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【連載版】不運が続く俺の元に座敷わらしが嫁候補として居座っているのだが  作者: 藤原 柚月


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6/10

注目したのは、妖怪の話

 会場内に入ると、舞という少女は「助かったわ。お礼は言うわ」と冷たく言い放ち、さっさと行ってしまった。


 ……助かったって、もしかして迷子とか?


 素直そうじゃないし、大人ぶってるから迷子なんて恥ずかしくて言えないんだろう。


 なんか、疲れた……。


 スタッフに案内された会場内は廃校の体育館を使用しているらしく、バスケットコートや木材の床にはコートラインテープが貼られている。


 照明をつけず、大きな窓には黒いカーテンが仕切られている。廃校なのもあり、薄暗さが不気味に感じる。


 体育館舞台には、講台が置かれている。


 講台の両端には二本の蝋燭がゆらゆらと灯してある。


 舞台の講台と向き合う形で椅子が一定の感覚で置かれていた。


 席は自由らしいので、空いている椅子に適当に座る。


 満席という訳ではなく、チラホラといるだけだ。


 あんまり人気がないのか? 今回が初なので分からない。


 蝋燭がゆらっと大きく揺れる。ひとりの巫女服を着ている少女が講台の前に立つ。


 ん? この子、見たことあるぞ……。


「はぁぁぁぁぁ!!!?」


 驚きのあまり、声を上げてしまった。


 椅子に座ってる人達が冷たい視線を送ってくる。俺は、縮こまって、小さく「すみません……」と謝罪と会釈した。


 講台の前に立っている少女は軽く咳払いした。


「えー……ごほん。それでは、はじめます」


 少女の声はマイク越しなのもあり、体育館内に響く。


 内容は、よくある怪談ものから、妖怪が絡んであるのもある。


 俺が注目したのは、妖怪の話だ。


 演説している少女の()()()()の話になる。


 その知り合いをAさんと呼ぶことにする。当時Aさんは小学五年生で、大人しい性格なのか、良く不良グループに目をつけられていた。

 Aさんが何も言い返せず、ビクビクしているのが不良グループは気に入らないらしく暴力を奮ったり、脅して金を巻き上げたりしていたらしい。

 時には万引きを強制させられたのだとか。


 そんな日々が続いたある日、奇妙な夢を見た。神社の夢だ。


 お参りして、立ち去るシンプルな内容だったが、夢にまで出てきた神社にAさんはお礼しに行こうと思い、神社に向かった。

 良く知っていた神社だった。Aさんは、きっと夢で何かを伝えようとしてくれたのかもしれないと思ったのだそうだ。


 神社に参拝しに行ったAさんは違和感を覚えた。神社全体が空気が悪く、居心地が悪い。鳥居をくぐれば頭痛や倦怠感が急に襲ってきたのだ。


 こんなのははじめてだったのだが、きっとストレスからくるのだろうと深く考えなかった。


 参拝し終わり、帰ろうとしたら鈴の音が聴こえた。


 チリン、チリンと。


 時に小さく、時には力強く鳴らしており、Aさんはどこから聞こえたのだろうかと鈴の音が聴こえた方向へと歩き出した。


 Aさんは歩きながらも、周りの空気が()()変わったことに気付いた。今が何処なのか、わからなくなってしまったので携帯を見ると、電波がないのだ。


 Aさんが訪れた神社は山中ではない。街中にあるのだ。電波がないことはおかしい。周りを見渡せば森の中のような杉並木を歩いていた。


 帰ろうにも何処から来たのか全く覚えてない。Aさんは方向オンチではないし、記憶力は良い方だ。それなのに覚えてないというのは有り得るのだろうか?


 不安になっていると鈴の音が聴こえた。


 聴こえた方を向くと、着物姿で、狐の面をつけた少年らしき人物が横切ったのだ。


 人がいる! と、安心したAさんはその人物の後を追いかけた。


 辿り着いたのは、神社だった。


 鳥居は崩れかかっていたり、境内は草木に覆われている。社には壁の一部が崩れていたり、植物が絡まっていたりしていた。


 鈴の音は社の中で聴こえた。Aさんは、そっと社の中を覗いた。


 社の中には誰もいなかった。じゃあ鈴の音は何処から聴こえたのだろうかと思っていると声をかけられた。


 驚いて振り向くと、そこには狐面をつけた少年が不思議そうに見ていた。


 少年は言う「かくりよに迷い込んだんだね。ねぇ、元の世界に帰してほしい?」と。


 かくりよというのは、異界なのだと言う。死んだ人が来る場所でもあり、神様や精霊、妖怪が住んでいるらしい。


 たまにかくりよに迷い込む生きた人間がいるらしい。


「帰してほしい」とAさんは力強く頷いた。少年は「良いよ! でもその前に僕と遊んでよ」とクスッと怪しく笑うのだ。


 その笑みを不気味に思いながらもAさんは帰る手段が少年頼みなのもあり、了承した。


 遊びは、隠れんぼだったり、鬼ごっこだったりとシンプルな遊びだった。


 ひと通り遊んだ少年は満足したのか、Aさんを元の世界に帰そうとしたが、何かを思い出したように少年は綺麗な石をAさんに渡した。遊んだお礼だと。


 Aさんは躊躇いもなく、それを受け取り元の世界へと戻ってきた。


 だが、その奇妙な体験から半年。自身に起こっている異変に気付いた。身長の成長が止まり、腕には狐のシルエットが浮かび上がってきたのだ。


 それどころか、以前にもまして、人間関係や金銭関係のトラブルが増えてきていたのだ。


 後からわかった事だけど、その少年から貰った石は神社の石で本来なら持ち帰ってはいけないもので……少年は人間に化けた妖狐で、良く人間をかくりよに迷い込ませ、イタズラするのだと良く行く神社の神主が言っていた。


 イタズラレベルでは済まされないのだが、相手は妖狐だ。人間の価値観は通用しないらしい。野狐にイタズラされたくなければ犬系のストラップがお守りを身につければ良しとされているらしいと神主は古くからの言い伝えだから、妖狐なんて居るわけがないと笑っていたそうだ。


 そのAさんが今はどうしてるのかって? 今も不運が続き、体の成長が止まり、身長も伸びる事がないままなんだって。


 巫女服を着ている少女はふふっと笑って、蝋燭を消した。


 真っ暗になった会場内が静寂に包まれる。


 今度は照明が光が宿り、会場全体を明るく照らした。


 退場の案内がアナウンスで流れる。


 ◇◇◇


「舞!!」

「何? 待ち伏せ? 悪いけど、私はファンサービスなんてしないわよ」

「違う。かくりよと……妖狐について詳しく聞きたい」


 怪談が終わり、俺は舞を待っていた。怪談話をしていたのは舞だ。だから、講台の前に立った舞を見て、叫んでしまったのだ。


「あの話? 馬鹿じゃないの、信じるなんて……作り話よ、作り話。妖怪なんている訳ないじゃない」


 舞はあくまでも作り話なんだからと茶化す。俺は食い下がらない。


「俺の友達はかくりよに行ったことあるとしても?」

「だからあれは、作り話であって実在しないんだっ……え?」


 かくりよに行ったことがあるは少し語弊がある。正確にはかくりよに住んでいた妖怪だ。


 でも、俺はわざと行ったことがあると言った。住んでいるなんて、それこそ作り話のように聞こえてしまうと思ったからだ。


「行ったことあるって……」

「本当だよ」


 舞はさっきまでの冷めた態度から一変、俺の両手を握り締め、不安そうな顔になった。


「~っ!? お願い!!! その友達に会わせて!!」

「うん、良いよ。でも……その知り合いの人に会わせてくれれば」

「あ……ああ、えっと。わかった。いいわ!」


 舞は、目を泳がせてから口篭りながらも了承した。






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