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[道祖神第五部.会合] ②電話越しの英雄…村を守るって何?死にかけ地方自治体のマモリカタ

マイクを取り直した。

「反発があるのは承知の上なんです。でも俺の話を聞いてください。」

「ん…なんだよ。」

「実は合併案を出したのは俺なんです。皆さんはこの村を本当に守りたいんですか。」

「バカにしてんのか!」

「このっ、恩知らず!」

「舐めんなクソガキ!」

またケン君が口を開く。

「守りたいなら!どうして村の問題から目を背けるんですか。この村は過疎に産業の衰退、財政も限界です。小学校だって廃校の危機にあります。ですよね、川口センセ。」

みんなの視線が私達の元担任に向けられる。

「それは…。仰る通りですけど…。」

「俺だって晦村が大好きです。ですから廃村にさせないよう必死で方法を探したんです。それで、よくやく見つかったのがこの合併案です。」

「ワシはっ、賛成じゃ。どーせ、このままだと廃村真っしぐら。立ち退かんといけんぞ。」

「そうだ!合併は財政悪化の救いだろ!」

「そんなに悪い話か?」

「だったら、売れっていうんか!晦村って名前は俺らの誇りだ!」

「うっさい!廃村になったら、伝統も誇りもありゃせんわ!」

「ここらの過疎が進行してまうやん!」

「このまま廃村まで見過ごすんか!」

「どうしろっていうの!」

「なぁ、おやっさんも言ってやってくだせぇよ。」

「親父さん、頼んますって。」


「おぉい!」


それまで無口で目をつむっていた大工のおじさんがカッと目を開いて言う。

「聞けい!村の若いもんに意見を聞くのはどうよ?村の未来は彼らに大きくかかってるんだからな。文句あるか?」

ある、なんて言える度胸の持ち主はいなかった。

凄まじい迫力ね…あの人、いずれ雷神になりそう。

「今日、来てる村の若いのはセイコちゃん、コウジ、イチロウに、サトさん、コウヘイ、スズちゃん、アヤネちゃん…だけかいな。」

「みたいですな。」

「こんなときにゼンくんが居ればなぁ。」

「あー、ゼンジ君か。度胸あるし、こういうときに居ったら解決してくれそうだよね。」

「居らんもんは仕方あるまい。コウジ、お前はどうよ。」

コウジさんが口を開く。

「ケンなりに頑張ってたのは兄として、知ってました。それでも、私は合併に反対してます。市全体の行政ということになると、晦村だった地域にかける予算の影響でサービスの廃止が相次ぐでしょう。それに、市長が変われば政策転換だってあり得ます。説明があった通り今の市長がこの地域を気にかけてくれても、そうなった時に方針が変わってしまえば、ゴミ処理場かダムになるのがオチです。」

「さすが議員志望!」

「よく言ったコウくん。」

「やりよるな。次は…」

「おやっさん!姉やんがゼンジにテレフォンしたみてえっす。」

「繋がったんか。」

「ええ、繋がりました。こういった時はゼンジが良いと思て。さっき言うたんで大まかな話は分かってるはず。しゃべって構へんよ。」

ゼンジ君…って、あのゼン君のことなの…?

高校の頃まであんなに泣き虫だったのに、村の頼りにされるまでになったのね。そういえばあの子、昔から視野は広かったかも。捉え方っていうか、観点とか着眼点が凄かったわね。

「聞こえますか?僕、善次です。電話越しですみませんけど、皆さんお久しぶりです。」

なんて懐かしいの。もう何年も見てないのに聞いただけで彼だって分かる。昔は、本当にいろんなことをして遊んだ。

「そいで、ゼンジ。何か思いついたか?」

「まぁ、そうですね。まず、村を守ること。これは大多数の人が目標にしていますね。」

「あったりめえだ。」

「大多数ってどういう?」

「あんま気にしないでください。村を売りたい考えの人がいたっておかしくなんですから。」

物音ひとつしなくなる。

「おっ、おぅ…」

みんなが無表情になって、さっきまでの威勢がなくなった。

「では、村を守るって何なのか考えましょう。具体例を挙げるなら、村人を守ること、風習を守ること、家や田畑を守ること、自然を守ること。皆さんはどのようにお考えでしょうか。」

しばらく静寂が支配していたが、誰かがそれを破った。

「晦村の誇りと生活。私達の風景や象徴がなくなってほしくないです。私達の日常を壊されたくないです。だから、それらを守ることが、村を守ることです。」

振り向くと、みんなの視線はコウジさんに集まっていた。

ゼン君は、コウジさんに応える。

「つまりはアイデンティティですね。それなら、合併案は受け入れない方針が一番でしょうね。」

「なら村の問題はどうするんだ。」

「ゼンジ、結局それで解決になるっていうのかい?」

ケン君がマイクを口元に持っていく。

「仰っしゃりたいことはよく分かります。ですが、それで財政などの問題は山積みのままで、このままですと」

「廃村の危機、でしたね。分かってます。本来、その対策を練るのは僕や丑飼市役所のケンではなく村役場の仕事なんですが。まぁ良いでしょう。合併案を受け入れないで廃村にしないなんて簡単ですよ。」

「え、そうなのかい?」

「はい。とびきり楽なのがあります。」

「ゼンジ、それは何だ?」

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