六話『不死の宝玉』
ケルベロスを倒したあと、僕は塞がってしまった渡り廊下への出口を迂回するため、校舎内を歩き始めた。
自衛隊の駐屯地となってはいたが、基本的には小学校のままなので、なんだか懐かしい気持ちになる。
ただ、教室などは覗いてみると、机や椅子などが撤去され、簡素なベッドが並んでいた。きっと、このベッドの数だけ街を守るために戦った隊員がいたのだろう、と少しだけ切なくなった。
少し歩くと、何とも奇妙な扉を見つけた。この位置は、先ほど頭に入れた校舎案内図では理科室だったはずだ。
ただ僕には最初、そこが何の教室なのか一目で分からなかった。それもそのはず、どこの小学校に窓や扉に「DANGER」のテープを貼り付けられた教室があるというのか。特に窓などは裏からも何かが貼られているのか、中の様子を覗くことすらできなかった。
そして、その教室の後ろ扉は倒れ、入り口が激しく破壊されていた。
何かがある。そう確信した僕は、覚悟を決めると恐る恐るその教室へと足を踏み入れる。
違和感はあった。この街に溢れる屍人どもから、街に囚われた巨大な怪物、肉塊のこと。この街は外と比べて異質すぎた。
何か、恐ろしい思惑が裏で動いているのでは、そんな考えも視野に入れていた。
ただそれが、ここまで冒涜的なものだとは僕も思いたくはなかった。
「うっ……」
足を踏み入れた瞬間、僕の鼻を強烈な腐臭が襲った。屍人に囲まれた生活のなかで、多少は慣れてきたと感じていたが、これは次元が違っていた。
そして、その衝撃を遥かに凌駕する光景がそこにはあった。それはまるで、何かの実験室のようだった。本来の理科室には無いだろう手術台や、そのうえに寝転がる奇形の死体。奥には、ホルマリンに漬けられた人や動物の死体がいくつも並んでいた。近付いて見てみれば、奇形の死体は人と動物の死体が繋ぎ合わされたものだった。
僕は込み上げる吐き気を抑えながら、手術台の死体を観察していく。
人の胴体に犬の足を繋ぎ合わせたもの、犬の頭を人のものに挿げ替えたもの、それらは生物の形として認めがたい冒涜的なものだった。
僕は確信した。ここに、この街の秘密がある。
ふと、僕は机に置かれた書類の束を手に取った。その一番上には、『不死の宝玉について』と書かれている。不死の宝玉とは何だろうか、そう思いながら僕は目を通していった。
曰く、不死の宝玉というのは、ネクロマンサーという死体を操るモンスターのコアであり、そのコアにはネクロマンサーと同じく死体を操る魔法が込められているのだという。死体同士を組み合わせたり、死体に擬似的な魂を込めて動かしたりすることができるという。そして、この街の市長はそこに目をつけ、『死体のゴーレム計画』なるものを進めていたらしい。大雑把にまとめればこんなところである。
僕のなかで一つ、合点がいった。この街に溢れていた屍人ども、肉塊、ケルベロス、この街の不可解な点はおそらく、全てここに繋がってくるのだ。これは完全な憶測にすぎないのだが、市長の作りたかった死体のゴーレムというのは、この街を巡回し続ける肉塊のことなのではないだろうか。
不死の宝玉を利用した冒涜的な研究、その末にこの街は滅びたのではないか。
今回もお読みくださり、ありがとうございました(●´ω`●)




