[道祖神第七部.来訪]彼は殺されたんだ。どうして…わか―
山奥の古井戸。
今のそこには、あるべきものが無かった。
私は何となく井戸の底を覗いてみる。
底は浅く、落葉が積もっている。これぞちりつも…。
「君は…。」
顔をあげると背の高い男性が…あっ。
「先生。」
私が通っていた大学の教授だ。この独特の雰囲気は忘れられない。キャラメル色のネクタイ…いつも締めてたけどほんと謎ね。
「浅いな。その井戸。」
「浅いですね。」
だけど、よく考えると変だわ。だってこの井戸に葉っぱがこんなに…落ちるかわからないけれど底がこんなに浅くなるほど積もってるってどういうことなのよ。
あれは…小石?少し大きいわね。よくみると落ち葉だけじゃない。変な小石や砂利まで混ざってる。
これ、もしかして誰かが埋めたの? どうしてなの? 誰がやったの?うーん…あっ。
「先生はどうしてこちらに?」
「それは…訃報が届いてな…。」
この先生、いつも無機質なのに…意外と生徒思いだったりするのかしら。
「命は重い」
「はい…」
「だから私は彼からそれを奪った人物を許さない。」
「え…どういう…ことですか?」
「君に言うか悩んだが。彼は殺されたんだ。」
「彼って…」
「君の言うケン君だ。大学で揉めたのは把握しているよ。」
「どうして…わかるんですか。」
「それは私が彼から助けを求められていたからだ。」
「なんで…」
「そこまでは。が、私は以前から晦村にあるはずのものを探していた。その最中だ。数年ぶりに成人した彼と会い、相談を受けたのは。大方、私が余所者で都合でも良かったのだろう。あれじゃ同期に話せないのも納得だが、」
「教えてください。」
ふと気がつくと、私はそんなことを言っていた。
「ふむ…だが君は」
「でも知りたいんです。本当なら。」
「駄目だ。」
「先生!」
「人を頼るな。」
先生は私に背を向けて村とは反対側の森へと歩きだす。
追いかけたいのに、足が地面にくっついた。
あぁ、これじゃあ本当にお話にならないじゃない。先生は私に教える気なんてさらさらないんだわ…。
それに、死ぬかと思った。
これ以上言及したら…考えるだけで怖かった。あの目…。先生の姿は見えなくなってしまった。
ケン君は殺された…。
「ケン君!!ケン君、ケン君………どうして…どうしてなのよっ…!」私は泣き叫んで膝から崩れ落ちた。




