宝石がはめ込まれ、刃は皇妃である母さんのアクセサリーに使われている白金よりも上質な金属……。
『あ、あんたが私のマスターなの?』
それは鈴がなるような綺麗な声だった。
「ミユ、俺……これが良い!!」
『ちょ、勝手に決めないでよ!!』
即決だった。 軽く、とんでもない魔力を持っている上、可愛い声で喋る……。
「嫌か?」
『べ、別に嫌じゃないけど……勘違いしないでよ!!』
「あ……ぁぁ」
『それとあんたに選ばれて嬉しいなんて思ってないんだから!! その……あんたが死なないように補助するだけなんだからね!!』
「ああ、ありがとう」
『――!? っば、ばかぁっ!!』
ついでにミユの説明によると敵を倒していくと成長し、進化する上、別にならなくても良いが人型になって家事洗濯などもやってくれるという良い剣らしい。
ついでに呪われていて外せないため、風呂にも持っていかなきゃいけない時は指輪の形などになってくれると言う機能付きだ。
たぶんウザっ帯剣の意味は……呪われて外せなかったり、剣と使用者が同じ性別だったり、コイツみたいに高飛車な性格が理由なんだろうな。
俺は人族だけじゃなく魔族も獣人も妖精族もみんな幸せな世界を作る。 例え剣でも一人の人として……。
よろしくな、相棒!!
って思ってた俺は馬鹿だった。
悪魔の角、しっぽを生やしたネズミ『デビルラット』を斬……
『ぃゃーぁぁあああ血が、血が付くぅぅぅ!!! 断面図ぐっろぉぉゲロゲロゲロゲロ。 な、生臭い~!! いやぁぁああああ働きたくないぃぃぃぃいいいいいいいいいいいい!!!!!!!』
……俺は最後までずっとこの剣で戦い続けるのであった……。