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【連載版】不運が続く俺の元に座敷わらしが嫁候補として居座っているのだが  作者: 藤原 柚月


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血のシャワー一発で決着がついた

 腹が膨れると、焚き火が消えかかっている。


 俺たちの用事も済んだから、もうそろそろうつしよに帰らなくてはならない。里桜の体調改善が見込めたし、舞の呪いも無くなった。


 里桜がこのまま体調不良で改善策がなかったら置いていくつもりだったが、その心配はないようだ。


 人間がかくりよにいつまでも滞在していいわけはないと思うし。


「……帰るか」


 俺は、大きく背伸びをして、小さく呟く。

 立ち上がると、舞の悲鳴が響いた。


「はぁぁぁ!? 嫌よ。牛乳なんて、飲まないわ! それに今はないじゃない。だから飲む必要はないのよ」


 舞は腕を組んで鼻息を荒くしていた。里桜が首を傾げる。


「身長伸ばすのは、牛乳という万能さんじゃないですか」


 んーっと里桜は首を捻って、考え出す。


 そして、突然、ポンっと手を叩き、目をキラキラさせていた。


「あっ、わかりました!! きっと舞さんは大蛇の血を飲みたかったんですね! 気づかなかったです。それならそうと早く言ってくれればいいのに。丁度、まだ大蛇の頭がありますし、ここをザクッとすれば血が出てくると思います!」

「!? な、なんでそうなるのよ!!」

「鉄分不足で身長が止まったと思いますので、牛乳という万能さんが嫌ならそうするしかないかなと」


 また里桜は無自覚に舞のコンプレックスを刺激して……。


「大丈夫ですよ! ちょっとクセがあるとは思いますが、慣れればいけます! 頑張ってくださいね。私、応援してるので!」


 そう言って里桜は大蛇の頭を妖力でふわっと浮かせる。

 なぜか、頭の切断面を舞の方に向けて……。


 血が滴り落ちそうな角度で。


 舞は顔を青くして後ずさる。


「え、冗談よね? 落ち着こう! 一旦落ち着きましょう。わかったから! 牛乳飲むから!! それでいいでしょ!!! こんなもの落とされたら私、死んじゃうわよ!! 殺す気なの??」


 里桜はキョトンっと首を傾げた。


「??? 殺す? おかしなことを言いますね。 私は座敷わらしですよ。幸運を呼びます。なので、死なないようになんとかなると思います! たぶん! 九割ぐらいは」

「九割!? ……残りの一割は死ぬってこと?? 」


 里桜はその質問には答えないで柔らかく微笑んでいる。


 舞が冷や汗を流しながら、俺の方に視線を投げかけてくる。

 助けを求めてるような、半ば泣きそうな目だ。


 妖狐は二人のやり取りをただおろおろしながら見守るばかりで、手をどうしていいかわからない様子。


 一方、紬は微笑みながら、


「仲がいいのねぇ。お姉さん、羨ましいわ」


 と他人事のように。どこか楽しげだ。


「里桜、帰るから。そんな物騒なもんは置いとけ。舞も牛乳飲むって言ってるんだから」


 俺は里桜の元に行くと、しゃがみこみ、頭を撫でる。

 里桜は嬉しそうに目を細め、ゴロゴロと喉を鳴らした。


 里桜は手を広げるのを止めて、俺に抱き着いてきた。


 甘えるように頭を擦り付けている。


 抱きしめながら、何か違和感に気づいた。さっきまで里桜は両手を上げて大蛇の頭を妖力で浮かせていた。


 俺は嫌な予感がして、上を見る。


 頭がグラグラと揺れ、そして──


 ポトリと、地面に落ちた。


 次の瞬間、


 ドバァァァァァァ!!


 っと、切断面から、真っ赤な血が勢いよく噴き出した。


 まるで壊れた高圧ホースのように、太い赤い柱が一直線に舞の方へ向かって吹き荒れる。

 

 地面に叩きつけられた血は跳ね返り、霧状になって周囲に飛び散り、焚き火の残り火に当たってジュウッと白い煙を上げた。


「ぎゃああああ!!!」


 舞は悲鳴を上げながら後ろに飛びのき、尻餅をつく。

 顔面から胸元まで、返り血をびっしょり浴びてしまっていた。

 

 髪も、服も、頰も、真っ赤に染まっている。


「……あっ。ごめんなさい。落としちゃいました」


 里桜は両手を口の前で合わせて、申し訳なさそうに目を伏せている。


 シュン……っと肩を落とし、叱られた子猫のようにしょんぼりしている。


 猫耳がぴょんと垂れ下がっているような錯覚さえ覚えるほど、完全に気落ちした様子だ。


「死ぬかと思った……! 心臓止まるかと思ったわよこのバカ座敷わらし!!」

 

 舞は血まみれの顔で叫びながら、震える手で自分の頰を拭う。

 

 拭っても拭っても赤い。


「これ……私、血の海で溺れるかと思った……!」


 俺は呆然とその光景を見ながら、小さく呟く。

 

「……里桜。もう二度と大蛇の頭、浮かすな」


 里桜は「はーい……」と素直に頷いたが、なぜか少しだけ残念そうな顔をしていたのが、また怖かった。


 妖狐は舞に駆け寄りながら、


「舞!! 大丈夫?」


 と駆け寄りながら心配そうに懐から手ぬぐいを取り出して、拭いてあげている。


 舞は唇を尖らせてはいるけど、何も言わない。さっきは殴ってたから、今回も殴るのかとひやひしてたが、それは杞憂だったようで、少し安心した。


 紬は相変わらず微笑み、頬に手を添えながら首を傾げた。


「あらあら、大蛇の血をシャワーにして水浴びだなんて……人間って発想がえげつないのねぇ」


 とまたしても他人事のように呟いている。


 舞は這うようにして妖狐の後ろに隠れ、 里桜を半泣きで睨んだ。


「もう……絶対に牛乳飲むから……! 二度とこんな目に遭わせないで……!」


 ──結局、牛乳一本で済む話が、血のシャワー一発で決着がついた。





里桜の能力は、主に瞬間移動と物体を宙に浮かせることができます。


最初、血が吹き荒れるシーンをグロく生々しく書いてしまって、さすがにやりすぎな気がしたのでサラッとコメディっぽくしました!

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