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[道祖神第三部.殺人事故] ②うっとうしいんじゃ

えと、それで、どうしたと言うのですか?

あ、すいません。早口すぎますよね。初対面なのに。でも、箱の中をご存知っぽいんで。僕、この村に住んで居まして。好きなんですよ。散策するの。見たところあなたはフィールドワーカーですよね!僕もいつかは村の外の遺構を巡っては分析してみたいです。

「いつか…?妙なことを言う。君ような青さならば国内旅行くらい造作もないだろうに。」

そうですよね…。

僕、変ですよね。僕だって自由気ままに…というか、そうでなくても世間で言われるような経験はしたいです。が、それはできません。男は箱からは目を離さず僕を視界に入れる。

「何故だ。」

僕の両親は他界しているからです。ズバリ言えば、遺言と村の視線が呪いです。だから僕はこの村から出れません。恨んではないんです。僕の格好は至って標準や。それに後でこの男に正体を知られても、別にどうということはないやろ。目の前の見知らぬ人にありのままを伝えない善良な村人は普通で、むしろ嗅ぎ回った側が村全体に警戒されるわ。

「そうか…その若さで御両親が…。私は君に慰めの言葉をかけたかったのだが…それを持ち合わせていなかったようだ。さぞ…辛かっただろう。」

あれっ?この男、こんなに温情ある感じやっけ。

「私は妻子を亡くしているんだ。10年も昔のことだ。」

あー、だからなんやな。この男はこういうのに弱いんや。

じゃあ、あなたは僕と同じですね。理解者です。なんか、同じ痛みを経験したことがあるってだけで、いい関係を築けるとそう分かっちゃいます。たった今、確信しました。それでっ!あなたは、どんな目的で来たんですかっ?

あっ、あのフィールドワークってのは分かってて…その、どういう遺構をお探しになっているのですか?さすがに、半分埋まってた筒か、この箱をみにきた…ってことは無さそうですね。もし、僕が興味本位でこれらを掘り返して手でベッタベッタ触り尽くしているのが赦せないのならすみません…。先に謝っておきます。それと、この箱は筒に戻しますね。

「許せないも何もない。が、それを戻すのは正解だ。」

んー…僕はこれでも、そこそこの道徳は持ち合わせてますから。今から知人の葬式なんです。この時間は気を紛らわすための現実からの逃走です。

「そ…うか。そんなときに声をかけてすまなかった。迷惑だったな。」

そうよ。とんだ迷惑やわ。

「君は何故。そう、善良な村人を装うのか?」

はいっ?あ、この箱を戻すって確かに善良なフリですね。はは、流石です。

なんや、この男は。奴は何でや。何でこんな…。

「もう自身を偽る必要なんてない。はっきり言って醜い。というか哀れな演技だ。要するに自分がカワイイわけだ。構わないが私の気分を害する。思ったことも言えない。マトモに会話もできないか。」


はいカッチーン。


あー、もうええわ。お前うっとうしいんじゃ。

「あー、うん。いいね。それがいい。」

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