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シンソウ
あのね
静かに 少年はつぶやいた
ぼくには ほしいものがあったんだ
泣き笑いのような顔を浮かべて 少年は笑った
笑わなくても良い筈なのに あえて笑顔を浮かべて言った
でも もうたぶん てにはいらないきがするんだ
少年の前に 他人が手に入れてしまったから
少年は 手に入れる手段を失った
なのにね
消え入りそうな声で 少年は続ける
よく ちかくでみつけるんだ
ての とどきそうなところに
手を 伸ばしたいのに
少年は 手段を失ってしまっていて
それは やっぱりなくなってしまう
ほしいよ
少年は笑顔を崩して 泣きながら叫んだ
ずっと 欲しかった
考えるのも嫌なくらい 長い間
どうしたらいいの
少年には思いつかなくて
悲しさのままに 泣き続ける
幼い子供が手に入れるには それはあまりに困難すぎる
なのに 欲しがることを止められない
手段はすでに失われたのに 諦めることが許されない