プロローグ
パシッ…ダァーン!!
(…キレイだなー…)
暗く、埃を湿らせた様な空気をまとう10畳程の小部屋。
2方にある窓を覆う様に垂れた長い暗幕は、何処からか流れてくるひとすじの冷たい風によって微かに膨らみ、外からの光をまばらに取り込む。
その空間を、写真に焼き付けるかのように強く一瞬だけ光が埋め尽くす。
ミニチュアで造られた街に建つ、ひとつのビルをぼーっと見ていると、そこだけの確立した世界を眺めているような錯覚に捕らわれる。
疑似的に作られたその雷鳴も、小さい部屋を満たすのには十分なもので、胸の奥にガツンと響いてきた。
「更紗ー、データ取ったかー?」
「…あ!ごめん!見惚れてた!」
クラスメイトの、アミこと網代(あみしろ)に言われてハッとした私は、急いで机の上に乱雑に置かれたレポートから、グラフ用紙を発掘する。
「ったく、しょーがねぇなぁ」
いつもの事だな、という風に、アミは苦笑いをしながら私の足に軽く蹴りを入れてきた。
このアミを含む4人の班員は、高校1年の時からつるんでる奴らだ。
工業科学という特殊な学校だからか、他のクラスメイトを含めて、個性的な奴が集まってる。
(まぁ、私も人のこと言えないか)
小さい頃から、お人形さん遊びよりも外で泥だらけになって遊んでる方が好きだった私は、同年代の女子からは浮いていた。
小学校に上がってからもそれは変わらず、男子とよく走り回ってる私を妬んだ女子から、虐められてたっけ。
(絶対にその子達の前じゃ泣かなかったけどね)
そんな経緯もあって、自他共に認める気の強い性格になっていった私だけど、心は人並みに寂しかった。
でも、今やっと自分が自分らしく居られる場所を見付けた気がしてる。
我の強い奴らばっかりのこの4人だけど、お互いそれぞれが認めあっているのだ。
「……さ?更紗!」
「ほへ?」
班員の目が刺さる。
「うっ、ごめん!!今準備するか…」
「え!?危ない!!」
パシッ…ダァーーーン……
(…あれ?真っ白…)
(なん…で……)
更紗は白い光に包まれて、思考を奪われた。
初めて書きます。
拙い文章ですが、よろしくお願いします。