方向オンチ過ぎるだろ
「この道、複雑過ぎるのよ! もう少しわかりやすい場所に住みなさいよ!」
舞が待ち合わせ場所にやっと来たと思ったら、会口一番にディスられた。
「いや、そもそも駅から五分もしないんだけど、なんで二時間以上も掛かったのか逆に聞きたいのだが。複雑な道なんて無かったし」
舞は不服そうに拗ねている。
それは、舞が方向オンチ過ぎるせいだろと言いたいが、黙っておく事にした。
「ところで、舞の知り合いは連れてこなかったのか? 連れてくるって約束だろ」
「……あれは、私の話よ」
「???」
「だ、だから、知り合いの話じゃないの。私の話なのよ」
舞は下を向いて唇を噛み締める。プライドが高そうだし、そんなドジをした自分に恥じてるんだろう。
確かに、小学生並みの身長だけども……。
誤解されない為にも言っとくが、舞を俺が住んでるアパートに招き入れることはしないぞ。断じてない。ただ、近場の公園で理桜を見てもらおうと思ったのだ。
待ち合わせ場所はスーパー前だ。そのスーパーを舞は知っているって言うからそうしたら、まさかの二時間以上も遅れるとは思ってなかった。
公園まで案内したら、待ってもらって、俺は里桜を連れてこようと考えていた。
里桜の姿が見えるか分からない。けど、舞の知り合いならばもしかしたら……と思ったのだ。
それがまさか、その知り合いが舞本人だったとは。
「……そっか」
俺は息をついて、舞の頭を撫でた。
「大変だったな」
不運になる辛さは痛いほどわかる。だから、他人事とは思えずに労いの言葉をかけてしまった。
舞は驚いた表情になるが照れてるのか、子供扱いされて気恥しいのか耳まで真っ赤になっている。
怒らせる前に、里桜を連れてこようと公園につくなり、舞をおいて、アパートに向かった。
「馬鹿じゃないの。信じるなんて」
背後から、舞が何かを呟いていたが、良く聞き取る事が出来なかった。
◇◇◇
里桜は高熱で動けない。お姫様抱っこするか、おんぶするかでかなり迷った。でも、そうすると周りには理桜が見えないわけだから不自然な格好に周りは見えてしまう。
夏場だから毛布にグルグル巻きは可哀想だろう。
そういえば、この間買ったばかりのガーゼケットがあったっけ。と、思い出した俺は、里桜をガーゼケットにグルグル巻きにし、お姫様抱っこして舞が待つ公園まで連れてきた。
舞はそんな俺を見て、冷めた目をした。
「まさか、その子?」
俺が頷くと、舞は盛大に頭を抱えた。
良かった。里桜の姿が見えているようだ。
「この子は、妖怪なんだ」
その一言で舞は大きく目を見開いた。
「え!? いや、てっきり私と同じく体験した子かと。見た感じ小学生っぽいし。妖狐のイタズラにあったのかと。えぇ……まさかの妖怪」
舞は動揺していたが、里桜を見つめながら心配そうな表情になった。
「病気、なの?」
「高熱が……病院に行くにも、妖怪だから姿は見えないだろうし、妖怪専用の病院があるのかどうか分からないし、でも……助けたいんだ。里桜は俺の大切な子だから」
「かくりよに行けば何かわかるのかしら」
「……行き方、わかってるのか!?」
「ま、まぁ……わかるけど、危険よ」
「それでも良い!! お願いだ」
舞は考えた後、諦めたようにため息をして、口を開きかけた時だ。里桜が「ダメ……です」と、弱々しい声で発言したのだ。
「かくりよは生きた人間が来てもいい世界では……ないんです。私なら、大丈夫ですよ。元気です。すぐに治りますよ。こんな熱に負けません。へっちゃらなのです」
里桜は、息を切らしながらも元気に見えるように明るく振舞っているつもりなんだろう。
一ヶ月以上も様子見して、未だに熱が下がらないんだ。平気なわけがない。
何かの病気かもしれない。妖怪に病気があるのかは分からないが。
苦しんでる里桜をこれ以上見たくない。
「そんなわけないだろう。里桜が俺の事を大切で大好きなように俺も里桜が大切で大好きなんだ」
だから、
「座敷わらしは幸せを呼んでくれんだろう? 里桜が元気にならないと俺は不幸せなままなんだ」
「それは大変です。でも……私、透和様に黙っていた事があるんです」
そう言った里桜は泣きそうな顔になっていた。




