表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】不運が続く俺の元に座敷わらしが嫁候補として居座っているのだが  作者: 藤原 柚月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/22

もしかしたら自分に娘が出来たらこんな感じなのかもしれないな

 財布の中にあった一万円札が無くなり、五円しかない。


 ショックだ。銀行には金はあるんだが、なにせ、同窓会というのもあって下ろしたばっかりだった。


 はぁ……。


 俺は深いため息をつき、財布のお札入れを何度もチェックしてしまう。


 あるはずないのに。ないとわかっているのに、もしかしたらなにかの勘違いだったり、見逃してたりしてるんじゃ……。


 なんて、現実逃避してしまう。


 俺は項垂れて頭を掻き回した。この人形みたいな体が、神様の体だとか、そんなこと気にしていられない。


「これ、これは妾の体じゃ。わしゃわしゃするな」


 神様が俺の襟首をひょいっと軽々しく持ち上げる。


 宙に浮いて、足をバタバタさせた。


 顔を近づけられる。くそっ。目の前にいるのが俺の体だから気まずい。


 そもそも、神様は身長がそこそこあったはずだ。なのに、今は人形みたいに小さいのはなんでだ?

 しかも入れ替わってて、おまけに酒癖が悪い。


 .....それに、酔ってて頬は赤いし、目はとろんとしてるし……今にも寝てしまいそうな……。


 そこで俺は気づいた。

 電気がついてないのに明るい。も、もしかして……。


「今何時!?」


 手や足をバタバタさせて、神様の手から逃れようとしたが、無駄だった。しっかり掴んでいて離してくれそうにない。


「辰の刻(午前八時頃)じゃな」


 辰の刻!? 確か、昔はそう呼んでたんだよな。現代に置きかえると......。


「八時!? やばい。今から仕事間に合わ......いや、その前に入れ替わってるから、どっちみちいけねー!!」

「ひっくっ! 仕事、とな?」


 頭を抱えて唸ると、神様が目を輝かせて呟く。


 酔っていて今にも寝そうにしているのに興味を持つって......嫌な予感が。


「面白そうじゃのぅ。一度は人間の仕事を経験したいと思っとったんじゃ。今は、お前の体に入っとるから、お前の代わりに仕事行ってくるわい」

「いや、え......ちょっ!!」


 神様は俺を乱暴にポイッと投げ飛ばした。


 小さな体がふわりと浮き、里桜が慌てて両手で受け止めてくれた。


「待て!! いや、待ってください!!」


 神様はしゃっくりをしながらも支度を始める。

 それも指を鳴らすと一瞬のうちにスーツ姿に変わっていた。


「心配するでないわい。ちゃんとお勤めするのでなぁ」

「そういう問題じゃなくて!!」


 足から消えかかっている神様に、俺は叫んだ。


 だって、神様の後ろ......キランっと光る四つの目が浮かんでいるんだ。まるで、獲物を狙うかのように。


 その四つの目の視線の先は、神様の体を捉えていた。


 神様が俺の体で力を使ったのは分かったが、何よりも四つ目の視線に心当たりはない。

 神様の関係者なのかもしれない。


緋色(ひいろ)様。お迎えに参りました』


 すうっと目だけじゃなく、体を表したのはかくりよで出会った獅子の二匹だった。


「なんじゃ。見つかってしまったわい」


 神様はがっかりして。肩を落とした。


『.....お酒の呑みすぎにございます。それに、耐性のない人間の体に入るのはよろしゅうございませぬ』

「仕方なかろう。今の神主は、霊感がないんじゃ。それでは、入れ替わって呑めないんじゃ!!! 先代は良かったのぅ。妾に体を貸してくれて、文句も言わずに妾の話し相手になってくれたのじゃ」

『それは、緋色様が夜な夜な神主の布団まで押しかけて、話を聞かんかったら災いが及ぶと脅した結果にございます。体を貸しておりましたのも、視線にて構ってくれと訴えていただけでございますのに』


 神様が空になった焼酎の瓶を抱きかかえると、獅子の片割れが呆れたように言う。


「ちゃんと神としての責務は果たしておるわい.....多少の我儘言っても良かろう」


 次第に神様の声から覇気が消え、眠たそうにしていた。


『多少、とは.....』


 獅子はお互いの顔を見合せて困った顔になった。


 多少の我儘じゃないことは俺にもわかった。


『そもそも神社を離れたのは、目的あってのことだったはず。それはお酒を呑むためではございませぬ』

「.....そう、じゃ.....」


 神様は眠気には勝てなく、ドターンっと盛大に背中から倒れると大の字になって眠ってしまった。


 大きないびきまでかいて。気持ちよさそうに眠っている。


 .....緋色って神様、性格が嵐のようだなと思っていたが、俺ははっとした。


 俺は里桜の手から飛び降りた。


「会社に電話っ!!」


 寝ている俺の体(神様)の服のポケットを探ったが、携帯が見つからない。


 まさか、途中でどっかに落とした?


「透和様」


 最悪すぎると、頭を抱えていたら、里桜が話しかけて来た。


「えっと.....、お仕事の休みのお電話するのですよね。だったら、今日は透和様と一緒にいられるってことですか?」


 里桜は頬を赤く染めて、とても嬉しそうにしている。


 まぁ、この体じゃ仕事にはいけないから、休むことになるのだが……。


「そう、なるけど」

「嬉しい.....! 今日は透和様と一緒にいられるんですね!」


 里桜は自分の胸の前で両手を祈るように握りしめ、満面の笑みを浮かべた。


 できることなら、仕事に行きたかったと言いそうになる口を閉じた。


 そんな笑顔で言われたら、そんなこと言えなくなってしまう。


 猫の時も、寂しがり屋だった。それが今も変わらないというのはなんだかむず痒いものだ。


 もしかしたら自分に娘が出来たらこんな感じなのかもしれないな。


 ーーピンポーン。


 突然、インターホンが部屋中に響く。ビクッと肩を震わした。


「あの、すみません。お届けものです」


 その声は女性の声で、聞き覚えがあった。


 同じ会社の新入社員だ。


 なんで俺のアパートに.....?



緋色はかなり大雑把な性格です。


獅子が緋色に敬語なのは、獅子が緋色の眷属だからです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ