[道祖神第十九部.仏]何言っ―ビックリギョーテン
取り出したナイフを逆手に握り直す。
僕は親指の腹で、柄を押し込んだ。あのバールは避けんと即死かもしれん。スズの背では業火が燃え盛っている。
いける。
タッタッタ…、ブンッ。
ガッ。
僕は勢いのままバールを避けて柄を持ち替えた。そのままナイフで一突きした。
ドスッ。
「アアッ!」
腹部だった。
呆気な。スズの生ゴミ袋が破れて温かそうな赤が流れる。
ギュチッ…。
シュッ。バタッ、ザザ…。カラッカラン…。
そのままもう一突き…。
スッ。
ダダダッ…。サッサッ…。
「待ってくれっ」
ギュン、グサッ。
「アァー!」
グッ…グサッ。
「ふーっ…ふーっ…。」
ゴトッ…。
ゴリッ…バキバキッ、……。
覗き見するとか趣味悪いなぁ。
なんコイツ、観たことないわ。移住者かいな。
トットットッ…。
ズッ…ズズッ…。
スズはバールを握りしめて這っていた。
ドッ、
「うぅ…」
傷口、腹を蹴った。生ゴミ…血の匂いがキツいな。魚臭い。
アイツ誰よ。
「ん…。しらない…みえ…ない。」
ダッダッ…。ズサッ。パシャッ。
ダッダッ…ザッ。
コイツ。
地面を這うスズに顔写真をみせた。
なんていうか…憐れやな。さっきまであんな威勢良かったのに。顔も引き攣っとる。
「その人ッ、カケル君。」
知らん奴や。
「高校で同じクラスだった…、アヤネの夫…。アンタも仲良くしてたじゃない…。」
誰。憶えとらんな。上っ面で高校は過ごしたし。
「ふぅー…ま、…やなやつだし…いいわ、…ふーっ、ふー…」
なんやそれ。
ええかスズっ。
お前が見たのは通り魔やろ。な、そやろ。
アイツとお前は30代後半の男…んー、見慣れない風貌の怪しい黒いスーツのソイツに刺された。違いない…んな、
「何言っ」
僕とスズは一緒に居て、横におったお前が刺された。
突然。
ビックリギョーテン、ソイツはアヤネの夫が影から録画してたんで、そっちに向かって彼も刺した。スズ、どうやったっけ…。スマホを壊したんやっけ。
あぁ、でも持ち去った気がするんよ。
僕は救急車を呼ぶも彼の方は間に合わなかった。
犯人は、なんて無慈悲な。
「……ふーっ…なにそれ…、嫌よ。」
興が削がれた。
取引。
お前の方はまだ間に合う。
「…ケン君を返して。アンタの、家…ハムスタ……」
状況から考えてコイツはハムスターがケンやと思ってんか。本当にアホくさ。好都合…寿命があるからその場しのぎか。あと一年くらいかな。死んで別のネズミ持ってきたら、あっケン君!とか喚くんやろうか。そんなん傑作や。
…そや、ケンはスズに返すよ。
「ふーっ、ふーっ、ふーっ、ふ…ぉ、ほんとっ…?」
約束や。言ったやろ。
興が削がれた。
「あはは、…はぁーっ…悪魔との契約ね。ふーっ…ふーっ……」
…つまんな。




