事件概要
「なにっ?なにっ?どういうこと?」
単なる好奇心だった。
身近に法律問題が起こるなんて、法学部の律子にとっては、好都合である。
法律の理解が進むわ。
「うーん。よくわからないのだが。読むか?」
「いいの?」
うなずく父を見て、手紙を受け取った。
手紙は、父親の1歳年上の兄からのものだった。
父親は5人兄弟の末っ子だった。
1歳年上の兄、つまり4男伯父さん、がなぜか5兄弟をとりまとめているようで、兄弟間の連絡は4男伯父さんからくることが多かった。
要約すると、以下のようになった。
兄弟の母親が亡くなったときに、実家を取り壊して駐車場にした。
名義は、長男、次男、4男、5男の共有になっている。
そろそろお互い歳なので、後世に迷惑をかけないよう、配分したい。
土地は地元に残っている次男名義にして、現金を長男、4男、5男に振り分けたい。
そしたら、次男がそれを地元にいる3男に話してしまい、3男、と言うか3男の嫁が土地を欲しいと言い出した。
母親の遺産の整理の時は、3男はあまり理解せずに印鑑を押したと3男の嫁が言い出し、勝手に訴訟を始めてしまった。
長男、次男、4男、5男に対して訴えているので、とりあえず報告した。
「ひゃー。いきなり、訴訟?乱暴だねー」
「いや…。まぁ今まで色々やり取りはあったみたいだけどな。こじれてたらしくて。向こうは生活もあるみたいだし早く決着つけたかったらしい」
「ふーん。でも、全体的に考えたら訴訟費用がもったいないよ。裁判なんてタダじゃできないんだしさ」
残っていたコーヒーを飲み干す。
「別にカネいらないからさ。巻き込まれずに済まないのか?」
「うーん。お父さんだけが被告になってるなら何もしなきゃあっちの要求通りになってそれでいいんだけど。他の叔父さんたちは要求通りにされるのは困るんでしょ?なら、お父さんもそれなりのことはしないといけないと思う。まぁ訴訟するのは叔父さんだったり弁護士だったり代表者ってことで、お父さんが直接訴訟に行かなくていいとは思うけどねー。私も調べとくよ」
「よろしく」
「へいへい」
一応、大学の費用は出してもらっている。
それなりに勉強してお父さんに教えるか。