第30話 修行中
「ほな、店番しといてぇ」
修行初日、グリさんはあっさりとそう言って俺を店に放りだしだ。
「え、店番……ですか?」
「そうや。グリさんの大事なアクセサリー店、任せたで」
「あ、あの、接客とか商品知識とか……」
「実地で覚えや。お客さん相手が一番のお勉強やで」
それから3日。毎朝店を開けて販売して店を閉めての繰り返しをしている。
これじゃ、修行と言うよりアルバイトじゃないか……?
「いらっしゃいませ」
なんとももどかしい気持ちで今日も店番をしていたら若い女性客が入ってきた。
この店はほとんどが女性のお客さんで接客にも本当に気をつかう。
「すみません、このピアス見ていいですか?」
「ありがとうございます。こちらは……」
商品説明をしようとして、言葉に詰まる。
この商品、なんて言えばいいんだ?
「えっと、魔法が付与できて……」
「あー、知ってます。お守りになるんですよね?」
「あっ、はい、そうです」
「これ、ください」
「ありがとうございます」
会計を済ませて、お客さんを見送る。
「はぁ……」
ため息が出る。
これで、本当に修行になっているのか?
ただ良いように使われているだけじゃないのか……
ふと、目に付いたバングルを手に取る。
店に並んでいるアクセサリーはどれも手ごろな価格で、若い女性向けのデザインだ。
「これ、魔法が付与できるのか」
ぬいぐるみのように使役魔法はかけられないが、たとえば恋愛や学業成就なんかのちょっとしたお願い事を助ける魔法がかけられるらしい。
まあ、値段も安いしおまじない程度のものだが。
「お客さんは喜んで買っていくんだよな……」
気持ち程度の効果でも、可愛くて手ごろだもんな。
その夕方、グリさんが店に現れた。
「おつかれさん。どうや、店番は?」
「まあ、なんとか……」
「そうかそうか。ほな、明日からひとつ仕事増やすで」
「仕事……ですか?」
「一日に売れたもんの記録を付けてんか」
そう言ってグリさんは俺に一冊のノートを差し出してた。
「記録……?」
「そうや。何が売れたか、何時に売れたか、どんなお客さんが買うたか。全部書いといてや」
「分かりました」
翌日から、俺は言われた通りに記録を付け始めた。
朝10時、雫のピアス、20代女性。
昼12時、白いネックレスと花のピアス、30代女性。
午後3時、緑のブレスレット、10代女性。
一つ一つ、丁寧に記録していく。
最初は面倒だと思ったが記録を付けていくこと数日、あることに気づいた。
「あれ……?」
ノートを見返すと意外なものがよく売れている。
「これって……」
俺は記録を何度も確認した。
間違いない。
この商品だけが群を抜いて売れている。
「どうして……?」




