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[道祖神第十ニ部.人間変幻]リ…オ、ラム…アーメン

本来、これは追放の……何だっけ。

もう部屋の電気は消してある。

ケン君は生きている。でも…はっきりと現場…死体は見てしまった…怪しいのはおじいちゃん世代のヨナかしら。

ケン君には霊的なナニカがあったのよ…。それで私に助けを求めて…そうじゃないわ。私の声を聞きたかっただけなのかも…。

何れにせよケン君は私が護る…そう決めたの。

早くその面倒から解放してあげる。

おじいちゃんは生前、私に解釈の話をしてくれた…。

暗くて…見えづらいわね。

これで整ったはず。


始めましょう。

椅子の台に乗り、右手には何でも切り裂けそうなナイフの柄を握る。白いワンピースの袖が揺らぐ…。刃先は天井に向け、手首をちょっと回転させて、伸ばした人差し指を自身に指し示した。

十字を描くように一箇所ずつ優しく、丁寧にその指で叩く。

額、「…アーテ」…腹、「…ッマークト」……右肩、「ヴェンゲブラー…」…左肩「ヴェンゲドゥラー」。

憑かれたように、刃先を目の前に広がっている空間に向ける。

あっ…柄を握った右拳と伸ばした左手をくっつける。


「リ…オ、ラム…アーメン」


迷える仔羊…ケン君…。柄に強く力を込める。

上から右下にナイフを振り下ろす…そのまま左上…そこから右に、そして左下へ、最後に右上まで刃先で五芒星を描いた。


「アドナイ…」


柄を握ったまま両腕を広げる。


「火の天使よ、ケン君を護りなさい…風の天使よ、魔に向かいなさい…水の天使、土の天使よ…私に知らせなさい。」


左腕を胸に持ってゆき、首にかけてある十字架を取る。


「魔よ、穢れを払い、その罪を背負って地獄へ堕ちよ…。」


額から…何か…青くて綺麗…魂みたいな…。

それがあると感じなきゃ…あると信じて…。


お願い…ケン君を護って…!



私は椅子から降りてナイフを引き出しに入れる。ベッドに転がって十字架を握りしめる…。

目をつむった…。

不意に目が開く。

上手くいったはず…いえ、上出来ね。

シーツに頬杖をついて両脚をバタつかせる…次の儀式をしましょう。

勢いよく跳び上がって棚に向かう。人差し指で本のタイトルを追い…祖父から貰ったヨナの聖典を手に取る。

おじいちゃん、ありがとうね。

もう整えてる。

机の前に椅子を持っていく。

そこに座って聖典を置く。

ボンッ…。

ヨナの九鳥…。九鳥とは鳩、つまりヨナノハトと読む…。

通称ヨナ教。

私たちが小さい頃そう呼んでた。


念じる。

ケン君を殺そうとしたのは誰。

パラッ、パラパラパラ………。

ここだっ。

バッ…。

左手のページ数は340であった。


『貴方は頼ってはならない。彼らを求め、それによって汚されてはならない…。(注釈60)』


手書きでそう書いてあったので最後までめくって、注釈60を探す。あった。


『…60.例外として主の前での裁きと九端羽は神によって許される。』


クタンハネ…?そもそも何に頼ってはならないのかしら…。スマホをとって調べ始める…。わからないな。でも急がなきゃ…。仕方ないのでお母さんに尋ねることにする。

私は聖典を抱えて部屋から飛び出した。

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