動物の殺生を連想するらしい
里桜が言うには、怒っているらしい。それは神様ではない。
だったら誰が……? なんて、聞くだけ野暮だろう。
なにせ、大きな揺れがおさまったと思ったら目の前に二匹の獅子がいるのだから。
二匹の獅子は白く輝き、直接脳内に話しかけてきた。
『返せ』
『それはあの方の持ち物。人間が持ってはいけぬ』
獅子は優しめに言ってはいるが、殺気を放っている。
殺気に当てられたのか、身動きがとれないし、そもそもが脳内に直接話しかけられるなんてはじめてな経験なのもあり、動揺と恐怖が交わり、頭が真っ白になる。
心拍数が上がってるのが自分でもわかる。
……でも、俺が怖気付いてどうする。
「わ、わかったよ。ちゃんと返す。でもその前に教えてほしい。ここで悪さをしている妖狐を探してるんだ。知っているか?」
二匹の獅子はお互いの顔を見合せた後、頷いた。
『妖狐はイタズラ好き』
『我らも困っておる』
「……勝手に持ち帰ってしまったお詫びに妖狐を捕まえる。だから、舞の呪いを解いてくれないか?」
正直、提案にのってくれるか分からない。でも、俺がこの状況をなんとかしないと。
舞は、腰を抜かして座り込んでいるし、里桜は怖いのか、震えている。
『その呪いは妖狐のものだが、連れてくるのであればなんとかしよう。でもその前に奇妙な衣を脱げ』
『主への冒涜だ』
『……獣を連れて散歩する社もあるらしいが、ここは違う。場を弁えろ』
二匹の獅子は同時に頷き、着ぐるみ(人体着用ぬいぐるみ)を指摘した。
そういえば、聞いたことある。
昔は、動物の死や血などを【穢れ】とみなし、神聖な場所には動物を連れてはいけない。それが現代にも残っていると。
最近は、ペットを【家族の一員】として考える風習から、連れて参拝しても良い神社は増えているらしいが。
ヒョウ柄や革製品を身に付けての参拝は、動物の殺生を連想するらしい。
その事を言っているのかもしれない。
俺は、舞を見て話す。舞は困惑しながらも俺を真っ直ぐ見た。
「舞、妖狐から貰った石持ってるだろ」
「え? 持ってるけど……今はそんなのどうでもいいじゃない!」
「どうでも良くない。きっとその石だ。妖狐は神様に内緒で舞に石を渡したんだ」
「意味わかんない」
「妖狐にとって、それはイタズラなんだ」
妖狐にとってはイタズラ。でもそれは、人によっては脅威になる。
妖と人間の感覚が違うのを俺は里桜と生活してよく分かっているつもりだ。
「こんなのイタズラですむレベルじゃないわよ」
舞は、困ったように苦笑すると、着ぐるみ(人体着用ぬいぐるみ)を脱いだ。
石をスカートのポケットから取り出して前に出した。
二匹の獅子はゆっくりと頷いて、消えていくのと同時に舞の持っていた石も消えていった。
俺は里桜を下ろすと、着ぐるみ(人体着用ぬいぐるみ)を脱いだ。
「里桜、大丈夫か?」
「はい。大丈夫です! なんだか、身体が軽くなった気がします」
里桜は、元気なのだとアピールするように手振り足振りしている。顔色も良くなっているから、本当に元気になったのだろう。
「なぁ、舞」
「…………じゃないわ」
里桜の元気になった安心から安堵の息をし、舞を見る。
舞はブツブツと何か言っていたが聞き取れない。
「ま、舞?」
「ふっざけんじゃないわよ!! あのクソ狐!! 会ったらぶん殴ってやるわ」
舞は、完全に頭に血が上っているのか、鼻息を荒くして叫ぶ。




