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[道祖神第四部.物狂]私は捨てられ……私のケン君は…あの短髪…許さないっ…

村外れの古井戸。

だが善次が帽子を落としたのはこの地点ではない。そこに一人、後ろ手に組んだ女性が変わり映えのしない枝葉のある一点を見つめ続けている。

カサカサカサカサ…。ササッサッサッ…。

「ふぅ…こんなところで何してるんだい。スズ。」

「あぁっ。ケン君!あのねー、もうすぐ春の大学生になるわけでさぁー。高校はバスで通えたけど。いよいよ、この景色ともお別れだなぁって。懐かしんじゃってね。」

「いいとこだよな。俺はそう思う。寂しくなるし不安にもなるさ。でもな、スズが一緒だから怖くない。」

「ケン君、嬉しいこと言ってくれるなぁ〜。」

「また二人で戻ってくればいいさ。正月とか夏休みにね。」

「そうねぇ。」


ドン!ダンッ!ダンッ!ダンッ!


そんなの嘘だった。

あの短髪ッッ。アァッッ!ありえないっ、ありえないっ、ありえないでしょ!!!

「ね?コウジさん。」

「んっ…。」

「どしたの。体調でも優れない?」

「…ごめん。ほんとに…ごめん。うちの弟が、そこまで薄情な鬼になってたなんて…情けない。」

「はぁ……コウジさんは悪くないのよ。それより、私もごめんなさい…。やっぱダメね。この井戸に来るまで怒りなんて過ぎたものだと思ってたのに。」「ごめん…送るよ……実家まで。」

「うん…ありがとう。」

さっきまでの美しい夕焼けが嘘みたいにすっかり消えていた。

もう夜なんだ。

コウジさんの視線を追って、村を見下ろすとぼんやりした灯りの群れが見える。

コウジさんの車に乗り込んで助手席にもたれつく。窓枠に肘をついて外を眺める…。

やがてエンジンの唸りで車が震え、私も小さく揺れた。膝に乗せた片手に毛布の温もりがじんわり伝わった。

「暖房が効かなくてごめんね。このブランケットで我慢できるかな?」

「うん…あったかいよ。」

毛布を肩まで引き上げた。喉のひりつきはまだひかない。

ここは…私の寝室か。そっか寝ちゃったんだ。あれぇ、なんで私は実家に……って帰ってきたんだった。

「今度、コウジくんにお礼しないとね。」

「断られたけどいいのか。」

壁越しに両親の落ち着いた声が聞こえてくる。

「そういう問題じゃないのよ。それに、スズから聞いてコウジくんもショックだったと思うわ。」

「あぁ。」

「あなた、もしスズが大学に戻りたくないって言ってきても受け入れてあげたいの。」

「…。こっちに戻ってきて3週間になるからな。下手すると単位が足りないかもな。俺はスズを尊重するよ。」

お父さん、お母さん…ありがと。

でも私、戻るよ。明日の朝、ちゃんと伝えなきゃね…。

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