北の大地
なし
疲れから寝てしまったが、誰かに呼ばれた氣配
そうかここは入国審査だったか。
目の前にいつの間にか紺色制服のキャビンアテンダントの方が立っている。イギリス航空
「外国に行くんだから日本の会社をつかわずに現地の航空会社を使え」
深谷の差し金だ。
入国待ちの私のところへ、飛行機乗り継ぎでわざわざ迎えにこられたようだ。
私どもの客をいじめるなという圧力が効を奏す。入国の許可がおりる。
許可後の係官、笑みもなく、パスポートに長方形のはんこを黙って押す。
だめか俺は入国できないのか苦悩の1時間、しかし入るのは一瞬。
またもや深谷にたすけられたような氣がする。何もかもお見通しか。
しかしながら、おかげで次の飛行機に乗れる。
キャビンアテンダントの方、急ぐようで夕闇のヒースローを走り出す。
なんかの外国映画にこんなのあったかな。まさか自分がなるとは。
そう思いつつ、重いバックパックを肩で揺らしながらすすむ。
そういや、北海道の大雪連邦から下りてきたそのまま。この格好もまずかったか?
まさにヨーロッパの若者の代名詞、放浪の感じ。
なんでもみてやろうという意欲、すごく感じるんですけどね。
間一髪、間に合ったようだ。スコットランド行きの飛行機に乗った瞬間に扉が閉められた。
こうして、一路目的地へ、機上の人となった
夕闇があっという間にやってきた。そして、外の景色はよく見えなかった。
まさに、ちょっとした月夜の飛行。ここから夢の世界へと、思いきや小1時間で着陸態勢。
1時間と少しだ。東京、札幌よりは短いが、東京、大阪くらいか。
今日から私が暮らす街。スコットランド グラスゴー。
いまさらながら、向こうの友人、みんなを信じていたが当時、多くの友人に(現地の方々)
人口ってどれくらいって聞いたけど、全員から
「100万人だ。」「100万人。」「いやもっといるんじゃないか」と言われ
そうか、おおよそ横浜市くらいだなあ。(今は、横浜市ももっといますね)
すごい大都会に住んでいるんだ。人口があるってどきどきするなあ。と妙に感嘆した。
私が今までの人生で一番人口の多い街。(さすがに村には住んだことないけど・・)
そんな大都会に住める私はすげえなとずっと思っていたが。
今、調べてみればスコットランドの人口はだいぶ減っているらしい。
現在グラスゴーで60万人くらい。
それでも、スコットランド最大の都市。役所などの公的機関の集中するエジンバラよりも
当時は人口はあったようだ。
そういや、出発前の大学の壮行会でも
「君か、グラスゴー行くやつは。。」
まんざら有名人かと思って、悪い氣はしなかったが、実は、工学部や造船に関わる人の間では
なかなかの有名な都市らしい。また、それに反して有名な大学が多いのに留学する人も
観光に行く人も、そして日本企業も、そんなにはたくさんはないらしい。
そして、実は私も知らなかったがスコットランド地方は寒い。そう思われがちだが、
海洋性気候のため、高緯度にありながら割合に温暖。冬期もそんなに寒くならず、
夜間凍結もあまりないすぐれもの。
夏の気温も穏やかで、日本のように25度を超えることは珍しいらしい。北海道の寒くない
バージョンか。
そんなすばらしい気候。なのに、グラスゴーは日本人であふれない。
なぜなら、観光客は北のかいじゅうの湖を目指し、日本企業は、まずは手近なロンドンや
その近郊に支社を置く。
そんな感じなので、工学部教授に物好きと思われたかもしれない。
またもやマニアック街道驀進中か。
造船業と言えば、またもや現地人が昔は、造船業が盛んだったけど、今は不景氣で
「仕事ねえ」「仕事ねえ」とみんな言っていた。
そのわりには酒は飲むわ、タバコは、ばかすか吸うわ、スコティシュダンスは踊るわ、
ディスコで踊るわ、暗さを感じさせない陽氣さ、底抜けに明るい感じ。斬新だ。
さてさて、そんなこんなでグラスゴー空港に着陸。
なし




