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雛霧の書  作者: 雛霧
29/49

タソカレ

高台の小さな小さな草むらで

僕はいつも太陽を見る


西にある朱い太陽が

小さいころから大好きだった


ある日いつもとおんなじように

その草むらで座っていると

耳に届く誰かの泣き声


それはとっても小さくて

風の音に消されそうだった


誰の声かと振り向くけれど

そこには誰の姿もなく

ただ泣き声が続いているだけ


泣き声はとても切なげで


泣くことなんか何もないよと

言ってあげたかったけれど

誰に言うのか分からなくて


いつの間にか

僕も一緒に泣いていた



二つの泣き声がぴったりと狂いなく

一つの声へと重なった



泣いていたのは僕だった

幼いころの小さな僕


独りじゃ何もできなくて

この草むらで自分の無力さに泣いていた



もう大丈夫

泣かなくても大丈夫


僕はそれを乗り越えられる

それを乗り越えてここにいる


自分が思っているほどに

僕は無力じゃなかったから


もう泣きやんで前に進もう



いつの間にか小さな声はやんでいた

朱い太陽も沈んでいた


家に帰ろうと歩きだしたら

少し湿った涼しい風が

僕を追い越して帰って行った



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