被告の住所による管轄権
さて。
次は「管轄」のようだ。
訴えを提起しても、訴えとして認められない場合がある。
認められる要件の1つが、「管轄」である。
律子は、はじめて勉強したとき「縄張りってことね」と思った記憶がある。
担当部署が決まっているのだ。
第二章 裁判所
第一節 日本の裁判所の管轄権
(被告の住所等による管轄権)
第三条の二 裁判所は、人に対する訴えについて、その住所が日本国内にあるとき、住所がない場合又は住所が知れない場合にはその居所が日本国内にあるとき、居所がない場合又は居所が知れない場合には訴えの提起前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)は、管轄権を有する。
2 裁判所は、大使、公使その他外国に在ってその国の裁判権からの免除を享有する日本人に対する訴えについて、前項の規定にかかわらず、管轄権を有する。
3 裁判所は、法人その他の社団又は財団に対する訴えについて、その主たる事務所又は営業所が日本国内にあるとき、事務所若しくは営業所がない場合又はその所在地が知れない場合には代表者その他の主たる業務担当者の住所が日本国内にあるときは、管轄権を有する。
民事訴訟の場合、訴えた側を"原告"、訴えられた側を"被告"、という。
刑事訴訟の場合、訴えられた側を"被告人"、という。訴えた側は原則は"検察官"である。
「もうっ。条文って読みにくいのよね。なんで、こねくりまわした言い回しになるんだろ」
法律に不慣れな律子には、サッと読んだだけでは意味がわからない。
「お父さんみたいに、住所がある人が被告になっている場合は管轄権があるよってことね」
「で、住所がない人…ホームレスとか外国人?居所って、住所じゃないけど継続的にいるところって講義で言ってた気がする。だから…」
「ホームレスでも縄張りとかあるみたいだから、きっと管轄権はあるってことね。外国人でもホテルに滞在していればいいのかしら。通りすがりの外国人に殴られたら…?」
管轄権については、この条文だけではないだろうから、この疑問はとっておこう。
「で、2条。もうっ。何これ」
ふぅ。こういうときは、冷静にならなければならない。
「大使とか公使とかそういう関係の人に対する訴えについては、管轄権があるってことか。大使とか公使って外国にいるけどその外国の法律によっては適用外になることがあるのかな。治外法権ってヤツかしら」
「で、3項は。法人、社団、財団の裁判権についてってことね。原則、事務所・営業所。ない場合やわからない場合は代表者その他主たる業務担当者の住所が日本国内にあれば、裁判権がある、っと」
まとめ。
①人に対する訴えで裁判権がある場合は?→原則、住所が国内にあれば。例外あり。
②大使、公使等に対する訴えで裁判権がある場合は?→どんな場合でもあり。
③法人、社団、財団に対する訴えで裁判権がある場合は?→原則、事務所・営業所が国内にあれば。例外あり。
「こんなものかしらね」