[道祖神第十七部.確信]殺さなくちゃ!
よくもまぁ、耐えたものだわ。
ゼン君は殺すしかない。彼を殺してケン君を解放するの。私だけが分かってあげれる。こんな世界、日常に魔術が混在するこの世界。彼の母でも女でもない。私たちだけが分かち合える。
今、ゼン君は私たちの唯一の障壁になってる。最初は試練だと思った。でも違う。ほんとに邪魔してきてるだけ。だって、理由がないもの。
ここで迎え撃ってもいいけど分が悪い。
ゼン君、ケン君は返してもらうわ。
今から電車とバス…最悪タクシー使えば間に合うかしら。ゼン君より先に村に着いて、準備しましょう。
私はゼン君が住んでる町まで来て、彼の近所に聞き込みをしていた。
確定だった。
あの日、ケン君はゼン君の家を訪ねていた。ゼン君の実家、両親のいない…どこか物寂しい雰囲気のリビング…でもそこは明かりがついてた。
ガラッ…ガラッ…。
網戸からケージが見えた。
ハムスターの…。きっと村に帰るときに連れてきた…彼。
そう、あのハムスターこそケン君なのだ。
ゼン君に魔法で変えられてしまった…あぁ、なんて可哀想なケン君。
待っててね、救ってみせるから。ゼン君、てっきりこのアパートに戻ったのかと思ったけど…。
どこなの、早く殺さなくちゃ。術者を殺して解放しなきゃ。
さっき、どこなのか聞いておけば良かったな。魔術って配置も重要だから…下手に動かすと消し炭になってたかも。
ケン君のあれは呪いね。
タッ、タッ、タッ…。
転移や飛行も書物で読んでおくべきだったわ。影はしばらく遣わせなあし…思ったよりずっとピンチみたい。ゼン君なら転移なんて造作もないだろうし、そうでなくともケージごとケン君を運んで逃げちゃうかも。
あっ……。
トットットッ…。
そうだ、ケージ。
なんで気がつかなかったんだろう。
…よく考えればおかしかったのよ。
ハムスターの小さなケン君は電話をかけれない。ケン君は人の姿に戻れる術があった…。チャンスがあった。脱走しようとして、またゼン君に捕まった。
つまり、あのケージそのものが魔術。ケン君は呪われていないのよ。きっと、対象が近づくとかの条件を満たすとハムスターに…。
トッ…トッ…トッ…ト。
……サーッ。
チャッ。
カンカンカンカン……。
…え。
サァーッ。
そのとき、私は私の思い至った可能性…1つの現実に囚われた。
すなわち、微動だにせずその場でピタッと立ち止まった。
サーッ…サーッ…。
走行音だけが頭に流れ込む。
ケン君の魂はハムスターに…ケン君の身体は。
あ…あぁ…ああああ。だめ、やめて、ケン君の身体は……棺の…中。あっ、あ、焼かれる。焼かれてしまう。葬儀を止めないと、ケン君の身体が!葬式を止めて、身体を治療してっ…それで………。
『死体に生者の魂は入れない。』…ッ、奇術解書…。脳裏に焼き付く。
あぁ、そうだっ。何としてでも魂だけは…ケン君の魂だけは!取り返さなくちゃ…。
ゼン君を殺さなくちゃ!




