第21話 フェルト
「はぁ……」
開店前の掃除をしながら、俺はため息をついた。
開店から2週間。連日の作業で正直もう限界だった。
「シロ、大丈夫?」
「ホワーワ?」
ルルとホワが心配そうに覗き込む。
「ああ、大丈夫……じゃないな」
「だよねぇ……毎日忙しかったもん」
「ホワワ……」
口には出さないが、ルルもずいぶん疲れている様子だ。ホワもくったりと俺の肩にもたれかかっている。うーん、よろしくないな、これは。
「よし。今日は思い切って休もう!」
「えっ、でも、お客さんが……」
「大丈夫だ。今日一日くらい休んでも問題ない」
俺は店の入口に「本日休業」と書いた紙を貼った。
「煮詰まるのは休みを取らないからだ。おいしいものを食べて、ゆっくりしよう」
「うん、それもそうだね。じゃあ私、おいしいもの作ってくる!」
「いや、今日は休むんだよ」
危ない危ない。働き物なのは良いことだが、ルルは家事を仕事だと思っていないところがある。これはなおしていかないと。
「昼は外食にしよう。商店街にカフェがあるだろ?」
「えっ、でも……私、簡単なものなら作れるよ。カフェって高いんじゃない?」
「いいから、いいから。今日はみんなで休むんだ」
「ホワ!」
ホワも賛成するように鳴いた。
おいしいと評判のカフェはまだ昼には早い時間なのにたくさんの人で賑わっていた。
「何でも好きなもの頼んでいいぞ~」
「本当!? やった!」
「ホワワーッ!」
そう言うとルルとホワは嬉しそうにメニューを開いた。ああでもない、こうでもないと見比べている。そういえば、外食はルルと出会った酒場以来か。こんなに喜んでくれるならもっと早くに連れてきてやれば良かったな。
やがて運ばれてきた料理は、評判なだけあってどれもおいしかった。もちろん、ルルの料理もおいしいが、最近は仕事の合間にかっ込むことも多い。みんなでゆっくり囲む食卓はやっぱり良いものだ。
「ふぅ、食った食った」
「おいしかったねー」
「ホワプゥ」
ルルもホワも満足そうだ。
カフェを出て他愛もない会話をしながら商店街をのんびりと歩く。
その時、雑貨店の店頭に積まれている色とりどりの布が目に入った。
「あれは……フェルト?」
「ホワ?」
「すまん、ちょっと待ってくれ」
俺は雑貨店に近づきフェルトを手に取った。柔らかくて、扱いやすい。
そして何より
「安いな……」
値札を見ると、今使っている布の10分の1の価格だ。
「これなら……」
頭の中に完成図が浮かんでくる。フェルトを使えば、もっと安く、もっと簡単に、もっと早く作れる。
「これなら、行けるかも……!」
「シロ?」
突然立ち止まりひとりごとをいう俺を、ルルが不思議そうに見る。
「ルル、ホワ。いいこと思いついたぞ」
俺はフェルトを掲げた。
「新商品だ!」
これで、品薄問題を解決できるかもしれない!




