ランチタイム
なし
廊下がざわめいている。
氣がつけばランチタイムであった。
いろいろな人々が食堂を目指していた。その流れにさからうように学長室をめざす。
なんと幸運な。学長に会える。そう期待していた私がばかだった。
学長室の扉をたたいたが、応答はなく。思い切って開けた扉の中は暗い室内であった。
扉を開けてたたずんでいると、後ろから声をかけられた。
聞けば、本学に学長は行っているとのこと。ストラス大学か。
午後は14時まで戻らないとのこと。
しかたなく、その時の約束を取り付ける。
「会えるかわかりませんよ」
秘書官らしき年配の女性はそう言って食堂へ去っていった。
留学生の陳情と思って声をかけたのだろう。
どこで時間をつぶしたかわからない。何かが頭の中をぐるぐると回っていた。
氣がついたら学長室の前にいた。待つしかなかった。
廊下をさまざまな人が通り過ぎた。あやしい人物であった。
小一時間たったか、見覚えのある長身の男性が向こうから歩いてくる。
「じゅん、待たせたね。中に入ろう」
秘書官から話がいっているのか、笑顔で室内の入室をすすめられる。
「時間がないんだ。結論から言おう。
日本には帰れない」
「留学したすぐの学生が帰国することは致命傷だ
本学のイメージも失墜する」
「そこにどんな理由があろうと私は許可できない」
「しかし、本学にもどらない覚悟があるのであれば、私はとめない」
こちらが事情も話さないのに、矢継ぎ早の回答。
「ジョンも心配しているが、ここは耐えろじゅん」
その言葉に合点がいった。連絡がいったのだ。
「情報収集は彼にまかせろ。きっと彼女は回復する。
あせるな。きっと大丈夫だ。」
「こんなことで、今までの君の苦労をこれで台無しにするな」
こんなこと、その言葉に反応してしまった。こんなことじゃないんだよ。
言葉にはできなかったが、仲間なんだよ。そう言いたかった。
クールに見えた学長が。
紳士に見えた学長が色あせた。
大学入学当初の合宿が思い出された。あのラリアットのはっちゃきが
信じられなかった。
言葉のない私を見て、納得してくれたと思ったのか学長。
「信じるんだ」そう言い残して部屋を去っていった。
なにを信じればいいのだろうか。私にはわからなかった。
なし




