[道祖神第五部.会合] ③えっ、なんて単純な打開策なの…?
「放置です。」
会場がざわつく。
「何言ってんだぁ?」
「ほ、放置?おい、どういうことだ。」
「そう、我々は合併案を受け入れないだけです。そもそも、丑飼市が晦村を合併することで得られるものって何でしょう。わざわざ過疎村を抱えるわけですから。」
「確かに…。」
そんなこと考えもしなかった。ゼン君はすごいな。
「皆さん、気になりますよね。それで、考え得るのは…例えばそうですねぇ…。それこそ、ダムとかゴミ処理場とか。あとは…工場をつくったり森林を伐採するのもいいですねぇ。それに、村長。ずっと黙ってますけど、心当たりは…ないんですかね。」
みんなの顔が一斉にその御老体に向かう。もちろん私も例外じゃなかった。
「考えすぎぃ…ですよぉ。」
「そうですか。」
顔は見えないけど通話越しでゼンジが微笑んだ感じがした。市の職員が、司会に何かモゴモゴ言う。ケン君はその人にマイクを手渡した。
「えーっ、説明は一通り終わりましたので…。時間も押してますし、今回はここまでということで。また…日を改めましょう。後日、晦村の回覧板でご連絡します。ありがとうございました。」
それから一週間もしないうちに、SNSでは丑飼市が晦村を利用しようとした上、見捨てたという旨の話題で持ちきりとなっていた。中には、開発計画書や賄賂などの陰謀論的な投稿もみられた。
そして、その2ヶ月後には市が晦村の救済プロジェクトを開始した。つまりは殺到した批判に折れたわけ。小学校などの公共施設は市が代行で管理して、様々な支援サービスや交付金などが提供される見込みとなった。
それに、よく分からないけどふるさと納税も盛り上がったり、米や野菜もかなり売れたりした。相変わらず過疎ではあるが、こうして晦村の合併案は取り下げられて数々の問題も解決したみたい。
さながら、ドラマの世界だった。
ゼン君の言う通り、放置して解決しちゃったなぁ。にしても、私達の暮らしがこんなに良くなるなんて。思いもしなかった。
電話越しのゼン君の声だけがずっと耳に残ってる。
冷静で優しい声なのにどこか無関心みたい…だった。
村を守ってくれた…んだよね。きっと。




