第24話 まさかの
「ふぅ……良い天気だなぁ」
工房の奥で俺は久しぶりにゆっくりと紅茶を飲んでいた。
フェルト人形の大ヒットから数日、ようやく店は落ち着き普通に買い物を楽しんでもらえる状態になっていた。
「最近、だいぶ落ち着いたね」
窓の拭き掃除をしながらルルが言う。
「ああ。最初の勢いに比べたら、だいぶマシになったな」
開店前の長蛇の列も今ではほとんど見かけない。
お客さんは相変わらず多いが、整理券が必要なほどではなくなった。
「ホワホワ~」
ホワもカウンターの上でのんびりと寝転がっている。
忙しい日々が続いていたから、商売だからいけないと思いつつも今はこの平穏が心地良い。
「在庫確認でもするか」
手持ち無沙汰に工房の棚を確認すると刺繍糸の在庫が少なくなってきていた。他にも細々とした生活雑貨が切れかかっている。
「ルル、ホワ。悪いが買い出しに行ってきてくれないか」
「了解!」
「ホワ!」
「リストはここに書いておく。お前たちも何かいるものがあったら買っておいで」
俺は銀貨を数枚ルルに渡す。
「ありがとう。行ってきます!」
「ホワワ!」
ルルとホワは元気に店を出て行った。
最近気づいたんだが、買い出しは俺が行くよりルルとホワに頼んだ方がオマケが多い。
ルルの愛想の良さと、ホワの可愛さで店主さんたちがサービスしてくれるらしい。
まあ、おじさんが行くより若い娘と可愛いふわふわちゃんの方がそりゃあ歓迎されるよな……
それから30分ほど、大きな荷物を抱えたルルとホワが帰ってきた。
今日もたっぷりオマケしてもらったらしい。
「たいへん、たいへんだよ!」
「ホワ! ホワチャア!」
ふたりとも大慌ての様子だ。
「おかえり。どうしたんだそんなに慌てて」
俺が荷物を受け取ろうとすると、ルルが息を切らして言った。
「あのね、とにかくたいへんで!」
「落ち着いて、ゆっくり」
「向こうの店で、フェルト人形が売ってる!」
「……な、なに!?」
俺は思わず声を上げた。
「本当だよ! うちのと似たようなやつが、店頭に並んでた!」
「ホワホワッ!」
ホワも興奮した様子で鳴いている。
「それって……まさか……」
頭の中が真っ白になる。フェルト人形は、俺が苦心して考えた商品だ。
それが他の店で売られているということは……
「どこの店だ?」
「お城の近くの、大きなぬいぐるみ屋さん」
ルルの言葉に俺は立ち上がった。
「見に行くぞ」
「うん!」
「ホワ!」
臨時休業の札を出して店を飛び出す。まさか、パクられた……?
いや、でも、どうやって?
頭の中で疑問が渦巻く。
とにかく、自分の目で確かめないと。




