第22話 ヒット!
「できた!」
翌朝、俺は完成したフェルト人形を並べた。
手のひらサイズの白くて丸いぬいぐるみ。ホワを簡略化したようなデザインだ。
小さくてシンプルだが、使役魔法もしっかりかかる。
「可愛い!」
「ホワワ!」
ルルが目を輝かせる。ホワも自分に似た人形を見て嬉しそうに鳴いた。
「これなら1個数分で作れる。値段も銀貨3枚くらいで販売できそうだ」
たくさん作れて手頃な商品、このフェルト人形なら在庫切れをおこすことはないだろう。工程もぬいぐるみよりずっと簡単なのでスキルを使ってもそれほど体が疲れない。
そして、従来のぬいぐるみは金貨3枚から5枚に値上げした。手間を考えればそれでも安いくらいだ。
フェルト人形を店頭に並べた初日。お客さんたちは興味を示すものの、なかなか購入には至らなかった。安くても品質には自信があるが、やはり高級ぬいぐるみ目当てに来てくれたお客さんには物足りないんだろう。たくさん作っても売れたのは片手程度だ。
「まあ、初日はこんなもんか……」
俺は少しがっかりしながら工房で作業を続けた。
ところが翌日。
「おはようございます。昨日買ったフェルト人形、まだあるかしら? 娘がすごく気に入って」
開店早々、昨日のお客さんが戻ってきた。ルルが早速接客に入る。
「ありがとうございます。お嬢さまが気に入ってくださったなんて嬉しいです」
「ええ。小さくて可愛いから持ち歩けるのがいいって。今朝なんかリボンで鞄につけて、学校にも持って行ったのよ。友達にも見せたら、みんな欲しいって言ってるの」
そう言って、そのお客さんはフェルト人形を5個も買っていった。
これはもしかして、口コミで広がってるのか……?
その日から、フェルト人形を求めるお客さんはだんだんと増えだした。
評判は上々だ。
それから何日かたって
「シロ、大変だよ!」
朝、店の前を掃除していたはずのルルが慌てて2階に駆け上がってきた。
「どうした?」
「お客さん、もう並んでる! 開店前なのに!」
「えっ!?」
窓から外を見ると、確かに店の前に長蛇の列ができている。
「嘘だろ……?」
急いで1階に降りると列はさらに伸びていた。
「すみません、何時から開きますか?」
「並んだら買えるんですよね?」
「え、えっと……」
お客さんたちが口々に聞いてくる。
俺は慌てて紙とペンを取り出し、即席で整理券を作った。
「番号札をお配りします! 順番にご案内しますので、少々お待ちください!」
ルルとホワが整理券を配り、俺は慌てて準備を整える。
開店と同時にお客さんが殺到した。
「フェルト人形ください!」
「私も!」
「何個まで買えるんだ?」
飛び交う声に、ルルが必死に対応する。
「お一人様3個までとさせていただきます!」
「ホワワィ!」
ホワも商品を運ぶのに大忙しだ。
俺は工房で、ひたすらフェルト人形を作り続けた。休む暇もない。
「シロ、在庫があと一箱だよ!」
「分かった、今作ってる!」
必死で手を動かし続け、汗が額を伝う。でも不思議と嫌だとは思わない。お客さんの喜ぶ声が嬉しい。昼を過ぎて、ようやく列が途切れた。
「はぁ……」
「ホワピィ……」
ルルが椅子に座り込む。ホワも疲れ果てて、カウンターの上で伸びてしまった。
「お疲れさん」
俺も紅茶を淹れて、みんなで休憩する。
「すごかったね……」
「ああ、まさかこんなに売れるなんて」
「ホワワ~」
その時、また入口のベルが鳴った。
「いらっしゃいませ! ……わっ」
ルルが声を上げた先を見ると、また新しいお客さんが列を作り始めていた。
「おわっ……」
「ホワワ!」
俺たちは顔を見合わせた。ぬいぐるみの在庫不足対応で作ったのに、これは予想以上の大ヒットだ。嬉しい悲鳴だが、この忙しさいつまで続くんだろう。




