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雛霧の書  作者: 雛霧
31/49

ラッカ

僕は崖の下にいた


ほんのちょっとの不注意で

足を滑らせ落ちてった


崖の高さは中途半端で

身長と腕の長さよりもちょっと高い


さらにはもっと悪いことに

僕は片足をひねっていた


ひねったのとは逆の足で

何とか立ち上がることはできたが

手が崖の上に届かなくて


必死で背伸びをしようとするが

片足一本では安定しない


僕は再びバランスを崩し

体を地面にたたきつけた



倒れたままで見上げた空は

鮮やかなまでの赤い色


今空にある太陽は

やがては静かに沈んでしまい

温かな光も届かなくなる


その太陽が沈んだら

僕はもうこの底辺から

這い上がることはできないのだろう


そう思ったら泣きそうだった



それでもそのまま諦められず

もう一度だけあがこうとした


目をつぶって歯を食いしばり

飛べない足で精一杯背伸びして

届かない手を精一杯伸ばして


ただがむしゃらに上がろうとした



届かない手が何かをつかみ

飛べない足が地面を蹴った


僕の体は上へとひかれ

崖上の地面に転がった


痛みをこらえて顔をあげる

その時僕が見たものは


僕の手をしっかりとつかむ

土に汚れた君の姿


そんなこともものともしない

明るい笑みの君の姿


君はその笑みを絶やさぬままで

僕に向かってこう言った



『一体そこで何をしてるの? こんなに簡単に上がれるのに』



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